3-2 おじちゃんたち
「いらっしゃいませ。」
「あー、ラヤーナさん。」
「ドルさん、こんにちは。…しばらくぶりですね?」
「あー、そうですねー…」
「えー、おじちゃんこの間も来てたよねー」
「あら、そうなんですか?」
「え、あ、その薬を…よく効くのでそれで…」
「そうですか。いつもありがとうございます。」
「いや、薬がよく効くので…いつも助かってます…」
「あまり無理をされないでくださいね。怪我は薬で治せますが、薬では治せないものもあります。鬼獣討伐は大変だと思いますけれど、気を付けてくださいね。」
「はい!!!!!」
『お兄ちゃん、おじちゃん…うれしそうだね。』
『そうだね…ラヤーナさんに気にかけてもらってうれしいんだろ。』
『おまつりにさそうのかな?』
『どうかな…ラヤーナさん、全然気づいてないし…』
『おかあさんもだよ。おじちゃんがラヤーナさん好きなの、バレバレなのにね…』
『ユリア、ラヤーナさんにもお母さんにも、僕たちからは言わない方がいいよ。大人の事情もあるだろうから。』
『うん。ユリアはいわないよ。それに、ドルおじちゃんはむりだと思うよ。』
『うん。僕もそう思う…全然押せてないよね。』
『うん。でも、あっちのおじちゃんだってむりだとおもう。』
『そうなんだよなー。ラヤーナさん、全然気づいてないよね。』
『うん。きづいてないし、きにしてないもん。』
『…僕もそう思う。』
『だって、ラヤーナさん、絶対、おじちゃん達よりもユリアとお兄ちゃんの方が好きだよね。』
『うん。そうだね。』
『ラヤーナさん、時々ユリアのことむぎゅーってしてくれるよ。』
『僕も、ギュってしてくれる。あ、でもこの間、もうそろそろギュっもできなくなっちゃうわね…って言ってた。』
『お兄ちゃん、おっきくなってるもんね。ユリアも早く大きくなって、お兄ちゃんとお母さんとお店のお手伝いをしたい。』
『ユリアはすでに十分仕事してるよ。この店、もちろんラヤーナさんの薬がすごいからだけどさ、絶対「ユリアのおすすめ!」って言うのがきいてると思う。』
『そっかな?だって、ラヤーナさんのおくすりすごいんだもん。みんなつかったら、みんな元気になると思うよ。お兄ちゃんもそう思うでしょ?』
『うん。僕もそう思う。』
「おい、お前たち、何を話してるんだ?」
「あ、団長様、こんにちは。」
「だんちょーおじちゃん、こんにちは。」
「…おじちゃんはやめろ…おじちゃんは…これでもまだ若いんだ…」
「…同じこと言うんだ…」
「同じ…なんだそれは?」
「おじちゃんは、みんな同じこと言うの。ユリア、さっきもおじちゃんって言ったら、まだ若いって言ってたおじちゃんがいたよ。」
「…まだ…誰だそれは…?」
「さっきまでいたよ。今は…かえっちゃったかな?」
「…他にもライバルがいるのか…」
「…おじちゃん…ラヤーナさん、あいたよ。お客さん一人かえったよ。」
「あ、ああ、ありがとう。」
『団長の方が押してるよね…』
『うん。だんちょーおじちゃんの方がおしてるね。』
『でも、どっちも無理だと思う。』
『ユリアも、むりだとおもう。それで、ラヤーナさんはユリアたちとおまつりに行くんだと思うの。』
『僕もそう思うよ。』
今日はラヤーナがお店に立っているため、レスリーとユリアは邪魔にならないように、ユリアの遊び場で、二人で遊んでいる…ように見えるが、実際は大人の様子を観察しながら二人で話しているところだ。母親のフランカとラヤーナは二人で楽しそうにカウンターの中で新しい薬のことについて話したり、接客をしたりして商品を売っている。
新しい薬ができると、レスリーたちもその使い心地等を調べるために協力している。薬は主に父親の友人などに集まってもらって試しているし、薬茶の新商品は母親の友人が集まる。子供用のシロップなどはレスリーとユリアが試したり、親が知り合い同士の友達と試したりする。強い薬は騎士団で試しているようで、この店で扱うのは基本的に優しい薬だ。
「ユリアちゃん、レスリー、こんにちは。」
「「おじさん、こんにちは。」」
「二人とも、いつもお手伝いしていてえらいな。」
「おじさん、今日はラヤーナさんがいるので、この間言っていた薬の味のことをお話されるといいですよ。」
「おお、今日はラヤーナさんがいるのか。直接聞いてみるよ。うちの孫息子はよっぽど苦いのが苦手でね、もっと甘ければ毎日飲むと言ってるんだよ。ジージャロップは体にいいし、十分甘いと思うんだけどね。」
「おじさん、チーロ(孫息子の名前)、まだ小っちゃいからだよ。」
「そうなんだけどね、ユリアちゃん…」
「ラヤーナさん、果実を混ぜたジージャロップを試作中だから、言ってみるといいよ!」
「おお、そうか、レスリー。ちょっとラヤーナさんに頼んでみてくるよ。」
孫のために薬の相談に来た男性はラヤーナと話を始めた。
「チーロ、ジージャロップたくさんのめるようになるといいね。」
「そうだね、きっと僕たちみたいに元気になるよ。」
「ラヤーナさんはきっと、チーロがのめるようなあじにしてくれるよ!ユリアもたくさんラヤーナさんに伝えたもん。そうしたらおいしいくすりがたくさんできたんだよ!」
「うん。僕の友達からも話を聞いてたよ。チーロみたいな小さい子も飲めるようになるといいとおもう。」
「みんな、ラヤーナさんのくすりをのんで、元気になるといいね!」
「そうだね。お店のお手伝いをしてラヤーナさんの薬がたくさん売れるといいな。」
「うん。ユリアもたくさんおてつだいするんだ!」
※ユリアにとって
おじさん:いわゆるおじさん、父親以上の年齢の男性
おじちゃん:いわゆるお兄さん、一般的な未婚年齢層の男性