2-31 ラヤーナ 騎士団に連絡を取ってもらう
今回もラヤーナとラティは同じ宿屋に泊まることにした。
宿屋に行き、3~4日滞在する予定を告げ、まずはギルドに向かった。
「メリルさん、こんにちは。」
「ラヤーナさん、お久しぶりね。3週間…くらいかしら?」
「はい。大体それくらいになると思います。いろいろと試作していて、できるだけ町の人たちに使いやすいものをと思って作ってきました。」
「そう!」
「それから、騎士団の方に連絡を取りたいのですけれど…」
「あぁ、例の薬の実験台ね。」
「実験台…なんですよね…やっぱり…」
「あら、いいじゃない。こちらできちんと鑑定するから危険なことはないわよ。ラヤーナさんだって、そのつもりでしょ?」
「はい。危険なことは避けたいので…主に使い心地や種族によっての効き方の違い、飲み薬も作ったのでその味の好き嫌いなどを伺いと思っています。」
「飲み薬もあるのね。すごいわ。」
「はい。あとで鑑定もお願いしたいのですが、騎士団の方たちはご予定もあると思うので、先にそちらを決めた方がよいかと思っています。」
「分かったわ。ちょっと待っててね、今エルウィン様に連絡を取ってみるわ。」
「すみません、よろしくお願いします。」
『だんちょ…・ぶわぁ~…・やだ…』
「大丈夫よ、ラティ。もう怖くはないわよ。」
『……』
ラティは前回のことを思い出したのか、ラヤーナのポケットの中に入って、顔だけ出し、メリルを待っている。
「ラヤーナさん、お待たせしました。もうね、エルウィン様、直ぐにでも来たいっていう勢いだったわ。」
「え、すぐ…ですか?」
「いえいえ、そういうわけにはいかないでしょ。明日、騎士団を連れてくるそうよ。結構ケガ人がいるらしいから、本当は今日今すぐ来たいらしいけれど、いま鬼獣討伐からちょうど戻ってくる帰路らしいのよ。」
「…ギルドには…討伐隊の方と通信できる方法があるんですね…」
「えぇ、魔道具にそういうものがあるのよ。ギルドに置いてあるものは遠い距離も使える魔道具だけれど、近い距離の物は店舗なんかでも使われているわよ。」
「そんな魔道具があるんですね。あとで魔道具通りに行ってみます。」
「時間があれば見てみるといいわよ。今回はどれくらい町にいる予定?」
「3~4日の予定です。前回の薬も持ってきたので、また区画ショップで販売したいことと、新しい薬も持ってきたので騎士団の皆さんに試していただいて、もっと使いやすくするためのヒントをいただければと思っています。」
「今後は?これからも3週間に1度程度町に来る予定?」
「はい。まだどのくらいの頻度になるのかはわからないんですが、薬の需要がどれくらいあるのか、町に皆さんはどのようなものを欲しいと思っているのか、それがある程度わかれば、2週間に1度くらいに来れるようになれればと思っています。」
「ラヤーナさん、実はね、あなたの薬は手に入らないのかっていう問い合わせがギルドにあって、今後のことを相談しようと思っていたの。それから騎士団の方だけれど、ケガ人が多くなっている関係で、定期的に欲しいそうなのよ。できれば効能を落とさない効果の高いものの方よ。ラヤーナさんが以前おしゃっていた効能が緩やかなものは町の人たちからの需要はとても高いと思うわ。彼らはそれほど危険な仕事をしているわけでもないしね。でも騎士団の人たちは鬼獣の対応以外にも、危険なことも多くて、それで命を落としてしまう人たちもいるの。」
「…そうですか…確かに鬼獣への対応も大変ですが、それ以外の危険な任務もあるんですよね…」
「そうなのよ。ラヤーナさん、明日私も騎士団長と一緒に薬の様子を見せてもらってもいい?ギルド長も参加したいと言っていたわ。」
「はい、もちろんです。」
「できればその後、騎士団長とギルド長も交えて、今後の薬販売について相談したいの。」
「もちろん、こちらこそお願いします。」
「ラヤーナさん、今少し時間あるかしら?」
「はい、大丈夫です。」
「今回、騎士団に試してもらう薬ってどれくらいあるの?」
「効能の高さを調整したものもありますし、その他の薬もあります。今回は飲み薬も作ってみました。」
「飲み薬…さっきも言っていたものよね?聖水の薬は飲んでも効果がないのよ。でもラヤーナさんの薬は飲んでも効果があるのよね?」
「はい。痛用薬は体に振りかけますよね、でもそれだと効き目が薄くなったり、効くまでに時間がかかったりするんじゃないかと思っています。薬を直接飲んで、身体に取り込むことができれば体の中から効いてくるので、効果も時間も早くなると思って試作しました。私も一応飲んでみましたが、特に副作用等は無いと思います。」
「そう…今ならちょうど受付対応のギルド職員が他にもいるから、先に薬の鑑定をさせてもらってもいいかしら?そのほうが明日、たっぷりと時間が取れるでしょう?」
「あ、それは助かります。ぜひお願いします。」
ラヤーナ(とラティ)はメリルと一緒に薬の鑑定をした。
例の鑑定装置だ。ラヤーナの鑑定スキルがこちらに来る直前に上がったため、今回持ち込んだ薬は全て自分でも鑑定済みだが、鑑定装置でも確認しておきたい。
装置で分かった効能の結果だが、ラヤーナの鑑定結果と同じで、鑑定スキルが鑑定装置と同じ精度まで上がったことも分かった。
効果数値だけを見ていくと、
・傷薬(軽いもの)1/10~3/10
・飲み薬(軽いもので痛みを和らげるもの)
・頭痛用1/10
・腹痛用1/10
・貧血用(造血剤)1/10
・倦怠用(疲労回復)1/10
・飲み薬(中くらいの効能、即効性がある)
・頭痛用2/10
・腹痛用2/10
・貧血用(造血剤)3/10
・倦怠用(疲労回復)3/10
・風邪用(総合感冒薬)3/10
・ジージャロップ効果軽 (風邪予防シロップ)1/10
・ジージャロップ効果中 (総合感冒薬の軽いもの、風邪シロップ)3/10
・ジージャロップ効果強 (風邪薬、万能薬の軽めのもの、様々な体調不良に有効)6/10
「ジージャロップって何かしら?」
「ジージャとビーロップを使った甘い薬用シロップです。一番軽いものは、お湯で薄めて飲むと、体にいいですよ。」
「なるほどね…効能にも軽い風邪に効くとあるわ。予防にもなるのね。」
「はい。」
「…このジージャロップ強は…すごいわね…万能薬なのね…」
「そうみたいです。万能薬といっても、大きな病気などには不足だと思います。」
「もうアエスタース(夏)の終わりで、これからオータムナス(秋)になるのよ。風邪が流行るのよね。ジージャロップが家にあればこの後のイエムス(冬)も心配しなくてもよくなりそうね。」
「そうだと嬉しいです。ビーロップは町のベルタさんのお店で購入したものなので、町の他のお店に少しでも貢献できると嬉しいです。」
「そう…ベルタのところのビーロップなのね。それはありがたいわ。ラヤーナさんは町の人たちのことをよく考えてくれるわよね。とても嬉しいわ。」
「いえいえ、当たり前のことですから。」
「ありがとう。それじゃ、明日また受付に来てくれる?明日の件についてはギルドの方で準備しておくわ。」
「助かります、よろしくお願いします。」