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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第2章 れっつオープン薬屋さん
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2-38 ラヤーナ 兄妹の父親を助ける


2人はよほどお腹が空いていたのか、ラーゴの実を2つずつ夢中で食べ、ようやく落ち着いたようだった。


「ラヤーナ、ありがとう。」

「お姉さん、ありがとう。」


「いいのよ、気にしないで。二人が元気になってよかったわ。」


「お姉さん…お願い…お父さんも助けて。」


「ユリア!」


「だって…鬼獣に襲われた怪我をなおしてくれたんでしょ?ユリアわかるもん。怪我してたもん。血がながれて、痛かったもん。でも今、傷ないもん。ラヤーナさんだったら、お父さんの病気とケガ、治してくれるもん!」


「…でも…お母さん…薬は高くて…って…だから…大変って…」


「…ねぇ、レスリー、ユリア、お父さんの具合が悪いの?」


「…うん…1か月前に…怪我をして…聖水が無くて…そのままにしてたら病気になっちゃって…」


「…そうなの…お父さん、病気で心配よね。」


「うん…お母さんいっぱい働いてるの…でも薬高いって…」


「分かったわ。これから二人のおうちに行きましょう。薬代のことは気にしなくていいから。まずはお父さんに元気になってもらわないとね。」


「え、いいの?」


「いいわよ。」


「お姉さんの薬…高いんでしょ?僕の怪我、スーってなくなったから…」


「薬はね、怪我をしている人や病気の人を助けるものなの。お父さんは怪我をして、病気なのでしょ?そうしたら、薬はお父さんに使うものなのよ。」


「…うん…お父さん…ぐすっ…元気になってほしいの…前みたいにいっぱい僕たちと遊んで欲しいの…」


「分かっているわ。二人とも泣かないで。大丈夫。きっと元気になるわ。さぁ、あなたたちのおうちに案内してくれるかしら?」


「うん。こっちだよ。」


ラヤーナとラティは二人の兄妹の後をついていく。

アルバスは森の出口まで鬼獣から守るようについてきて、町への道に出ると、森の中に静かに戻っていった。

そこから1ルラルほど歩き、ようやく二人の家にたどり着いた。

町の中にその家はあり、小さな店舗がいろいろと並んでいる通りにあった。家の敷地は比較的大きく、その小さな通りに面してまず一軒家が建っていたが、二人の住んでいる家はその敷地の奥にあるもう一軒の家のようだ。日当たりの良い場所に家は建っていて、家自体は比較的大きいがあまり手入れはされていないようだ。


「お父さんこっちなの。」


「お母さんは仕事に行ってるんだ。」


「分かったわ。とにかくお父さんを診てみましょう。」


ラヤーナは父親が寝ている、という部屋に入った。父親もオオカミ獣人の様だ。

部屋は清潔にされていたが、父親の状態は遠くから見ても良いとは言えないようだ。


「レスリー、ユリア…お前たちどこに…」


兄妹が部屋に入ってきたのを見た父親が、寝ながら二人に声をかける。

その声も弱弱しい。だいぶ体が弱ってしまっているようだ。


「あのね、お父さんを見てもらいにお姉さんに来てもらったの。僕たちお姉さんに森で助けてもらったんだ。きっとお父さんも元気になるよ。」


「うん。お姉さんのお薬すごいの!お父さんも元気になるよ。」


「…お姉さん…?あ、あなたは…」


「ラヤーナと申します。薬を作って町の人に販売しています。」


「薬を?…すみません…うちには薬代をお支払いする余裕は…」


「お子さんたちから伺っています。薬代のことは気にしないでください。薬は人を助けるためにあるものです。今私の持っている薬は、レスリーとユリアのお父さんを助けるためのものです。」


「…それは…ありがたいんですが…しかし…」


「お子さんたちが一生懸命お父さんのことを考えておられましたよ。本当に薬代のことは心配しないでください。そうですね…これは新薬なので…試していただいている…ということで、よろしいですか?」


「え、試すって…」


「できたばかりの薬です。効果を強くしたものです。まずお父さんの診察をさせてくださいね。」


「あの…」


「レスリー、お父さんの身体を診察したいの。お手伝いしてくれる?」


「うん!もちろんだよ。」


「はい。ではすみませんが、上着を脱いでください。息子さんから、お父さんは背中と胸にけがをしたと聞きました。」


「…はい…」


「…これは…鬼獣ですか?」


「…そうです…急いで帰ろうとしたときに…襲われたんです…」


「そうだったんですね。…傷が結構深いですね…聖水は使われなかったんですね…」


「…はい…この傷の深さの聖水は値段が高く…以前買っておいたものも使ってしまったんです…」


「そうですか…まず体の調子をよくしましょう。こちらを飲んでください。」


「これは…?」


「飲み薬ですよ。貧血の様ですからまずはその飲み薬です。」


父親はおとなしく薬を飲んでくれた。


「そうしたら、傷を先に直しますね。薬を塗っていきますね。」


ラヤーナは薬をそっと傷のある個所に塗っていく。胸の傷と背中の傷だ。傷はあっという間にふさがり、皮膚が引き連れるということもなく、傷跡もなくきれいに治っている。


「…な…こんな…」


「よかった。傷ができて1か月と伺って、どこまできれいに治るか心配したんですが、大丈夫でしたね。ではこちらも飲んでください。こちらはジージャロップ。少し免疫も落ちていると思うので、これを飲むと元気になりますよ。」


ジージャロップを飲んだ父親はまた驚いたようだ。


「体が…温かい…それに活力が戻って…」


「よかったです。まず10ミルほど休んでください。その後は普通に動いても大丈夫です。傷を治すために、体が頑張りましたから、少し休息が必要ですよ。」


「お父さん、少し休んで!」


「レスリー…だが…ラヤーナさんにこんなにしていただいて…いや…しかし…眠気が…」


ジージャロップの効き目が強いようで、兄妹の父親はあっという間に眠ってしまった。おそらく10ミル程度で目を覚ますだろう。


「ラヤーナさん!お母さん連れてきた。」


ユリアが母親を呼びに行ったようで、ちょうど戻ってきたようだ。母親もオオカミ獣人だ。


「あ、あの…」


「はじめまして。ラヤーナと申します。」


「ユリアからお話を伺ってびっくりして…あの…」


「……お母さんの顔色も悪いようですね…無理をなさっていたんですね…」


「え…いえ…私のことは…」


「…ちょっとこちらを飲んでください。体が楽になりますよ。」


ラヤーナが渡した飲み薬は疲労回復のものだ。


「え、あの…」


「おかあさん、飲んでみればわかるよ。」


「飲んで、お母さん」


「あの…でも…薬代は…」


「そのことはお気になさらずに。体が資本ですよ。体調が悪くなってしまうと何もできません。お代のことはお気になさらずに飲んでみてください。」


子ども二人に急かされ、母親も飲み薬を飲む。


「え、あら…え!…これは…あの…」


「お母さん、どう?」


「疲れがなくなったわ…これは…」


「よかった。元気になられたようですね。」


「ラヤーナさん、お父さんも起きたよ。」


「そう、よかったわ。」


父親がベッドから出て、ラヤーナの前にやってきた。


「あ、あなた、動けるの?」


「ああ、ラヤーナさんにいただいた薬のおかげだよ。」


「だって、あなた怪我で…」


「怪我もきれいになった。」


「…傷の…跡がないわ…」


「ユリアもラヤーナさんの薬でけががなおったの!」


「あ、ユリア、馬鹿!」


「…ユリア…?」


「レスリー、どういうことだ…」


レスリーがしどろもどろで、森でラヤーナ達に助けられたこと、二人ともひどい怪我を負っていたが、ラヤーナの薬に助けられたこと、この薬なら父親を助けられると思い家に来てもらったことなどを話した。


「ラヤーナさん、すみません、子どもたちがご迷惑をおかけして…」


「ラヤーナさん、すみません。子供たちだけではなく、私たちまで助けていただいて…」


「いえいえ、お気になさらないでください。私の薬は町の人や国の人を助けるために作ったものです。この薬は怪我や病気の人たちに元気になってもらいたくて作っているものです。ですから今日は皆さんとお会いして、皆さんの助けになれてとてもよかったんです。」


「ラヤーナさん、本当にありがとうございます。私の身体は先ほどまで鬼獣にやられた傷で、どうしようもなかった…。だが今、傷はきれいに治り、身体の調子も前よりずっといいくらいだ。妻にも無理をさせて、子どもたちにもひもじい思いをさせてしまった……本当に情けない…」


「お父さん、そんな風に思わないでください。鬼獣の被害はたくさんありますし、騎士団の人たちも対応に追われて、ケガ人も増えているようです。ですから情けないなどと思わずに、これからまたご家族で仲良く過ごしてください。」


「…ありがとうございます。ラヤーナさん。うちには薬を払えるお金もなくて…」


「本当に、そのことはいいんです。気になさらないでください。それからこちらも置いていきますね。」


「これは…?」


「これはジージャロップです。このビンは効果が軽いもので、風邪の予防などで使えます。こちらはもう少し効果が強くて、風邪などの時に飲んでください。この小さなビンは先ほどの飲んでいただいた効果が強いものです。ちょっと効き目が強いので、本当に具合が悪いときにだけ飲むようにしてくださいね。そしてこれは塗り薬です。これは先ほどのような強い効果はありませんが、軽い擦り傷等に、薄く塗って使うとよいですよ。普段はこの塗り薬程度がちょうどよいと思います。」


「こんなに…治していただいただけでも十分です。こんなにいただけません。」


「いえ、ぜひ使ってください。怪我をして重い病気になってしまうと先ほどのように寝たきりになってしまいます。症状が悪くなる前に、早めに対処すれば、数日でよくなります。レスリーもユリアもお二人のことを心配していました。とても良いお子さんですね。大事にしてください。」


「ラヤーナさん…ありがとうございます。」


「本当にありがとうございます。」


2人はいつまでもラヤーナに頭を下げていた。


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