3-7 アウロレリア王国への販売2
「ギルド長、ラヤーナさんがいらっしゃいました。」
「ギルド長、こんにちは。お待たせして申し訳ありません。」
「嬢、いやいやまだ時間前じゃて。今日も店は繁盛しておったの。」
「はい。おかげさまで、ありがとうございます。」
「ギルドショップでの薬もほとんど売り切れ状態なのよ。ラヤーナさん、あとで追加納入の相談はできる?」
「はい。」
「それじゃ、メイネルス氏の商談の後にその件については相談しましょう。」
「さて、アルナウト殿、先ほどもお伝えした通り、嬢との取引はギルドを通してのものになるがよろしいかの。」
「ヴォイット殿、もちろんそれで構いません。」
「…あれ…ギルド長、メイネルス氏とお知り合いなんですか?」
「ああ、メリル、アルナウト殿とは昔からの知り合いでの。」
「メリルさん…でしたか。ええ、昔こちらのギルド長になられる前、アウロレリア王国にいらっしゃった際にヴォイット殿とは知り合ったんですよ。」
「嬢、アルナウト殿であればアウロレリア王国で薬の販売を任せても大丈夫じゃ。安心して商談するとよいよ。」
「そうですか。ギルド長にそう言っていただけると安心です。」
「昨日ラヤーナさんのお店に伺い、いろいろな薬を見せていただきました。どれも素晴らしいですね!すぐにでも私の国で販売したいと思います。」
「そうですか。そう言っていただけると嬉しいです。」
「今日見せていただいたものですが、まずは全て1000ずつ扱わせていただけませんか?」
「1000…ですか…」
「はい。お一人ですべて薬は作っておられると伺いました。すぐには無理だとは思いますが、昨日見せていただいたものをまずはそれだけ扱わせていただきたい。」
「お祭りの期間は、この町にとどまり、お店で販売したりお祭りを楽しむ予定にしています。その間ほとんど薬は作れませんので、お祭り後になりますが、それでもよろしいですか?」
「ええ。もちろんその後で構いませんよ。」
「そうですか…。納品の頻度などはどれくらいになるでしょう?」
「今回は初回ですので、薬を卸していただいて2週間ほどは様子を見たいと思いますが…おそらくその前に売り切れてしまうでしょう。」
「全種1000個が…ですか?」
「えぇ、私が販売するのは1つの町ではなく、アウロレリア王国の町全てです。村のような小さな集落から街のような大きなところまで、様々な場所に販売店がありますからね。小さな町では1,2個や1,2本、大きな町でも10個は置くことはできないでしょう。」
「…国全体となると…凄い数が必要になるんですね…」
「えぇ。ですが大きな街だけで扱うことはしない予定です。どこの地域でも使ってもらい、薬の重要性を理解してもらうつもりですよ。」
「重要性を理解していただけるととても嬉しいです。」
「はい。治癒魔術師が減っており、また聖水から作られる薬も非常に高価になっています。ラヤーナさん、この薬はこの世界の救世主なんですよ。」
「救世主は…ちょっと恥ずかしいですが、そのように言っていただけてとても嬉しいです。薬は頑張って作って、できるだけ皆さんの手元に届くようにしたいと思います。」
「ぜひお願いします。そして今後ですが、しばらくの間…数か月程度、まずは様子を見たいと思いますが、2週間で2000をお願いできますか?数か月間での販売実績を見て、卸していただく薬の種類の量を検討したいと思います。2週間で2000、可能でしょうか?」
「…はい…先ほど…メリルさんからこの町の店舗はサポーターを派遣してくださるということでしたので、それが上手くいけば、大丈夫だと思います。」
「ラヤーナさん、本当に大丈夫?この国の薬のこともあるのよ?」
「はい。それも大丈夫です。ギルドにいろいろとお手伝いいただいていますし、サポーターを派遣していただければ、かなり作成できると思います。」
「そうなの。それならいいけれど…無理をしてはダメよ。」
「はい。大丈夫です。」
「また薬の種類や量の検討と併せて、要望なども出てくると思いますが、そちらも今後またご相談させていただきたい。」
「えぇ、それはもちろんです。私もできるだけいろいろな薬を作って、それぞれの症状に合うものを調整したいですし、味などの好みも、それぞれの国によって異なるかもしれません。その土地柄の体調の変化などもあるかもしれませんので、ご要望と併せてそのような情報もいただけると嬉しいです。」
「そう言っていただけると嬉しいですね。アウロレリア王国の人たちも心強いでしょう。商品の受け取りは、こちらのギルドから転移魔法で送ってもらうようにします。私も時々ラヤーナさんのお店に伺いたいと思います。」
「ありがとうございます。でも先ほど少しお話に出たように、ギルドからお店のサポーターを派遣していただくと、私がお店に立つ時間は確実に少なくなると思います。町に来たとしても、お店にはあまり長い時間居られないかもしれません。」
「ラヤーナさん、しばらくは来られるときは通信用魔道具で事前に連絡をしていただけないかしら?それをギルドから情報として流すようにします。」
「…それは…一般に流す…ということでしょうか…」
「えぇ…そのつもりですけれど…薬の調整をお願いしたい人たちもいますし…」
「…そうですよね…」
「ラヤーナさんがそれでは困る、ということでしたら、情報を流すことは控えますけれど。」
「…ええと…でも…町の人たちから薬を使ってみての感想を聞けるというのはとても貴重なものなので、ぜひ伺いたいんです。…でも…うーん…どうしよう…」
「ラヤーナさん、何か困っていることでも?」
「困るって言うほどでもないんですが…その…薬目的ではないのかな、という方たちもいて…私が町に来て店頭に立つのを待っているかのような人たちがいるんです…」
「薬目的ではない?」
「はい…」
「…目的は何なのかしら?」
「フォッ、フォッ、フォッ!」
「ギルド長?」
「メリル、店にはの、嬢を目的に来る奴もおるからの。」
「ラヤーナさんが目的?」
「…おそらく…なんですけど…」
「え、誰が?ラヤーナさんが困っているのなら、出禁にしますよ。」
「…ぜひそうしていただきたいんですが…おそらくその場合は薬を買うために来ているとおっしゃると思うので…」
「…それは…面倒ね…ラヤーナさん、差し支えなければ遠慮なくここでおっしゃってください。ギルドはラヤーナさんを全力で守りますよ。」
「…差し支えは無いんですが…でも…」
『ギルド長~~~』
ラティがギルド長の耳元に飛んでいき、こっそり伝え始めた。
『*ルとね~・だ**ね~・**じね~~~』
こっそりと伝えているようなので、ラヤーナにははっきりとは聞き取れないが、おそらく、ドルーカス、団長、王子のことを伝えているのだろう。
「ほぉ~~~~」
「え、何ですか、ギルド長?」
「いやいや、なるほど、めんどくさい奴らじゃの…」
「めんどくさい奴らって…ギルド長、誰ですか?ギルド長はラヤーナさんの面倒な相手はご存じなんですか?」
「まぁの~。」
『それでね~~~・****~』
「ほほぅ…そうか、そうか…フムフム…なるほどな…」
ラティはきっとギルド長に3人が来た時の様子を伝えているのだろう。ギルド長は楽しそうにフムフムと笑っている。
「ギルド長、独り言ばかり言っていないで、ラヤーナさんをどう守るのか考えてください。」
「フムフム…そうか…そうじゃの~…嬢にはみんな対象外ということじゃな。」
「…ギルド長!」
「すまん、すまん、メリル。嬢にはの~、めんどくさい奴らが好意を寄せているようでな。」
「誰ですか、それ?」
「嬢、メリルに言ってもよいかの?」
「はい…かまいません…」
「ドルーカスと、エルウィン殿とクラウディオ王子じゃよ」
「え!面倒くさいのばっかりじゃないですか!!!」
「おや、メリル、エルウィン殿のファンだと思っておったが…」
「ギルド長、それは一般論のことですよ。3人とも面倒くさいですよ…」
「…ドルーカス殿は存じ上げませんが…エルウィンと王子ですか…確かに…」
「メイネルス氏も面倒な人たちだと思われますか?」
「そうですね…ちょっと…面倒ですね…良い方たちではあるんですが…」
「えぇ…そうなんです…」
「フムフム…オータムナスの祭りにか…」
ラティはまだギルド長の耳元でいろいろと話しているようだ。
「お祭りにも誘われたんですか、ラヤーナさん?」
「あ、いえ…誘われそうになった…というのが本当のところです…」
「オータムナスの祭りですか…恋人同士が祭りを一緒に楽しむと幸せになれる、と言われているものですね。思いを寄せる相手を誘って一緒にまわるとその恋が成就する、というのもありましたね…」
「…そんな言い伝えがあるんですか…よかった、行くことにならなくて…」
「ラヤーナさんはどなたと回られるのですか?」
「子どもたちです。二人がいろいろとおすすめのものを教えてくれるそうなので、楽しみにしています。」
「そうですか…ウム…それであれば、ラヤーナさん、私も子供たちと一緒で構いませんので、ご一緒させていただけませんか?」
「え…」
「ほほぅ…」
「え、メイネルス氏…あなたもですか?」
「実はラヤーナさん、私のタイプでしてね。一目惚れ…に近いですかね。先ほどの3人であれば私の相手ではありませんね。」
「………」
「ラヤーナさん…、ご愁傷様…」
「フォッ、フォッ、フォッ。」
『ね~ギルド長・ラティの言った通りなのね~・アルナウトもラヤーナのこと好きなのね~』
ラティとギルド長は仲良し(^^♪