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B30:得点の守護者

「ギエエエエエエ!」


 やる気満々の様子で吠えたそいつの姿は、黒いドラゴンだった。

 バサッと翼を広げて飛び上がると、空の「黒い線」に紛れてしまった非常に視認しづらい。

 しかも周囲には、バードックがわらわらと集まってきていた。


「それじゃあ、とりあえずバードック対策は予定通りに」


 ダンジョンブロックとダンジョンコアブロックを設置して、ダンジョン管理機能を併用し、周囲をダンジョンブロックで塗りつぶす。さらにダンジョン管理機能を使って内装を罠だらけに整えてやると、近寄ってきたバードックが転移直後に罠にかかって自滅していった。


「さらにドラゴン対策をセット」


 上空をダンジョンブロックで塗りつぶす。

 ドラゴンが厄介なのは、空から一方的に攻撃してくることだ。だからまずは飛べないようにする。飛行生物はどれも同じ点が脅威になるので、まずは飛べないように翼を攻撃するのが普通だ。しかし俺の場合は、飛ぶための場所を奪うという方法が使える。

 仕方なくおりてきたドラゴンを、格子状に並べたダンジョンブロックで捕獲する。


「あとはボコるだけだ」


「ギエエエエエエ!」


 そうはいかんと言わんばかりに吠えたドラゴンが、口から黒い炎を吐いた。

 すぐさまブロック化してみると、地下世界でボロ布スケルトンが使っていた炎と同じだった。

 どうやらボロ布スケルトンは、このドラゴンへの対策としてあの黒い炎を修得したようだ。その逆は考えられない。なぜならドラゴンの炎のほうが、はるかに規模が大きいからだ。


「天使隊突撃! 黒い炎には触れるな!」


 ルナが号令を出し、白隼部族が突撃する。

 だがドラゴンはダメージを受けた様子がない。防御力が高いようだ。白隼部族のランスがはじかれている。

 だが至近距離をウロチョロ飛び回れば、いやがらせ程度にはなる。

 時間を稼いでくれている間に、俺はコマンドを実行する。


「代理実行、常時繰り返し、敵、塗りつぶし、黒い炎ブロック、相対座標0,0,0~0,0,0、既存のブロックと交換、実行」


 ボロ布スケルトンを倒した方法を試す。


「ギエエエエ!?」


 ドラゴンは驚いた様子でのけぞったが、それだけだった。

 継続的にダメージは入っているようだが、体力が多いらしく、倒すまでには時間がかかるようだ。

 さらにダメージを重ねるべく追撃したいところだが、黒い炎は何でもかんでも燃やしてしまう。追撃のためにマグマを出せば、そのマグマを燃やしてしまうので、むしろ黒い炎を無駄に消費して火力を弱める結果になってしまう。もどかしいところだ。


「ギエエエエ!」


 ドラゴンは吠えて翼を大きく動かした。

 その巨体を浮かせるだけの風が起きる。だがドラゴンの体はダンジョンブロックで拘束されていて動かない。すなわち今この瞬間、ドラゴンは強烈な送風機になった。


「「うわあああ!」」


 俺はダンジョンブロックで自分を囲んで防御したが、飛んでいた白隼部族は踏ん張ることもできずに飛ばされてしまう。そのまま周囲を囲んだダンジョンブロックに激突――する寸前に、俺はダンジョンブロックを羽毛ブロックに交換した。

 ボフッ、と白隼部族の面々が柔らかく壁に当たる。

 直後、ドラゴンが拘束を破壊して自由になった。


「クソ……! ダンジョンブロックまで破壊するとは……!」


 アダマンタイト以上の強度を誇るダンジョンブロックが破壊された。

 これは実質、ドラゴンを拘束する手段がないことを意味する。


「ギエエエエ!」


 再び空に舞い上がったドラゴンが、上空から炎を吐こうと口を開けた。


「そこだ!」


 ダンジョンブロックを1個だけ設置。

 場所はドラゴンの口の中だ。ドラゴンは、ホバリングはできないようで、常に前進しながら飛ぶ。その口の前へブロックを出したので、口を開けていたドラゴンはそのままブロックをのどにつまらせた。


「……! ……!」


 のたうち回るドラゴン。

 しかし巨体の突進力を利用して突っ込まれたブロックは、喉の奥へ入ってしまって、とても吐き出せるような位置ではない。

 しかも喉の奥へ突っ込んだときにブロックの角で傷つけたらしく、口から血を流し始めた。

 そうすると、ブロックと気道のわずかな隙間まで血でふさがれてしまい、ますます息ができなくなる。


「…………!」


 ドラゴンはそのままゆっくりと動かなくなっていった。

 死亡と同時に、ドラゴンが展開していた魔法が解除され、その巨体から煙のように濃厚な魔力が立ち上った。

 その魔力は1本の線になって、空の「黒い線」へとのびていた。


「まさか『黒い線』から魔力を得ていたのか?」


 たぶんそうなのだろう。

 だからボロ布スケルトンも、この場所を手に入れようとしていたという事だろう。

 魔力さえ増えれば、使える魔法の種類や規模は大きく広がる。


「ルナ」


「はい」


 呼ぶとルナが飛んできて、ドラゴンの死体を収納した。

 ルナの【収納】スキルが通用するという事は、ドラゴンは間違いなく死んだということだ。


「やれやれ……帰るか」


「はい。お疲れさまでした、ソリッド様」


「ああ、本当にな。

 まさか特異点を2か所も制覇するとは思わなかった。

 今は資源にならない場所だが、研究すれば利用価値はあるかもしれない」


 なにしろ、ここのドラゴンが実例なのだ。

 もしかすると、ボロ布スケルトンもあの地下世界を利用して、世界中にアンデッドを送り出したり、個人で転移したりできたのかもしれない。どちらも消費魔力が膨大なはずだから。


「では研究チームを立ち上げておきます」


「頼む。だが急がなくていいからな。

 俺もしばらくはゆっくりしたい」


「楽しく生きるのが最優先ですものね。

 退屈しない程度にやる事があり、疲れがたまったり謀殺されたりしない程度に余裕がある状態が必要だと思います」


「その通りだ。

 地上世界の情勢も落ち着いてるし、また旅行にでも行くか。

 楽しまないとな」


「はい、お供します」


 帰りは転移トラップで一瞬だ。

 俺たちは空飛ぶ島へ戻った。

 だが、旅行に行くときは転移はあまり使わない方向でいこう。移動時間も楽しんでこそだ。

 楽しく生きるには、楽しもうとする心構えも必要だ。

この世界はこんな形になっているだろうと思います。

読んでいただいて、ありがとうございました。

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