3-14 オータムナスのお祭り1
「すごーい!いっぱいある~~~~!!」
「本当だ、すごい!」
「すごいわね~~」
『すごいのね~~~・人も物もいっぱいね~~~』
ラヤーナは子どもたちと初めてオータムナスの祭りを見に来ていた。
ラティも興奮したように、いろいろな屋台を覗いては歓声を上げている。
レスリーはお祭りの記憶がはっきりとあるようだが、ユリアには一部、おぼろげにしか無いようだ。昨年のお祭りは、父親のヘリットが鬼獣に怪我を負わされ、お祭りに来るどころではなかったらしい。レスリーにも1年ぶりのお祭りであり、ユリアにとっては一昨年のお祭り自体、部分的にはっきりと覚えているところと、何となく楽しかったというおぼろげに覚えているところが混在しているようだ。
「ラヤーナ、あっち、あっちがみたいの!」
「いいわよ。行ってみましょう。レスリーもいい?」
「うん。いいよ。ユリアのところの次は僕ね!」
先ほどからおいしそうな匂いにつられて、いろいろな食べ物を少しずつつまみながら、ユリアとレスリーが様々なところに連れて行ってくれている。…主に、子どもたちが行きたいところではあるが、お祭りがはじめてのラヤーナにはそれでもとても楽しい。子どもたちの興味のある出店の隣に、ラヤーナの興味のある物が売っていると、子どもたちは自分たちの欲しい物を買ったり、見たりすることに満足した後、ラヤーナの見たいお店を一緒に見てくれる。お祭りは人が多いため、はぐれると探すのが大変になるが、事前にフランカが子ども二人にきちんと話をし、ちゃんと3人(と1精霊)で離れずにまわっている。
このお祭りをまわるために、ラヤーナは子どもたちにプレゼントをしている。空間魔法を掛けたカバンだ。ラヤーナが使っているような、大きいものもなんでも入るような強い空間魔法を掛けたものではなく、普通の人たちもちょっと頑張れば買える魔道具と同じような、今は少したくさん入る仕様になっているラヤーナが作った魔道具のカバンだ。今は、というのは、二人がもう少し大きくなった時に、入れられる容量が増えるように時間魔法と空間魔法を掛けている。
そして子どもたちは、自分のお小遣いで(ラヤーナからの特別手当)好きなものを買って、カバンに入れている。食べ物はラヤーナが購入しているため、子どもたちが買っているのは自分たちの物、欲しくてもこれまで買えなかったものや、お祭りでしか手に入らやないような子ども用の道具やおもちゃなどだ。
「これ~~~、ユリアがほしかったのだ!やった~~~!」
「見て見て、ラヤーナ!今これが流行ってるんだよ。お祭りが終わったらみんなで遊ぶんだ!」
『ラヤーナ!・ラティね・これね~~~・これ食べてみたいの~~~~』
「……ねぇ、二人とも…この…キラキラしたお菓子は美味しいのかしら?」
「え~~~、ラヤーナ、それおいしくないやつだよ…」
「やっぱり…」
「それ、見て楽しむお菓子だよ。キラキラしているもので、一応食べれるっていうだけだよ。」
「そうよね…美味しいわけじゃないのよね…」
『え~~~~~・キラキラのおかし~~~~~・ほしいのなの~~~~~~~』
「…キラキラしたお菓子で…美味しいものってあるかしら?」
「キラキラ?ラヤーナはキラキラが好きなの?」
「えーと…今だけ…かしら…」
「今だけなの?」
「そう…ね…こう…変わったものに挑戦してみたいなって思ったのよ。でもやっぱり美味しいほうがいいわ。」
「うーん……ユリアはしらないの……お兄ちゃんは…しってる?」
「うーん……あ!!!あそこなら美味しいかも!」
「どこかにあるの?」
「今年もあるかわからないけど、一昨年はあったよ。キラキラまではわからないけど、いろんな色で、でも美味しくて、すごい人がいっぱい並んでたよ。一昨年はお菓子通りの一つにあったんだ。探してみよう!」
3人と1精霊ははぐれないようにしっかりと手をつなぎながら、そのお店を探しながら歩いた。ときどき珍しいお店や、面白そうなお店、二人が興味のあるお店があると、そう言うお店を見たりしながら歩き、半ルラルほど歩くと、お菓子の出店がたくさんある通りの一つにお目当ての店があった。
「あ、あれだよ!やっぱり今年もたくさん人が並んでいる。行ってみよう!」
レスリーに連れられみんなで列に並ぶ。ラティは気に入ったようで、お菓子が並べられているところに一足(一飛び?)先に行き、いろいろと見ているようだ。
しばらく待つと、ラヤーナ達の順番になった。
「あら、きれいなお菓子ね!」
「ユリアもほしい~」
「僕も欲しい!」
『ラティも欲しいのなの~~~~』
「そうだろう、そうだろう。うちのお菓子は見た目が綺麗なだけじゃないんだよ。味もちゃんと美味しいよ。」
「さぁ、みんな、どれがいい?」
二人と一精霊は各々、これも、あれもと、キャンディーやトフィーのようなお菓子、チョコレートに似ているようなお菓子やクッキーのようなもの、それら全てが、色が綺麗であったり、キラキラとしていたりしており、いろいろなものが欲しくなって、結局ラヤーナが欲しいものをまとめてみんな買った。今は、みんなで同じ種類のお菓子を1つ口に入れ、残りは家に戻ってからみんなで分けることにした。
「おいしいーーー!」
「おいしいね!!」
「美味しいわね!」
『美味しいの~~~~・これはキラキラなのに美味しいのなのなの~~~~』
お菓子を買い終わると、ちょうど催し物の時間になったため、広場に向かうことにした。
「お祭りの間はね、ここでいろいろなイベントがあるんだよ!今日はここでよその町から来た芸人さんたちのお芝居が見れるんだ!2日目は剣術大会で3日目は魔法で作品を作る魔法大会で、最後の4日目がパレードだよ!」
「お芝居、楽しみね!」
「ユリアもみる~~~」
「前の方は子どもが座って見れるようになっているんだ。前に行こう!」
付き添いの大人も一人までなら前の方に一緒に座ってもいいらしい。レスリー曰く、一昨年は母のフランカに抱かれてユリアはお芝居を見ていたということだ。旅芸人の芝居は子どもたちが見ることを前提に作られているようで、ストーリーは勇者とお姫様の冒険物語で、わかりやすく、笑いあり涙ありで楽しく見ることができた。
芝居を観終わり、ハンバーガーのような、タコスのような、ピロシキのような…どれにも似ているし少しずつ違っているが、そのような食べ物を夕食代わりに3人と1精霊で食べ、さらにアイスクリームのようなデザートを食べると全員もうお腹がいっぱいになった。ユリアは朝からはしゃいでいたこともあり、目が半分閉じかかっている。レスリーも目をこすっており、すでに眠そうだ。
「レスリー、もうそろそろ戻りましょうか?ユリアもとても眠そうだし、お祭りはあと3日もあるわ。お店は明日も忙しくなりそうだから、今日は家に戻って、また明日、今日行けなかった屋台や出店を見てまわりましょう。」
「…うん…でも…もうちょっと…」
「レスリー、とても眠そうよ。ユリアは…あらあら…」
ユリアに至っては、立ったままでふらふらしている。半分寝掛けているようだ。
「ユリアはもう立っていることもつらそうよ。レスリーも、明日見てみたいところを考えながら帰りましょう。帰り道だってお祭りを見ながらゆっくり戻れるわよ。」
「…うん、わかった。」
もうそのまま寝てしまいそうなユリアを抱き上げ、ラヤーナとレスリーは帰り途中に面白そうな出店にも寄りながらゆっくりと帰宅した。本宅の子ども部屋に戻り、ユリアを寝間着に着替えさせるとベッドに寝かせる。その間、レスリーは眠そうにしながらも自分で着替えてベッドに入った。
「ラヤーナ…明日も…お祭りに……」
「もちろんよ、レスリー。明日もお祭りに行きましょうね。」
「うん。僕…明日のお店も頑張る…よ…お休み…」
「もちろん、明日も頼りにしているわ。おやすみなさい。」
『また明日なのね~・おやすみなのね~~~~』