表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/30

B11:ルナの事情

 適当に突撃した工房の鍛冶師に、腕のいい鍛冶師を紹介してもらって、アダマンタイトやドラゴンの素材で装備を注文した。


「さて、あとは出来上がるのを待つだけだな」


 俺は剣と防具、ルナはランスの強化と防具を注文した。

 武器はドラゴンの牙をベースに、アダマンタイトで強化。ドワーフの技術で混ぜると――片方は金属じゃないけど、これも「合金」と言っていいのだろうか? より軽く、より頑丈に、しかも魔力を通すと刃こぼれやひび割れが「治る」ようになる。生きた金属だ。

 防具はドラゴンの牙の代わりに鱗を使う。ルナの分は前面だけを防御する形にすることで、さらに軽量化。俺の分も防御力より動きやすさを重視したものにしてもらった。どうせダンジョンブロックで防御するし。


「そうですね。

 ところで、その後はどうしましょうか?」


 私はソリッド様の行くところについていくだけです、と言わんばかりに黙ってついてくるだけだったルナが、珍しく自分から尋ねてきた。

 これは、何かあるやつだな。


「空飛ぶ島へ行ってみたいが、急ぎじゃない。

 それ以外では、ブランチマイニングは控えて、普通に冒険したいな。

 行きたい場所とかある?」


 そういえば、ルナはどうしてダンジョンにいたのだろうか? 故郷は空飛ぶ島なのに。俺みたいに退屈して飛び出してきたとか?


「はい。あ、いえ……場所というか、探している物があります」


「なんだ?」


「世界樹の雫です」


 世界樹の葉から分泌される液体だ。樹液と言ってもいいのだろうか。

 世界樹があれば、その葉の1枚1枚から毎朝とれる。売るほどの量になるだろう。採取しなければ流れ落ちて地面にしみこむだけだ。

 ただし、世界樹がなかなか見つからない。世界樹はエルフの信仰対象であり、地上に生えていればエルフが神聖視して幻影魔法などを駆使して隠してしまう。慮外者から守るためというのは分かるが、世界樹を守るエルフが世界樹もろとも自分たちまで隠れてしまうので、必要とする人に雫がいきわたらない。



「それはまたレアなものを探してるんだな」


「はい。実は、空飛ぶ島は、住人のほぼ全員が石化してしまいまして」


 は?


「は?」


 は?

 石化?

 全員が?

 どういう事すぎる。


「不幸な事件でした。

 ロック鳥がバジリスクを捕まえて飛んだのですが、バジリスクも暴れて抵抗しますので、そのうちポロっと落ちることがあります。それが、たまたま空飛ぶ島の上空で、落ちたバジリスクがたまたま空飛ぶ島に着地してしまって、正しい対処法を知らなかった住人たちが大勢石化されて……」


 たまたまの悪意が強すぎる。

 邪神か何かの干渉でも受けてたのか? それとも、とうとう確率までバグったのか?


「そ、そうか……。そりゃまたずいぶん不幸な事件だったな。

 討伐は?」


 バジリスクは巨大なトカゲみたいな姿だが、視線や吐息に石化効果がある厄介な魔物だ。近づくと吐息で石化されるし、見つかるだけでも視線で石化される。見つからないように遠くから暗殺する必要があるので、弓矢や魔法を使える人で隠れながら攻撃することになる。

 しかし白隼部族は飛行速度にものを言わせて槍を持って突っ込んでいく。相性が悪すぎる相手だ。


「成功しました。

 ですが、石化した人たちを元に戻すため、かなりの量の世界樹の雫が必要になりまして」


 それで、ダンジョンに挑んだのか。

 たしかに地上で世界樹を探すよりは見つかりやすいだろう。深い階層や隠し部屋の宝箱は、ダンジョンが生み出したアイテムが入っている事が多い。力尽きた冒険者の持ち物だけが宝箱の中身ではない。果実や景品みたいに、ダンジョンが生み出すアイテムもある。

 実際、ダンジョンの宝箱からは、たまに世界樹の雫が見つかる。


「なるほど、わかった。手土産代わりに持っていく事にしよう。

 それじゃあ、世界樹の雫を探してダンジョン巡りだな」


「ありがとうございます」


「いいさ。大量に手に入ればブロックにして増やせるかも……という下心もあるからな。

 世界樹の雫なんて、常備薬にできれば最高だ」


 なにしろ致命傷や死病すら治すという代物だ。常備薬として、ぜひともブロック化しておきたい。

 空飛ぶ島が人口どのぐらいか分からないが、100人や200人では血が濃くなりすぎて滅亡する。世界樹の雫は大量に必要だ。ダンジョンの宝箱から見つかるのは、ポーション瓶と呼ばれる小瓶に入った状態で、1個100ミリリットルだ。

 1立方メートル以上集めればブロック化できて増やし放題になるが、そのためには1万個も必要になる。1個見つけるのも大変なので、1万個見つけるには100万回はダンジョンに潜らないとダメだろう。

 いっそ世界樹を探したほうが早い気がするほどだが、エルフは魔法能力がバグっている。それが本気で隠すのだから、世界樹を見つけるのは絶望的だ。エルフに知り合いでもいれば、故郷に案内してもらえるかもしれないが。

 金策を急いで、買い集めるとか、冒険者ギルドに依頼して他の冒険者たちを動員するとかの手もある。売ってくれる人は少ないだろうけども。

 結局、一番確実なのは、ダンジョンアタックしまくりツアーだ。俺自身も世界樹の雫は欲しいから、せっせと頑張ることにしよう。


「普通に冒険したかったんだがなぁ……」


「石化している間は時間が止まっているようなものですから、急がなくても大丈夫です」


「だが、急がないと世界樹の雫が集まる前に寿命で死にそうだ。

 集まるまで、ブランチマイニングで全力疾走だな」


 気が遠くなるほど遥かな道のりだが、それでもゴールは見えている。

 あれだな。俺たちの冒険はこれからだ! ってやつだな。

 ……あ。そうだ、ダンジョンブロックとダンジョンコアブロックの組み合わせを試してみよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ