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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第2章 れっつオープン薬屋さん
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2-22 ラヤーナ メリルと作戦を練り直す

この日の講習が終わると、ラヤーナは急いで受付にいると思われるメリルのところへ向かった。

ちょうどカウンターにおり、誰かと話をしている。

しばらく待っていると話は終わったようで、メリルがほっ、と息を吐きカウンターで片付けを始めた。


「メリルさん!」


「あら、ラヤーナさん、今日の講習が終わったようね。どうされました?」


「明日のことで急遽ご相談があります。お仕事中に申し訳ありません。少しお時間をいただけますか?」


「えぇ、いいわよ。ちょうど私も終わったところですし…明日のことで何か心配事があるの?」


「はい。ちょっと…もう一度相談しないといけないと今日の講習を聞いて思ったので、すみません、お仕事後なのに無理をお願いして…」


「いいのよ、気にしないで。ちょっと奥に行きましょうね。」


ラヤーナとラティはメリルの後について、いつもの相談場所に向かった。


「それで…どのようなことかしら?」


「メリルさん、私、今日講習を受けて町の薬事情をようやく理解しました。薬の値段なのですが、このまま販売したら非常にまずいのではと思います。」


「…まぁ…そうなのよね…」


「町の人、この国の人、この世界の人たちに、安くて安全な薬を使ってもらいたい、という気持ちは変わらないのですが、このまま販売したら混乱が大きくなりそうでとても不安です。私の薬の効能がちょっと高すぎるので、このままの物をこの値段で販売すると、私自身今後身動きが取れなくなってしまいそうなんです。」


「えぇ、その点は私も考えていたのよ。それで、今回は実演販売の時に協力者をお願いしたでしょう?彼らは騎士団の下級兵士と冒険者よ。そして実は王国の騎士団長にも相談をして、立ち会ってもらうことにしたの。そんな効果の高い薬があることをまだ彼らは信じていないのよ。でもあなたの薬は間違いなくこの国の人たちを助けることができるわ。だから王国の要職にいる人に見てもらって、状況を理解してもらうわ。そうすればあなたは国で保護される。ギルドだけではなく、国で保護されれば薬の不正流用はなくなるし、店舗を構えるにしても、国が保護をしてくれるから安心よ。それに、安価で、というのはとても大切なことなの。町の人たちが気軽に使えることももちろん大切よ。でも実は今、騎士団の方でも治癒魔術師の減少で現場がかなり困っているのよ。私はあなた自身のことも考えて、可能なら王国の医療院所属にした方がよいと思っているの。」


「…それは…私の立場はどうなるのでしょうか…」


「そうね…その場合は王国所属ということになるわ。今は森のようなところに住んでいるのでしょう?これまでは何とかなったかもしれないけれど、若い女性が魔獣とこれからもずっと生活をしていくことはできないわよ。だからあなたはこの機会に町で生活をした方がよいと思うのよ。医療院所属になれば王宮近くで暮らすことができるわよ。」


「すみません…私は森を離れる気もその予定もありません。」


「そう?王宮がある街はこの国で一番大きいし、若い女性が好きな綺麗なものもたくさん手に入るのよ?まぁもしそれが嫌なら、この町で医療院直属の薬店を開くということもできるけれど…」


「…町で薬屋を今後開きたいという希望は変わりませんが…医療院等の話は少し考えさせてください。私自身はできれば医療院には所属したくありません。ですが、薬を安全に流通させるためにはそれしかないということになれば、その時は考えます。」


「医療院に所属したくない?どうして?国の中でも地位も給与も高いところよ?」


「…地位も給与も…私にとってはあまり大切ではないんです。」


「そう、そうなの…私が少し先走ってしまったかしら…でも…実演販売はもう明日予定しているし…」


「あの…薬の効果を知ってもらうことは必要なので、明日の実演販売はお願いしたいです。でも提示する値段を今回は変更したいのです。このまま販売すると、国に監禁されてしまいそうで…それは嫌です…」


「………監禁………そうね…ごめんなさい…そこまでは考えていなかったわ。でも……あり得るわね……本当にごめんなさいね………知り合いが……薬が足りなくなってきたって困っていたのを知っていたから…」


「いえ、メリルさんは良かれと思って進めてくださったので謝らないでください。それに薬をこれから売っていく、ということは変わらないです。町の人たちだけではなく、いずれ国へも薬を卸していく必要があるので、そういう意味では今回王国の要職の方に来ていただけるのは逆にありがたいです。」


「そう…そう言っていただけると…でも…ラヤーナさんは森でそのまま生活したいの?」


「はい。店舗を構えたら、行ったり来たりになると思いますが、薬の基になるものが、森ではないと作れないんです。それに、落ち着ける場所はやっぱり森の中なので、薬もそこで作ります。町では作らない予定です。」


「そうなのね…でも、明日はどうするの?実演販売はするのでしょう?値段を変えると言っていたわよね。」


「はい。今回は最悪売れなくてもよいので、効果を知っていただきたい、ということになります。現在試作段階ですが、もっと効果を薄めたものも作れると思うので、そちらを先に販売していこうと考えました。今回はよく効く効果の高い薬を宣伝用に実演販売する、という形にして、値段も、通常の聖水から作る薬に近い値段、またはそれよりも少し安い程度にします。」


「…そうなってしまうわよね…」


「それで、もし今回の物が売れた場合は、私の手元には当初の予定金額だけいただき、差額はギルドに収めたいと思います。」


「え、それはどういうことかしら?」


「先ほどお伝えした、効能がもっと緩やかな薬ですが、傷用薬3~4程度の物ならできるのではないかと試作中です。傷用薬6や7の様な物を急に1や2と同じ値段で販売をすると大きな混乱になると追いますが、3程度のものを1や2と同じ値段で販売するくらいならそれほど混乱は起きないと思います。ですから、これから販売をしていくのは、3~4くらいの効能に抑えたものを作っていきます。効果が高いものは、様子を見ながら作ります。将来的にはこの、効果が高いものも現在の傷用薬1や2で販売していけるようにしたいです。

そして、先ほどの差額の件ですが、今後ギルドで、薬の流通のための調査や準備等、その費用のために使っていただきたいんです。場合によっては騎士団などには効果の高いものを早々に販売することになるのではないかと思います。その際は、急に安価にするには危険なので、聖水の半額程度にはしたいと思います。そしてその販売分についても、当初予定金額との差額をギルド管理として、不正流通がないようにするための費用にしていただきたいんです。」


「…そうね…不正流通を防ぐための様々な準備は…ギルドがやらなければならないことだけれど、急にそのためだけに予算や人員を割り振るわけにはいかないわ…しかも薬に関しては緊急案件であることは間違いないし…」


メリルはしばらく考え、フッと顔を上げると、ギルド長とすぐに相談をした方がよいからラヤーナも一緒に来るように言い、二人とラティで長と相談をすることにした。


ギルド長も交えて話した結果

・明日の実演販売は予定通り実施する

・値段は薬の効能によって、それ相当の聖水の値段の7割程度にする

・医療院所属についてはラヤーナの希望通りにする

・ラヤーナの売り上げの受取額は、予定価格での販売、または売り上げの4割、どちらか高い方にする

・差額に関してはギルドで管理し、薬流通のための経費としてのみ使用する

・今後の店舗展開に関してのサポートもギルドが全面協力する(そのための費用は差額を利用)

・騎士団等、国管轄への販売もギルド経由とする

・その他、必要に応じて支援については相談していく


ラヤーナはこれならばなんとかなるのではないかと思い、念のため、覚書書を取り交わすことにした。ラティも横で、


『そのほうがいいよ~・これならだいじょうぶそ~ね~』


と言っており、まずは明日、薬のことを知ってもらうために宿に戻ってラティと準備を進めることにした。


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