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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第2章 れっつオープン薬屋さん
62/146

2-25 ラヤーナ 騎士団長と相談する 1


ラヤーナは区画ショップの自分のブースを片付け、ギルドの受付に向かった。

メリルと騎士団長が待っているはずだ。


騎士団長が薬茶を購入した後、店を閉じるまでの1ルラルほどの時間に、薬がさらに十個ほど売れた。いくら聖水から作られる薬より安いとはいえ、それでもラーゴやオーランを買うように、ひょいひょい買えるほど安いものではない。お茶の方はほとんど売り切れたため、値段的にもこちらくらいのものを用意したいと思う。試作品として作ったものは今回販売していないため、今後は薬の効果の高さも考えて作っていく必要があるだろう。


ラヤーナが受付に到着すると、そこにはメリルがいた。


「ラヤーナさん、お疲れさまでした。初めてで疲れたでしょう。」


「お待たせしました、メリルさん。はい。初めてでいろいろ戸惑うこともありましたが、メリルさんのおかげで、たくさんの方に薬を知っていただくことができたので、とても助かりました。」


「どれくらい売れた?」


「あとで売り上げの清算もしたいんですけれど、個数としては、塗り薬が2種類合わせて140個売れました。お茶の方は、効能が高いものがいくつか残りました。あとで手元の残りを数えて正確な数をお伝えします。これが売り上げです。」


今回販売した売り上げを全てメリルに一度渡そうとしたが、メリルがそれを止める。


「ラヤーナさん、売り上げは後で一緒に清算しましょう。今はあなたが持っていて。先にギルド長のところへ行きましょう。騎士団長が待っているのよ。」


騎士団長か…ラヤーナはメリルの後からついていき、昨日も訪れたギルド長の部屋に入った。そこにはすでに騎士団長とギルド長が居り、ラヤーナの店が終わるのを待っていたようだ。


「…すみません、お待たせしました。」


「いや、いい。こちらが急にお願いしたんだ。」


「ラヤーナ嬢、今日は疲れただろう。まずはそこに座りなさい。」


「はい…失礼します。」


「ラヤーナ嬢、紹介しよう。こちらはエルウィン・バルツァー殿、王国の第二騎士団長だ。」


「はじまして。ラヤーナと申します。先ほどはお買い上げありがとうございました。」


「いやいや、今日は非常に興味あるものを見せてもらったよ。あの薬は君が作ったと聞いているが、本当か?」


「…はい…」


「聖水も使わず、治癒魔力を持たない君が?」


「…そうですね…」


「どうやって作った?」


「…特殊なスキルですけれど…」


「君の他にも作れる者はいないのか?」


「…私の知る限りでは存じ上げません。」


「それではどうやって作り方を知った?」


「…あの…これは尋問なのですか?…私にはこれ以上お答えできません。」


「……いや…………すまない……そういうつもりではないのだが……あまりにも君の作った薬の効能が高すぎてな…」


「それは…すみません…作ったらできた…としかお伝えしようがありません。」


「…そうか…」


「あの、どういったお話でしょうか?製法等はお伝え出来ませんので、特に御用が無ければ私はこれで失礼して…」


「いや、待ってくれ。君に協力をしてほしくてだな…」


「…協力…ですか?…ギルド長からお聞きになっていますよね?」


「それは聞いている。王国の医療院には所属したくない…と…」


「はい。協力しない、ということではないのですが、私にはいろいろとやること…やりたいことがあるので、王国から命令されて自由に薬を作れなくなるというのは困ります。」


「…医療院は国内で地位や給与が高く、待遇も約束されているところだぞ。それでもか?」


「地位も給与も興味はありません。私の興味は国の人たちに安心して安全な薬を使ってもらうことです。いずれ私以外にも薬を作れるようになってほしいと思いますが、それは今ではありませんし、作れる人は、今は私以外にはいません。」


「君以外に作れない?どういうことだ?君は自分が唯一とでも思っているのか?」


「…唯一云々はどうでもよいです。私には私の考えがあり、私の薬を作る技術は特殊なもので、教えたり、技術を伝えて作れるようになったりするものではないんです。私のことを怪しいとお思いになるのでしたら、無理に薬を使っていただかなくてもよいです。」


「…くっ……薬を売って一人で儲けようというのか…浅ましい…王国の騎士団は命を懸けて国を守っているというのに…」


「団長!お待ちください、それはラヤーナ嬢に失礼ですぞ。」


「ギルド長…すまぬ…口が滑ったようだ…だがこいつは…」


「エルウィン様、ラヤーナさんはそんなことを考えていないんですよ。だからギルドも協力して実演販売をして薬の効果を知ってもらうお手伝いをしたというのに…」


「…ギルドが…か?どういうことだ。」


「ラヤーナさん、エルウィン様には昨日の取り決めのことを全部お伝えしていないのよ。お伝えしたことは、医療院所属をのぞまないということ薬の販売はギルド経由の2点なの。だからそれ以外のことはラヤーナさんと相談してどこまでお伝えするのか決めようとしていたの。」


「そうなんですね。」


「それ以外の取り決め?どういうことだ。」


「ラヤーナさん、エルウィン様は少し短気なところがあるけれど、ちゃんと状況を把握すれば公正に判断をしてくださるし、事情を考慮して協力してくださると思うから今回お呼びしたの。昨日の件、取り決めたことはすべてお話してもよいかしら?」


「…そうですね……話していただいて構いませんが、騎士団長様が今後どのようにお考えになられても、私の意向に沿わないことはお受けできませんし、私が必要と思わない限りはギルドと私の取り決めを変更することもいたしません。」


「…何を…」


「ラヤーナ嬢、わかっておりますぞ。メリルから話も聞いておりますからな。」


「ギルド長、よろしくお願いいたします。」


エルウィンがラヤーナをにらみつけている。普通に立っていても感じる威圧感だが、にらまれるとさらに何倍もの圧を感じる。ラティは完全にポケットの中に逃げ込み、『団長怖いの~~~~~』と小さな声で叫んでいる。


騎士団長の怒りを強く感じたため、ここはギルド長に任せることにした。



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― 新着の感想 ―
[一言] 交渉やそれに準ずる行為をする場に浅はかで短慮な輩を出すって程度が知れる
2021/04/27 19:12 退会済み
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