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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第2章 れっつオープン薬屋さん
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2-21 ラヤーナ 町の薬事情を知る

今日はいよいよ初心者講習3日目の「病気とケガへの対処法」の講座だ。ある意味一番興味がある講座であり、この世界の国や町の薬の状況も把握したいと思っている。


ちなみに昨日の講座ではエルクトラドムにある王国と森との関係を知ることができた。大まかなことについてはラティやレーリナ、ローラ様から聞いていたので知っていることが多かったが、国としての認識と実際の史実とは少しずれていることもあった。まぁ神界の裏事情を国が知っているわけではないだろうから、王国の歴史やエルクトラドムの歴史としてどのように知られているのか分かったので、町でのやり取りはこの情報を基に動けばよいだろう。そして、この世界には5つの森と5つの王国があるというのが分かった。ラヤーナ達が暮らしている森はヴェルネールの森でヴェルネリア王国にある。その他の4つは、


アウローレルの森を持つアウロレリア王国

ミルミオーネの森を持つミルネリア王国

サフェリアーヌの森を持つサフェリア王国

コレルファーランの森を持つコリファーレ王国


がある。それぞれの王国にある森にはもともとその森特有の植物があったらしいが、王国間で交流をしている中で、植物が持ち込まれ、畑で育てられるものに関しては、今は比較的どこの国でも採取できるようになったらしい。一部の物は、土地との相性もあるらしく、その地でしか育たないものもあるということだ。

また、外森と秘森については全く話がなく、森ということしか話には出て来なかった。おそらくではあるが、外森・秘森(精霊の森)というように認識しているのは精霊たちやアルバスのような上位種の魔獣のみで、人はたとえ亜人の最上位種であっても、秘森の存在は認識していないようだ。シールドが張られていて中に入れないということはもちろんなのだが、そもそもそのシールドを認識できないため、外森の部分だけで森全体と見られているらしい。

その他に、昔は『薬師』という職業があったようだが、今は『薬』を植物から作ることをしなくなったため、職業自体が無くなったらしい。本当は『薬草』が採れなくなり、その薬草から『薬』を作れる『薬師』がいなくなったということが真相だが、歴史上では、治癒魔法師がすぐに魔法で治療することができ、また他にも治癒魔法を使える魔術師が聖水と魔力を使って作る『薬』があるため、わざわざ薬草を育てる、という必要がなくなった、とされている。

現在は、この治癒魔法を使えるものが減ってきているということが問題になっているらしい。そのため、治癒魔法が発顕すると、国の保護対象になるようだ。

ラヤーナも治癒魔法が個人カードに現れており、しばらくすると使えるようになるだろう。国にこのことを知られるわけにはいかない、本当に精霊の指輪をしていてよかったと心底思った。それに、今のカードはローラ様が裏表の二重にしたため、さらに安心だ。


いよいよ今日の講義が始まった。


この世界の病気への対処法は主に、治癒魔術師が治癒の魔力を込めた聖水を薬として使用する。

症状が重い場合は、治癒魔術師が直接患者に治癒魔法をかけるようだ。

昔は治癒魔法師、魔術師、治癒医師等、治癒に関する各種の職業があったそうだが、今は治癒魔術師として統一されている。

薬だが、まずは聖水と呼ばれる各国の王宮内にある神聖な場所とされているところから湧き出る泉の水を使う。その水に治癒魔術師が各種の魔力を込める。

傷を治す魔力、体の痛みを取る魔力が主なもので、傷の深さや大きさで番号が振られ、傷用薬1~10、痛みをとるものは体の部位と痛みの強さで同様に番号が振られ、痛用薬1~10となっている。傷用薬1では、ちょっとした擦り傷に数滴たらして塗り広げて使うようだ。効能だが、講習で聞く限り、この傷用薬1の場合は日本で使用していた時の薄い消毒薬程度の効果らしい。傷用薬3くらいで、炎症を抑える効果が入り、傷用薬5で小さな傷をふさぐことができるらしい。大きめの傷や深い傷は傷用薬6以上の物が必要だそうだ。

この世界では、種族によって多少異なるらしいが、人として生活している生き物は(人間種、亜人、ドワーフ、エルフ)怪我をなかなかせず比較的頑丈な体になっており、皮膚の強さも人間種であってもそれなりに強いため、転んだ程度ではそもそも傷ができないらしい。しかし、傷ができてしまうと自身の傷の治癒力より菌の浸食力の方が強いため、そこから菌が入り症状が悪化することがほとんどのため、消毒が必ず必要になる。小さい傷であれば、消毒を継続してすることで、菌の侵入を防ぎその間に自力で傷を治癒するということのようだ。この傷用薬1の消毒薬は、地球の消毒薬とは少し異なるようで、患部の治癒力まで殺菌してしまうことはない。

また痛用薬に関しては、非常に軽い痛みの物は、痛用薬1~3、痛みが強くなると数値の大きいものを利用する。痛用薬1は手足の軽い痛み、痛用薬2はお腹や背中などの体の中心近く、痛用薬3は頭などの首から上の部分らしい。手足よりもお腹、お腹よりも頭の方が、薬を作るのに副作用が出ないようにするためにより繊細な魔力を使うため、数値が高くなるそうだ。

そして薬は数字が大きくなると、効果が強くなるため、値段も高くなっていくということらしい。


薬の値段は世界規模で統一されており、どこでも同じ値段で購入できる。

しかし薬そのものが貴重なため、人々はできるだけ大きなけがや病気などをしないように気を付けているらしい。

傷用薬・痛用薬ともに、レベルが1のもの、1キュプで200エルクということだ。2で400エルク、3で600エルク、それ以降は急激に値段が高くなる。ラヤーナの薬は話から聞くとおそらく傷用薬の5~8に相当するのではないだろうか。傷用薬5の値段は6000エルクだ。

これがこの世界の薬の値段とすると…ラヤーナが販売しようとしている薬は値段設定がまずいことになるのではないのか…

何故現在聖水の薬の値段が高くなっているのかの話も出てきた。

昔はこれほど高くはなく、ラヤーナが設定している値段とさほど変わらないものだった。だがこの100年の間、どんどん治癒魔法を使える人が減ってきており、この数年はかなり危機的な状況らしい。治癒魔術師の減少に関しては比較的早い段階で国中からギルドへ通達があったため、その頃から町で暮らす人たちは早めに多くの薬を家に保管しておいたため、値段が高騰しても混乱せずに何とか暮らしているようだ。この値段は現在新しく作った薬に対してのものらしい。つまりそれだけ治癒魔法を使える魔術師が減っていることになる。薬師がいなくなったことが、治癒魔法師減少とも関係があるのだろうか…この点に関しては、ラティも関係があるかもしれないけどよくわからないと言っており、ローラ様に聞けばわかるかもしれないとも言っている。


現在の治癒魔術師はほとんどが王国所属となっており、治癒魔法はあってもあまり魔力が高くない場合はこの魔法薬を作っている。少し魔力が高めの場合は、王国管理の医療院で、王族への主治医として、また国を守る騎士などの治療にあたることが多いらしい。


…ラヤーナの薬は…このまま売っていくとこの世界の薬事情を大きく変えていくのはわかった。しかしこのまま売っていくと混乱をもたらす可能性も見えてくる。

これは…再度メリルに相談をした方がよいかもしれない。少なくとも予定していた値段で販売することは危険すぎる。

ラティも隣で不安そうな顔をしながら、『作戦必要ね~』と言っている。

今日の講習後、急いでメリルに相談をしてみることにした。


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