2-33 ラヤーナ 薬の定期注文を受ける
ひとまず今回の試薬実験が終わり、エルウィンは騎士たちを王都に転移させているようだ。ラヤーナは先にギルド長と今後のことについて相談することにした。メリルは団長の転移の手伝いをし、終わったらすぐにこちらに来るそうだ。
「ラヤーナ嬢、疲れたじゃろ。」
「いろいろと試すことができてよかったです。味や飲みやすさについてもすごく参考になりました。」
「嬢は医療の心得があるようだの。」
「…え…」
「いや、気にせんでいい。儂も誰かに言うつもりはない。」
「………」
「そう警戒せんでもよい。森で暮らしている…といったの…フム……。ラヤーナ嬢は儂の認識では特別な加護を持っている。儂らには言えないこともいろいろあろう…じゃが気にするな、嬢のやりたいようにやるがいい。儂は嬢の味方だよ。」
「……」
『ラヤーナ・ギルド長大丈夫ね~・味方なのわかるのね~』
「…そうですか…ありがとうございます…」
「嬢には不思議なオーラがあるの…清らかなオーラじゃ…嬢が作る薬も嬢のスキルじゃろう。他のものには作れんよ。」
「………」
「メリルには言えんじゃろうて。儂も他言するつもりはない。この世界に薬を広めるのだろう。儂の力の及ぶ限り支援するよ。」
「ありがとうございます…」
「そろそろ二人が戻ってくる。」
「…わかるんですか…」
「…おいぼれの持っているスキルの1つじゃよ。」
「……」
すると部屋のドアが開き、メリルと団長が戻ってきた。
「ラヤーナさん、お疲れさまでした。今日の薬もすごかったわね。」
「メリルさん、今日もありがとうございました。味や飲みやすさ、使いやすさなど騎士の方たちからお話を直接伺うことができてよかったです。飲み薬は概ね好評だったんですが、味は少し調整する必要がありそうです。果実の味が強かったり、逆に薄かったりしたものもあったようで、私は自分の好みで作っていたんですが、町の人たちは甘みの強いものはもう少し弱めに、酸味の強いものは皆さん酸味がお好きなようなので、もう少し果実の配分も考えてみますね。」
「ラヤーナ殿、本日は世話になった。実験台とは言っても、実質は薬を優先してもらっているようなものだな。感謝する。」
「いえ、私も使っていただいたときの感想をいただけると、もっと使いやすいものを作れますので助かります。」
「それでだな、今後も薬を販売してほしい。」
「これまでと同じ効能の物ですよね。」
「あぁ、騎士団は重傷者が多い。今日試した軽めの塗り薬も欲しいが、効き目が高い方は必ずほしい。今日試した飲み薬もだ。」
「そうですね…ギルド長…騎士団の皆さんは国を守ってくださっていると思うので、私が作れる範囲の量でしたら、定期的にお売りできると思います。今後についてなんですが、騎士団への販売はギルドを通して売る、ということにさせていただいてもよいですか?」
「それはかまわんよ。メリル、個数や値段の交渉はエルウィン殿とたのむよ。」
「はい、ギルド長。」
「メリルさん、ありがとうございます。私が頂く分は、この間と同じようにしていただいて構いません。今後騎士団への販売価格を下げていく等の調整もメリルさんにお任せします。」
「分かったわ。ラヤーナさんに迷惑が掛からないよう、値段の調整はギルドで進めるわね。」
「はい。ありがとうございます。」
「ラヤーナさん、どれくらいの量をどれくらいの頻度で騎士団に販売できるかしら?」
「そうですね…2週間に1度くらいにしていただけると助かります。毎週はまだ私の方でも時間が欲しいので、今後町の皆さんに使っていただくような健康維持するようなものも作って、いずれ店舗で販売したいと思っています。その準備もしたいので時間が欲しいです。」
「2週間に1度ね。エルウィン様、それでも良いですよね。」
「あぁ、かまわん。本当は毎週…と言いたいところだが、定期的に購入できるのなら、それでよい。2週間に一度であると…できればこの間の効能が高い塗り薬は300個は欲しい。作れるか?」
「300個ですか…。そうですね、おそらく大丈夫だろうと思います。町での販売は効能の高いものは少し数を絞り、効能の緩いものを中心に販売する予定ですので。ですが今回ご用意しているのは効果の高いもの200個ですけれど、それでも良いですか?」
「構わない。次回から300個用意して欲しい。それから今日の効果が緩やかな塗り薬も欲しい。できれば一回り大きいもので100個だ。それから飲み薬も欲しいな。」
「塗り薬2種類合わせて400個は何とかできると思います。飲み薬ですが、町の人たちへも販売したいので、今は効果が高い方はどれも100個ずつ程度、効果の緩い方は50個程度でしたらご用意できると思います。」
「そうか…それくらいだよな…それでもいい。非常に助かる。」
「ラヤーナさん、今後はお店も考えているのでしょう?お店を構えるようになったらもう少し数を作れるようになるのかしら?」
「そうなればいいと思っていますが、まだいろいろと準備をしたり、効能もそうですが、作るほうの効率もいろいろと検討しているので、その時にならないとわかりませんが、お店で販売できるようになるころには数を増やしたいと思っています。」
「店か…」
「この間のお茶なども販売するのよね?」
「はい。その他にも先ほどお伝えした用な物も作りたいんです。お茶も種類を増やしたいですし。」
「お茶か…あぁ、そういえば以前のマースカのお茶、すごかったぞ。」
「え、団長様が飲まれたんですか?」
「いや、俺の知り合いに飲ませた。頭のもやもやがすっきりし、記憶力が上がったと本人が言っていた。実際に、仕事の進み具合が早くなっている。」
「そうですか…それは良かったです。」
「店ができると、この町に来ればああいうものは購入できるようになるんだな…」
「そうですね。早めにそうなるように頑張るつもりです。」
「ラヤーナさん、大丈夫よ!私も応援している。ギルド長も支援は惜しむなって言ってくださったから、ぜひ、町の人たちに安心して暮らせるための薬をお願いします。」
「はい。もちろんです。」
「それで、明日は区画ショップでの販売でいいのよね?」
「はい。前回の物も、それから今日試していただいたものも、商品として持ってきました。飲み薬については主に、効果の柔らかい方を販売したいと思います。こちらに関しては皆さんが気軽に飲んでいただけるような値段を設定してください。」
「…それは…俺も買っていいのか…?」
「……お一人1つですね。」
「…分かった…」