世の中甘くはない
「チュートリアルが終わって少し歩いてたらモンスターに出会ったんですけど、そこで不思議なことが起こったんです。」
「不思議な事とな?」
ひょっとしてバグかなんかか? でもこのゲーム今一番人気ってだけあってすごく安定してるらしいんだけどな。バグなんか発見報告した瞬間治るとかいう都市伝説があるくらいだし。
「モンスターを倒そうと剣を振ろうとしたんですけど。」
「うんうん。」
「そうしたら剣なんか降ったことないので手からすっぽ抜けちゃって。」
「うん。うん?」
「そうしたら近くにあった木についてたハチの巣みたいのにぶつかっちゃって。」
「……」
「ハチみたいなモンスターに追われてああなった次第です。不思議ですよね?」
あーなるほどなるほど。変だと思ったんだよ。そんなわけあるわけがないんだって。
「さては貴様! 容姿全振りの中身はポンコツだな!!」
「なっ!?」
「いるわけないんだこんな完璧美少女がっ!!外見以外とんでもないデバフがかかってるんだろ!!」
これで納得したぜ。容姿完璧中身も最高なんているわけがないんだ! そんなのがいたら世の中の人々が発狂死してしまう!
「だからナンパやめてください! ありがとうございます!!」
あれ? また顔赤らめておかしなこと言ってる。はっはーん? 都合の悪いことは聞こえないタイプだな? よしよしやはり性格には難ありだな!
「ポンコツなのは認めます。」
「あ、そう。」
認めるんかい。
「すみません、私のせいで死なせてしまって。」
「最初だからデスペナもないしそこは気にしないでも大丈夫だ。事故みたいだし。でもなんであんたも死に戻りしてるんだ?」
俺はダメージ受けたからしょうがないが彼女はどうしたんだ。
「普通にあなたが消えた後モンスターにやられました。」
「あっ……」
なんか普通過ぎて聞いたの悪かったかな。
「でも死んだおかげで同じ場所に戻ってこれたのでよかったです! ちゃんと謝れました!」
なんかかわいいかもしれん。いや! 気を抜いたら殺られる! 事故的な意味で!
「これから気をつけろよ! それじゃまたどっかであったらよろしくな!」
まあこんだけのかわいい子に飛びつかれたんだからプラマイプラだと思っておこう。気を取り直して最初の町に向かうか! そう思い彼女に背を向けて歩きだそうとしたら、
「待ってください!」
彼女に足首をつかまれ俺は地面にキスをするのだった。