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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第2章 れっつオープン薬屋さん
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2-16 ラヤーナ 外森に畑を作る

翌々日のマーゴの日、ラヤーナとラティはアルバスに迎えに来てもらって、外森の家で作業をしていた。昨日精霊の森で薬草たちに声をかけ、アルバスがいる外森の家で薬草として育ってみたいものがいないか聞いてみたのだ。そしてそのうちの何人かが(何草かが?)アルバスの外森の家の畑に行ってくれることになった。秘森(精霊の森)に帰りたくなった場合は、ラヤーナが連れて帰る(精霊が宿っている薬草を根がついている状態で運ぶ)という条件も付けたため、外の世界に興味のある薬草の精霊たちの中では、だれが行くのかの争奪戦になっていた。とはいっても、同じ種の精霊同士は、仲間で情報共有をできるらしいので、それほど大きなもめごとにもならず、畑が広がったら他の希望者(希望草)もつれていくとことで落ち着いた。今日はその薬草の精霊たちも一緒に連れてきている。今は畑を作って、薬草たちが安心して育つように準備をしているところだ。


『ラヤーナ・ここ・うえて』

『ラヤーナ・あそこ・うえて』

『ラヤーナ・ラティ・はたけ・うえて』


先ほどから薬草の精霊たちの希望を聞きながら、畑に植えていっている。

植え終わると薬草たちは楽しそうにおしゃべりを始めた。


『ここ・いごこち・いい』

『ここ・きもち・いい』

『ここ・かおり・いい』


『『『ここのもり・たのしい』』』


『……ラヤーナ…この草は…よくしゃべるな…』


「薬草はお話が好きなの。退屈しないでいいわよ。」


「……この薬草は…このまま食べてもいいのか?」


『まだ・だめ・もっとふえる・まだよ』

『まだ・だめ・もっとおいしい・まて・よ』

『まだ・だめ・もっとちから・でるの』


『まだなのか…』


『はたけから・たべれる・まだ』

『たべれる・なる・おしえる』

『おいしい・やくそう・なる・まつ』


『待てばいいのか…』


「えぇ。薬草が食べごろを教えてくれるようになるわよ。食べごろの薬草がどれなのか、どれが力が出るのかも教えてくれるわ。今日はアルバスのために薬草を持ってきたの。かばんに結構詰めてきたから、今取ってくるわね。畑の薬草が育つまではそれを食べるといいわ。」


『そうか!それならいい。』


ラヤーナはアルバスの薬草を取りに向かう。


『ウフフ・やくそう・おいしいの』

『おすすめ・やくそう・げんきでる』

『きずな・ちから・つよくなる』

『まつ・そだつ・おいしくなる』

『まつ・そだつ・きずな・むすぶ』

『きずな・むすぶ・たすけるの』

『ウフフ・ウフフ・ウフフ』


『………そうか………わかった…』


『ウフフ・ウフフ・ウフフ』


ラヤーナが薬草をもってアルバスのところにやってくる。


「今はこれくらいで大丈夫かしら?」


『あぁ、十分だ。』


「残りはアルバスの寝床の部屋に置いておくわね。それから乾燥薬草も持ってきたの。それもあなたのお部屋の1/3くらいに敷いておくわ。乾燥薬草も食べても大丈夫よ。好きなところで寝てね。」


『わかった。』


ラヤーナは薬草を置くと、建物の中に戻っていった。

アルバスはできたばかりの畑に植えられた薬草のそばに寝ころび、ゆったりと過ごしている。

アルバスの出会ったばかりの守護者はクルクルとよく動く。まだ会ってから4日しか経っていない…しかしもうずっと一緒に過ごしてきたような気がする。ラヤーナの側は心地がいい。何かあればすぐに守護獣としてラヤーナを守ればよいのだが、こうして穏やかに過ごしていると逆に自分が守られているのではないかと感じるほど安心できる。今代の森神人は不思議な人間だ。


家の中はラヤーナとラティがいろいろなものを作ったり、何か相談をしたりしているようだ。

アルバスとしては、居心地の良い寝床と外から自由に出入りできる大きな入り口があれば、あとはどうでもよい。人にとっての家と魔獣にとっての家は異なる。アルバスにとっての家は寝床だ。その寝床はすでに満足のいくものとしてでき上っている。だからアルバスにはすでに家は完成したも同然なのだ。まぁその他の、居間やら調剤やら…よくわからない部屋についてはラヤーナ達が好きなようにすればいい。ラヤーナがここを棲み処の一つとし、そこにアルバスのいる場所がある、それでいいのだ。


ラヤーナ達は家の中の道具を作りながら補充し、町で購入してくるもので必要なものは何か話をしていたが、その作業が一通り終わると、再びアルバスのところに戻ってきた。


「ねぇアルバス、この近くに泉か小川か…水場のようなところはないかしら?」


『水場ならラーゴの木の裏手にあるぞ』


ラティがパタパタとラーゴの木の奥の方へ飛んでいく。


『あったの~・ラヤーナ・お水ここにあるのなの~』


「アルバス、このお水、家の近くまで引き込んでもいい?」


『好きにすればいい。その湧き水まではお前たちの言う“特別な力”がある場所だからな』


「ウフフ、そうね。ありがとう、場所は…そうね、この辺りにするわね。それから…」


ラヤーナとラティは水を引き込むための場所を相談しながら、作業をし始めた。

主にラヤーナの土魔法で水路を作り、水を引いてくるようだ。1ルラルほど作業を続けていた。


「さぁ、できたわ!」


『できたのね~!アルバスも飲めるのね~・飲んでみてなのね~・美味しいのね~』


小さな水路を引き、水をいつでも使えるように家の裏手に小さな水溜を作った。そこに森神人の小屋でも使っている、“森神人の石”を設置して神水がいつでも使えるようにした。この外森の家は秘森の家と同様に、シールドをかけており基本的に外敵から守られているし、ラヤーナ達以外には入ることも認識することすらもできない。ここにはいずれ精霊たちも来るようになると思っている。神水は必要になるはずだし、薬草も神水を欲しがるだろう。

その水溜から、さらにもう1本短い小さな水路を作って水溜近くにアルバスの水飲み場を作った。アルバスが飲みやすいような形にした。


『飲んでみてなの~・アルバスの水飲み場なのね~・いつでも飲めるのね~・ラヤーナと作ったのね~』


ラティに促され、アルバスがごくごくと飲んでみた。


『…これは…水じゃないのか?』


「うーん。一応水なんだけれど…」


『神水なのね~・森の力・ラヤーナの力・混ざってるのね~・精霊の森・元気になったのね~』


『精霊の森…神水か……聞いたことがある…森神人の作る水は特別だと…命を育み、森に・生き物に力を与える水だと………これが…その神水なのか…素晴らしいものだ…』


「味は普通のお水と変わらないと思うんだけどね…」


『いや、違う。根本的に違うな。これは水というよりは…極上の生命エネルギーを直接飲んでいるような感覚だ…お前はすごいな…ラヤーナ…我はお前の守護獣としてそばでお前を守ることに誇りを感じるぞ…』


「え、そんなすごいわけじゃないわ。アルバスの方がすごいわよ。鬼獣たちを一瞬で仕留めるのよ。グリズル―なんて、もうどうしていいかわからないもの。私の方こそアルバスに守護してもらって本当に嬉しいわ。モフモフだしね…ウフフ…」


『モフモフ…我の毛のことか…』


「そう、触っていて気持ちいいのよ。さっきのブラッシング、気持ちよかったでしょ?」


『あぁ…あれは…癖になるな…』


「ここにいるときは、ブラッシングさせてね。」


『う…ウム…まぁ、いいだろう…』


『ウフフ~・モフモフなのね~・気持ちいいのね~』


ラティはアルバスの背中の毛の中に潜り込んだり出てきたりして遊んでいる。

神水が欲しいと叫んでいる薬草たちにも神水を撒いた。


外森の家の準備は順調に進んでいる。



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