2-30 ラヤーナ いろいろな薬を試作してみる
「…うーん…今日はオバーコの葉をベースにして作ってみて…」
『ラティね・チェルル入れるといいと思うのね~』
「チェルル…それはいいかもしれないわね。」
『…これはどうするんだ?』
「あ、そっちは今少し発酵させているところなの。そこにおいてもらえる?」
ラヤーナはラティやアルバスに協力してもらいながら、いろいろな薬を作っている。塗り薬の効果を弱めるために外森で普通の薬草や果実を使って、組み合わせを工夫しながら確かめているところだ。塗り薬だけではなく、薬茶も種類を増やしている。使う薬草もこれまではギーを多用していたが、少し癖のあるドーミやハーカなども使い、効能や効果の高さなどがどのようの変わるのか、試作している。
ジージャロップ(はちみつ生姜)も2種類作っている。
1つは秘森で作ったジージャを使ったもの、もう1つは普通のジージャを使ったもの。
ラヤーナが仕込んでみた時の感覚では、秘森のジージャからのものは明らかにそれなりの薬になると感じた。しかし普通のジージャはそこまで強い効能は無い。出来上がったものを鑑定してみないとはっきりとはわからないが、こちらの世界にもある初期の風邪のような症状に対しての薬の様な物ではないかと感じた。(日本にある市販用感冒薬の軽めの物程度)そしてこれも憶測だが、ラヤーナが作ったため、外森のジージャでも効能が緩いとはいえ薬になったのではないかと感じた。町の人が作っても薬にはならないだろう。これは森神人のスキルなのかもしれない。
他には薬茶以外の飲み薬も試作している。
果実を加え、苦みを抑えて飲みやすいようにしながら、頭痛や腹痛などの症状を和らげる、あるいはそれを抑える、あわよくば治す薬を試作中だ。
聖水からの痛用薬は、傷用薬と同様に、痛みがある箇所に振りかけるらしい。皮膚からの浸透を待つため、効くまでに少し時間がかかるし、効果も弱めの様だ。(飲んでも、聖水は体への薬の取り込み方が違うらしく効かないらしい)ラヤーナの神水から作る飲み薬はおそらく飲むと体の中から痛みをとる効果があるだろう。
ラヤーナの薬鑑定のスキルが上がったため、以前よりも薬の効能や高さが分かるようになってきている。もう少し薬を作って鑑定をし続ければ、おそらくギルドで鑑定してもらっている程度の鑑定はできるようになりそうだ。
もう少し薬の効能が安定して、効果の高さも調整ができるようになったら、騎士団の人たちに試してもらうつもりだ。
あと数回はギルド経由で販売してもらい、薬への理解が定着したら、町の人たちへは薬屋さんとして店舗を構えて売っていきたいし、騎士団や国などへは今後のトラブル対応なども考えると、これまで通りギルド経由でもよいと思っている。
いろいろな薬ができるようになったことは、元医者としてはとても楽しい。内科医であったとはいえ、西洋医学を学びその後東洋医学の漢方に関しても学んで、そちらを専門としていたため、このように薬の効能をいろいろと考えるのは楽しい。日本にいた頃は処方箋を出してそれを薬剤師などにまかせ調剤してもらっていたが、この世界では自分で直接調剤し、試すことができる。
薬草自体も効能が強いし、自分自身のスキルもあって、様々な薬が作れる。自分が試作した薬が予想通りの効能をもっていたり、予想外の効能が出ていたりと、いろいろと発見があり、この国の人たちが元気になれる薬がたくさんできそうなことがとても嬉しい。
この2週間ほど、ひたすら薬を作り、鑑定をし、時々秘森の家に戻りまたここで薬を作る。
ラヤーナにとっては非常に充実した時間となった。
来週騎士団の人たちに試してもらおうと思っている。
試してもらう薬は、
・傷薬(軽いもの)
・飲み薬(軽いもので痛みを和らげるもの)
・頭痛用
・腹痛用
・貧血用(造血剤)
・倦怠用(疲労回復)
・飲み薬(中くらいの効能、即効性がある)
・頭痛用
・腹痛用
・貧血用(造血剤)
・倦怠用(疲労回復)
・風邪用(総合感冒薬)
・ジージャロップ効果軽 (風邪予防シロップ)
・ジージャロップ効果中 (総合感冒薬の軽いもの、風邪シロップ)
・ジージャロップ効果強 (風邪薬、万能薬の軽めのもの、様々な体調不良に有効)
これらの薬は、秘森の材料か、外森の家の材料か、普通の材料か、いろいろと組み合わせて、効能の高さが変わるように作成を試みたものだ。
現在ラヤーナが使える薬の鑑定スキルでは、効果は間違いなくあることが分かっているし、副作用などは無いと出ている。味や効きやすさなどを確認したいため、これらの薬を騎士団の人たちに町に来てもらって試してみる。
空間魔法はまだレベル4だが、こちらももう少しで上がりそうな気配がしている。レベルが5になれば移動の拠点を増やせるようなので、時間がないときは外森と秘森の間は行き来が楽になるはずだ。それでも外森の中を歩くときは、空間魔法を使わず、なるべくアルバスと一緒に歩くつもりでいる。使えそうな素材や、野菜などを見つけたり、アルバスに場所を教えてもらったり、または鬼獣を狩って、時間魔法をかけたカバンに入れたりできる。今も数日後に町に行く予定にしているため、アルバスに鬼獣を狩ってもらい、カバンに入れてある。今回は3日ほど町に滞在して、その間に騎士団の人たちに来てもらえるか打診してみるつもりだ。販売用の薬や薬茶も用意してあるので、騎士団のお試しが先か、販売が先か、騎士たちの時間事情もあると思うので、もしかしたら薬のお試しは次回になるかもしれない。その場合は、次回の日程を決めてしまおうと思っている。
空間魔法をかけて拡張したカバンに時間魔法もかけ、素材の鮮度は落ちないようになった。実際は少しずつ落ちているようだが、1週間程度ではそれほど落ちてはいない。時間魔法もレベルが上がれば年単位で遅くできる時遅進魔法が掛けられるようになるそうだ。それよりも魔力が必要な時止め魔法は、最低でもレベル6以上の魔法らしい。ラヤーナの目的は、素材の新鮮さを保つことなので、将来的には1~2年の単位での時遅進魔法を使えるようになることを目標としている。
『ラヤーナ・いっぱいできたねの!』
『種類もいろいろあるようだな。』
「そうなのよ。今回は頑張ったわ~~~。試してみたかったことは一通りやってみたの。作ってみた薬は全部鑑定しているから効能はわかっているけど、実際に使ってみて、使いやすさや味、もしかしたら人種によって効き方が変わるかもしれないから、騎士団の人たちに試してもらって確認しないとね。」
『ラヤーナ・町いくのね~』
『そうか…また…あの肉をだな…』
「フフフ、もちろんアルバスには焼肉をお土産に買ってくるわ。時間魔法が使えるようになったから、大量に買ってくる予定よ。お肉を焼くときのソースもできれば作ってみたいけれど、今はまだ時間が足りないから、売っていないか探してみようと思っているの。」
『ソースというのか…あれはいいな…』
「さぁ、明後日には町に行くから、それまでに薬をもっと作っておきましょう。外森の畑の薬草も随分力がついてきたみたいだし、果実も効力が高くなってきたと思うの。留守の間のアルバスの薬草も準備しておくわね。」
『まぁ、無理はするな…我は森の中を歩けば空腹時に必要な食材は調達できる』
「そうなんだけれど…でも薬草もあるし、飲み水は普通のお水よりもこっちの神水のほうがいいでしょ?」
『あぁ、そうだな。それもお前がその特別な石を置いてあるから、ここで飲めば問題は無い。』
「そう、その石なのだけれど…。神水だけは、私が直接作るしかないのよね。森神人の石は、秘森かこの外森の家でしか使えないみたいだし…、森の外だと石はしばらくすると普通の石になるのよ…」
『ここで飲めれば問題ないだろう。薬草も果実も大きくなっているし、我もお前たちもここに住んで、ここで薬を作っているんだ。神水は薬を作るのに必要な物なんだろう、それであれば薬を作るところに神水があればいい。そうだろ?』
「そうよね…。アルバスの言うとおりだわ。なんだか、アルバス、私の考えていることとか心配していることとかが最近よくわかるようになったわよね。」
『これだけ一緒にいるんだ、行動はすぐにわかるようになる。』
「そんなもんなのかしら?」
『ああ…』
『ムフフ~~~~』
「何、ラティ?」
『何でもないのね~・お薬のお手伝いするのね~』
「そうね…作業に戻りましょうか。」
2章が…30話くらいで終わると思っていましたが…まだ終わらない…
もう少し続きます。