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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第2章 れっつオープン薬屋さん
82/146

2-45 ラヤーナ 治癒魔法が発顕する


「は、はやい…」


『キャ~・アルバス速いのね~』


『急ぐぞ、感じる気が弱くなっている』


「え、それってどういうこと?」


『気はね・人が生きている気なのね~・ラヤーナは人間種だけど特別・半精霊気なのね~』


「気が弱くなるって…それって…」


アルバスはラヤーナを背負い、人が倒れている場所まで駆けていったがほんのわずかな時間しかかかっていない。

しかしその時間でさえ、命を繋げるかどうかのギリギリの時間だったようだ。

ラヤーナは倒れて意識を失っている人を急いで診察する。本当に…虫の息…という状態だ。これは一刻を争う。まず持っていた一番強い万能薬を口の中に数滴たらす。飲み込むことはできないだろうからせめて口の粘膜からでも吸収してもらえたらと考えた。すぐに塗り薬を出し、大きな傷の箇所に塗っていく。一部はえぐられているような、深く大きい傷だ。


「…まずい…これでは…どうしよう…深くても傷であれば何とかなるけれど…こんなにえぐられてしまっていては…これだけの欠損部を治す薬はまだ出来てはいないし…とにかく使えそうな薬は使ってみるしかないわ!」


手当に関しては、アルバスもラティもただひたすら見守るしかできない。

出血はラヤーナの薬のおかげで一応止まったようだが、顔色は真っ青だ。

息はまだあると言っても、かろうじて…本当に辛うじて息があるという程度で、いつ呼吸が止まってもおかしくないほど弱っている。

傷口は神水で丁寧にきれいにし、手元に持っている薬も効きそうなものは全部使ったが、悪化を防いだだけで、治すところまでにはいかない。


「どうしよう…全然薬が効かないの…なんで…」


『…怪我をしている本人に薬を吸収する力が残っていないのだろう…』


「吸収する力?」


『あぁ。この傷はおそらくこの森でできたものではない。』


「この森じゃないの?」


『あぁ、傷は鬼獣にやられたもので間違いはないが、この森にいる鬼獣ではこのような傷はできない。おそらく他の森などにいる別の種類の鬼獣にやられたのだろう。』


「じゃ、どうしてここに…」


『魔法ね!・残っている魔力全部使って、ここに転移したのと思うの~』


「転移…ここに?」


『鬼獣から逃げるために、あるいは身を守るために相当の魔力と体力を使っているな。気の残りがほとんど残っていない。』


「気が…残っていないと…薬も効かないの?」


『難しいな…』


「こういう場合は…どうしたら助けられるの…」


確かにこのようなことは以前の世界でもあったことだ。手は尽くした…だが体力が残っておらず回復できずに…ということはこれまでにもあった。


『…あのね…治癒魔法使えると・気が少なくても治せるの…』


「治癒魔法で?」


『あぁ、そうだったな。治癒魔法は人へ気の補充ができる。レベルが低くても、補充は少しだができる。少しでも気の力が戻れば、薬は効くだろう。』


「治癒魔法…そういえば…まだ使えないけれど、私には使えるようになるはず…」


『治癒魔法は発顕の条件や方法が、普通の魔法とは異なると聞く。』


『治癒魔法は・治癒の仕方を知っていないと効かないの・治す仕組みを知らないと効かないの』


「仕組み…あ…もしかしたら…前の世界の知識があれば…」


『あとはね・治したいっていう気持ちなの・強くいっぱい思うの・仕組みと気持ちと重なると・使えるようになるの・いっぱいいっぱい強く思うの』


「ラティ、わかったわ。やってみる。仕組みはおそらくわかるわ…」


ラヤーナは集中して大きなけがをしている人に手を当てる。

先ほどよりも息も細くなっている。本当にもう時間がない。

ラヤーナの治癒魔法が発顕しなければ、この人はおそらく助からないだろう。

前世界でも医師だった。できるだけ多くの人を助けたい。目の前にいる人たちを助けたい。その想いは今も変わらない。この世界に来てから、その気持ちはもっと強い。

目の前の人を助けることができずに、世界を救うことなどできるはずがない。

必ず助ける…自分にしかできないのなら、自分が助けてみせる!!!


強い気持ちを持ち、自分の魔力に集中する。

体の状態をもう一度確認し、人体図、人体模型を思い出し、内臓がどこにどのようにあって、機能しているかを思い出す。この世界の人たちの体の構造はもしかしたら違うかもしれない。そもそも魔法が使える時点で異なるのだ。でもラヤーナ自身、自分の身体が特別に変わったとは感じていない。若くなったし、髪の色も目の色も変わった。魔力もある。しかし体の仕組みや作り自体に大きな差は感じない。だからできる、必ずできるはずだ。

自分の持っている知識を思い出す。もし手術をするとしたら、きっとこことここをケアして、輸血をしながら…今は輸血はできないが、あとでラヤーナの作った薬を飲ませれば輸血の代わりの応急処置になる。大丈夫だ。傷口は…自分は外科が専門ではないが、一通りの経験はしている、縫合すれば傷口は塞がる。ここでは縫合の代わりに塗り薬を使って傷をふさいでいく。そうだ、傷をふさぐために体の力を使う。今、この人にはそれが圧倒的に足りない、だから気を送る…傷をふさぐその力を体に戻すために…流れた分の血を作り出すための気を…そうだ…そうすれば必ず助かる…薬はある…後はその薬を受け取れるように気を…気を送る…


ラヤーナの魔力が手に集まり、その魔力が白い輝きを持ち始める。


そう、そうだ…この魔法…これが治癒魔法の魔力だ…これを患者にゆっくりと当てていけばいい…


ラヤーナはゆっくりとその魔力を患者に流していく。

傷が深いところにまずは手を当て、えぐられた箇所に気を流していく。

すると…ゆっくりではあるが、傷の箇所に血の気が戻ってくる。

そしてラヤーナが先ほど塗った傷薬が効き始めたのか、傷がゆっくりとふさがっていく。

えぐられたところは再生はされていないが、ひどい状態であったものが、皮膚がうっすらとでき始めていることが分かる。ここはこのまま薬の力に任せればいい。


ラヤーナは次々と傷だらけの身体に治癒魔法を使っていく。

気を取り戻した体は、ラヤーナの薬の効果を受け入れ始めたようだ。

全部の箇所の治療を終わると、ようやく患者の顔色がよくなってきた。


『…もう大丈夫だな…』


『まにあったのね~・よかったのね~』


「本当に良かった…」


『ラヤーナ・疲れたのね~』


「えぇ、初めて使った魔法だものね。一体どうなっているのか、自分でもいまだに完全にはわかっていないの。とりあえず、使えてよかった、っていうところね。」


『少し休め。魔力がだいぶ減っているぞ。』


「えぇ、ここで少し休んでいきましょう。魔力コントロールがはじめてだから難しくて、かなり魔力を無駄にしてしまったから…」


『休憩なのね~・ラヤーナ・ラーゴ食べるのね~』


「あ、そうね。それがいいわ。」


カバンに入れておいたラーゴの実を3つ取り出した。2つはアルバスに、1つはラヤーナとラティで食べた。


「…この怪我をしている人…どうしようかしら…今の私には、ケガ人を連れての転移魔法を使う魔力は残っていないし…大人の男性は運べないし…アルバスに乗せてもらうこともできないし…かといってこのまま放置することもできないし…」


『あ!ギルド長に迎えに来てもらうのね~』


「ギルド長に?」


『そうなのね~・この人運んでもらうのね~』


「…ギルド長に…それはいいかもしれないけれど…このペンダントで連絡するときは、魔道具を使っていたのよね…今は魔道具を置いてある小屋までは戻れないし…用事があることは伝えられても、迎えに来るように伝えるのは魔道具が必要よね…どうしよう。この状態のこの人を置いて行けないし、ここまで戻るにはアルバスがいないと無理だし…」


『ん~~~~・ラティ魔法使ってみるのね・ん~~~アルバスの魔法もちょっと欲しいのなの』


『わかった…』


『ラヤーナのね・ペンダント・ちょっとだけ外して・アルバスの手に乗せてなの』


ペンダントを首から外すとラティに言われたようにアルバスの前足に乗せた。ラティとアルバスでラヤーナのペンダントに何か魔法を掛けているようだ。掛け終わるとすぐに首にかけるようにラティに言われる。


『今は特別にはずしたの・でも普段は絶対にはずさないでなの~~~~~!!!』


「分かったわ、ラティ。」

 

『今ならちょっとだけギルド長とお話しできるの・ペンダントの力・邪魔しないようにちょっとだけなのね』


「ちょっとだけね。すぐに用件だけ話すようにするわね。」


『お願いなのね~~~』


ラヤーナがペンダントに魔力を込める。ギルド長とすぐにつながり、ラヤーナは大人の重症患者がいるため、迎えに来て欲しいと告げた。本当にそれしか伝えることができずに、ギルド長との会話は切れてしまった。


「…これで大丈夫かしら…」


『…たぶん…大丈夫なのなの…』


「とりあえず、まだ私も疲れているから、ここで少し待ってみましょう。ギルド長が来なかったらその時に考えてみましょう。」


アルバスはその場でゆっくりと寝そべり始めた。



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