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B20:教会

 王国は泣きついてきた。

 現実主義的な観点から、各国の代表者たちは俺と俺のダンジョンを超国家的な存在として扱うことにした。

 政治的には、俺たちは超国家的な存在として扱われる事になった。

 だが、めでたしめでたしとはいかない。

 この状況を、教会が問題視した。


「教会と同等以上の立場を、魔物が出るダンジョンが獲得するなど……冗談にしても度が過ぎますな」


「然り。魔物ごときが神を奉ずる我ら教会と肩を並べるつもりか。片腹痛い」


「かのダンジョンは、神の敵に認定すべきでしょう」


「さもありなん」


 教会は俺のダンジョンを「神の敵である」と表明した。

 ダンジョンが物流網として価値を持つことは認めるが、それは1人の恣意的な操作を受けるべきではないと主張して、ダンジョンの転移機能を固定するべく、俺を討伐する戦力を募集し始めた。


「ダンジョンを制覇し、その制御権を奪うべし」


 世界中に信者をもつ教会の決定は、多大な影響力を持っている。

 だが、大国はこれに賛同しなかった。賛同したとたんに断絶されてはたまらない。リスクが高すぎる。すでにダンジョンによる転移――移動時間の短縮には、無視できない利益を得ている。今さら放棄する事などできるわけがない。

 しかし、ダンジョンの恩恵がない小国は、元々ないものがどうなろうと関係ない。大国ばかり優遇される状況を変えて、国際社会に発言力を増すべく、教会に賛同する。

 それは一種のうねりとなって、周辺に賛同者を増やしていく事になった。


「たかが小国とはいえ、数が増えるとそれなりに面倒だな」


 なんせこっちは総勢2000人しかいない。

 いくら音速で飛べるといっても、対処する能力に限界はある。


「であれば、小国にもダンジョンを作って転移でつなげてやれば、どうでしょう?」


「なるほど。その手があったか」


 亀の甲より年の劫。長老の助言に従い、俺は教会への賛同を表明していない小国へダンジョンを設置していった。

 転移の効果で世界を覆いつくす物流網に参加できた小国は、大きな恩恵を受けた。今までは国力の問題でまともな交易ルートを持っていなかったのだ。それがいきなり世界中の大国とつながったのだから、もはや「小国」と呼べるのは国土面積と人口ぐらいのものである。経済規模や国民の生活水準は劇的に上昇した。


「ソリッド様には、そろそろ『猊下』なり『聖下』なりの尊称を使うべき立場になっていただきたく、公式にお立場を表明なされるべきかと」


「長老……そうか。なら、新しい宗教でも立ち上げるか」


 ルナに手続きを任せて、新興宗教を立ち上げた。

 あわてた小国が泣きついてきたので、新しい宗教を作ったことを盾に、改宗するように求める。


「改宗……ですか?」


「教会には従わぬ、とハッキリ表明していただく」


「……それは……しかし……」


 渋る小国の代表者。

 これに対して、元から教会に賛同していなかった小国が改宗を表明し、新興宗教の総本山を作ると申し出てきた。

 すると、これにあわてた大国も改宗を表明し、「総本山は我が国に」と言い始める。転移の利権をめぐる政治的な攻防だ。


「これは……どこに総本山を置いても、問題になるな」


「ご心配めされますな。もとよりソリッド猊下の総本山は、ここ、空飛ぶ島ではございませんか」


「なるほど。天使たちの故郷だものな」


 どこにも属さないほうがいい。

 そう判断したことにして、本部は空飛ぶ島に置くことにした。

 教会は一気に信者を失って、組織が崩壊する。なんせ国家単位で信者を失うのだ。世界最大の宗教組織が、ものの3か月で悪魔崇拝と変わらない少数派に成り下がった。


「転移の利権と、実際に天使の姿を拝めるというのが、ずいぶん効いているようだな」


「すべてはソリッド猊下のご計画通りでございます」


 ルナと長老が俺の前に平伏する。

 何も計画した覚えがないんだが……まあ、それは言わぬが花か。

 すべて順調。ならば、このまま白隼部族のみんなに任せておこう。

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