B12:ダンジョンを作ろう
ダンジョンを作ろう。
ルナの故郷である空飛ぶ島は、その住人がみんな石化しているらしい。その治療薬として、世界樹の雫が必要だ。しかし住人全員が石化しているため、世界樹の雫も大量に必要になる。ところが、世界樹の雫というのはレア中のレアで、1立方メートル以上集めようとすればダンジョンを100万回ぐらい周回しなければならない。
先は長そうだなぁ、なんて考えてしまったが、とんでもない。1日1回ずつ毎日周回しても、100年で36500回しか周回できない。100万回にはとてもとても……。
そこで思い出したのが、ダンジョンブロックとダンジョンコアブロックの組み合わせだ。これで新しいダンジョンを作って、宝箱の中身として世界樹の雫を作り出す。
「というわけで、レッツトライ」
一応、人目をはばかって街の外へ。
なんとなく、ダンジョンを作れるなんて事はあまり知られたくない。ダンジョンには魔物が無尽蔵に湧き出す。そして冒険者が毎日のように死ぬ。そんなダンジョンを、作り出せる。まるで魔王だ。利用しようと近づいてくる奴が出てくるだけならともかく、国家や教会から討伐対象に指定されるかもしれない。
なので、実験はこっそりと。
「うまくいくといいですね」
故郷の救済がかかっているので、ルナは期待のまなざしを向けてくる。
とりあえずダンジョンブロックを1個と、ダンジョンコアブロック1個を出して、結合してみる。
そしてダンジョンコアブロックに触れてみた。
「……これでダンジョン扱いになるのか」
問題なくコアからダンジョンの見取り図の映像が出た。
さっそく宝箱を出してみようと操作するが、返ってきたのはエラーメッセージだった。
<その操作をおこなうには、ダンジョンポイントが足りません>
ヘルプを参照すると、ダンジョンポイントというのは、ダンジョン内に存在する生物から少しずつ奪った魔力らしい。気づかれないほど少量で、行動には影響しない。しかしダンジョンが広くて入場者が多ければ、その総量は馬鹿にならない。で、その量を数値化したのが、ダンジョンポイントらしい。
ダンジョン内に魔物や宝箱を配置したり、間取りを変更したりするには、すべてダンジョンポイントを消費することになる。
「……ふーん?」
「ソリッド様の場合、ポイントを使わなくてもブロックで作ってしまえますよね?」
「ああ……後から追加した分はダンジョンとして認定されないとか?」
試しにダンジョンブロックを追加して結合してみた。
すると、見取り図の映像が変わって、追加したブロックが反映された。
「……問題なく認定されてるな」
「ポイントを使わずにダンジョンを大きくできますね」
「しかし肝心の『世界樹の雫』は出せないな。ポイントが必要だ。しかも必要ポイント多いな」
鋼鉄製のそこそこの剣が、10ポイントで出せる。他に落とし穴やトラバサミなどの初歩的な罠も、10~15ポイントぐらいだ。より強い武具や罠だと、必要なポイントも多くなる。また、魔物のスポナーを配置するには最低でも100ポイント必要で、強い魔物ほど必要なポイントも多いらしい。階層を追加するのが1000ポイント必要で、宝箱(空っぽ)が1個500ポイント。
そんな中、ざっと見たところで高そうなのは、ドラゴンのスポナー1万ポイントだった。他に比べると多いのは、ドラゴンの強さを考えれば納得だ。しかしドラゴンですら1万ポイントなのに、世界樹の雫は10万ポイント。
ダンジョン産の世界樹の雫は、1個100ミリリットルなので、1立方メートル集めるのに1万個必要だ。ダンジョンポイントにして10億ポイント。
「また気が遠くなるような数字ですね」
「そうだな。
とはいえ、ダンジョンポイントは来場者の数が増えれば稼ぎやすくなる。
そして俺はポイントを使わずにダンジョンを充実させる事もできる。
100万回周回するとか、エルフに隠された世界樹を探すとかに比べれば、何とかなりそうじゃないか?」
ダンジョンブロックと罠ブロックはあるし、スポナーだってよそのダンジョンからブロック化して奪ってくるという手がある。射程圏内に同じ魔物をスポーンするスポナーが複数ないと1立方メートル以上にならないが、探せばそんなダンジョンもあるだろう。
ついでに宝箱を漁って純金ブロックも作ってしまえば、あとはルナに破壊してもらって、純金ブロックの破片を宝箱に入れておいてもいい。宝箱は、これも他のダンジョンから奪ってくる事になるな。
「そうですね。そうすると、ドワーフの奴隷を探すのが、優先順位が高くなってきますね」
「そうだな。さっさと探して鍛冶師として鍛えてもらえば、宝箱の中身を作ってもらえるか。
よし、奴隷商人の店へ行こう」
ドワーフの奴隷を買っても、すぐに鍛冶を任せられるわけではない。まずは現役の鍛冶師に鍛えてもらわないと。実際にダンジョンの宝箱に入れる用のアイテムを作ってもらうまで、しばらく時間がかかる。指導者になってもらう鍛冶師には、もう約束を取り付けてあるから、そこは安心だ。
となると、奴隷を鍛えてもらう間に、俺たちはよそのダンジョンから必要になりそうなブロックを集めてくることになるか。




