2-14 ラヤーナ 外森に家を作る 2
「アルバス、じゃあここに家を建てましょう。広さは…少し広めがいいわね。アルバスの寝るところは…やっぱりこの草の上がいいのかしら?」
『この場所は特別だからな…この地から直接力を受け取っている。』
「力を受け取る?」
『我はこの外森の守護者でもある。故に森の地からエネルギーを受け取っている。この地の上で休むにはそういう意味がある。』
「やはりこの場所は特別ということね…わかったわ。アルバスが寝るところから先は壁と屋根だけにして、直接この上に寝れるようにしましょう。出入り口もそうね…魔法で結界のような入り口にすればアルバスも自由に出入りできるかしら?」
『あぁ、それはいい。人が使っているドアの様な物は面倒だからな。』
「こちら側は…あら…ここは薬草が育つわ。ここはアルバスが“休む草の上”とは少し感覚が違うわね。それと…あぁ…わかったわ。ここの薬草はアルバスのためだけの薬草を育てるわ。ここ…うん…ここからまた地の感覚が違うわ。こっち側は薬草が普通に育つわ。そこのアルバス専用の薬草畑はきっとアルバスのためにある場所よ。絶対に良いものができるわ。うん、そうよ、アルバスための薬もできる!楽しみにしていてね。」
『ラティのね・ここがいいの!・ここはラティの薬草植えてなの~・美味しいの育つのね~』
「ラティの薬草?…あら…でもラティは、精霊の森の中の薬草でないとだめでしょう?ラーゴの実は別だけれど…あら…待って…あぁ…なるほどね…ここは確かにラティのための薬草が良いかもしれないわ。ここにはラーゴの木の香りもする。アルバス、本当にこの場所は特別なのね。ここは少しだけど精霊の森と同じ力を感じるわ。あなたの言う秘森よ。そこほどの強い力はないけれど、この一帯だけはうっすらと秘森の力を感じるわ。確かにこの場所であれば薬草が育つわ。アルバスのために、ラティにも、美味しい薬草を育てましょうね。」
その後、家の間取りをアルバスとラティに聞きながら大まかに決めていった。この場所が精霊の森と同じような力をわずかとはいえ感じるということから、ここにはアルバスとラティ、ラヤーナ、そして将来的に力を取り戻したときのローラ様やレーリナ達のような精霊が来るためだけの場所とし、シールドをかけることにして、町の人たちが入ってこれないようにした。
間取りも、アルバスのくつろぐ部屋や寝床、ラヤーナの寝室、精霊たちがくつろげるような空間、広めの居間やキッチン、そして調剤室も作った。将来的に拡張もできるように、家の外回りにもゆとりを持たせている。アルバスが一番心地よく眠れる場所をまずアルバスの寝床とし、そこから必要な部屋の間取りや配置を詰めていった。
「部屋の間取りはこんな感じでいいわね。じゃ、土魔法を使って家を建てるわよ。」
ラヤーナの土魔法でレンガ造りの、3人で考えた間取りの家を作っていく。
土魔法のレベルが5となっているラヤーナの魔法だが、もっと鍛錬を積み、魔法書を手に入れて、ぜひ6に上げたいと思っている。今日は朝、町で買い物をして疲れてはいるものの、魔法を使ったわけではないため、魔力はまだ十分に残っている。
水、火、風魔法も合わせて使いながら、レンガ造りの家をどんどん建てていく。
『きゃ~・すごいの~・おうちにょきにょきして・大っきくなってるの~』
『フム…なかなか壮観だな…』
「さぁ、ある程度の物は土魔法でつくってしまうわよ!」
外壁、部屋を仕切る壁、キッチンにするための土台等、作れる者は魔法で作ってしまう。
ただ、入り口は木のドアが良いかと思ったし、テーブルやいすも、土で作ったものだけではなく、木で作ったものも欲しい。それらは明日以降、適当な木を見繕って道具も含め作成するつもりだ。
とりあえず作れる物だけは作り、ほっと一息つくことにする。
『おぉ、なかなかにいいな…』
『すごいのね~・アルバスのお部屋・外から入れるのね~』
『この場所は我が一番、この地から気持ちよく力を受け取れる場所だな。』
「えぇ、特別な場所よ。いずれここには干した薬草も半分ほど敷き詰めるつもりなの。薬草は多分、力の受け取りに干渉しないと思うわ。寧ろプラスに働くのではないかと思っているの。アルバスはその時の気分で、部屋の中の好きな場所で休むといいと思うの。」
『薬草が敷いてある部屋か…それもよさそうだ…楽しみだな…』
「他にも町で売る薬をここでも作れるようにしておきたいの。秘森とこことで、作る薬の効能の高さが変わるのか、変わらないのか…材料もいろいろと試してみたいし、鬼獣からとれる素材も薬を作るために必要なものが出てくるわ。あ、そうそう、ビーロップを買ったのよ。これも使うつもりよ。薬までになるかはわからないけれど、前は良く作っていたものがあるの。ジージャとビーロップを使うと、多分似たようなものが作れると思うのよね…。そうそう、調剤室に空間魔法を使ってアイテムボックスの様な物も作りたいのよ。素材をそれぞれしまって置けるようにしたいの。素材が劣化しないように、早く水魔法をレベル6にして、氷魔法を使えるようになりたいわ。」
『素材が劣化しないようにするなら、氷魔法よりも時間魔法だろう。』
「時間魔法?」
『あぁ。時間の進み方を変えることができる魔法だ。』
「そんな魔法があるの?」
『あるな。ただし今は使い手がいないと言われている。』
「時間魔法…過去とか現在に行ったりするのかしら…」
『そういう魔法ではない。時間の進め方を変える魔法だ。』
「進め方?」
『物の劣化を防ぐ、または止める、あるいは時間を早く進めて劣化を早くする、そういう魔法だ。』
「…それは…物が腐らなくなるということかしら…」
『まぁ、そういうことだな。ラティ、ラヤーナが昨日身に付けていたものもそうだろう?』
『そうだったのね~・森神人の小屋ね・時間魔法まだ残ってたの~・戸棚もね・時間魔法がかかってたの・お洋服はその中にあったの・だからお洋服ぴかぴかだったの~』
「…そういうことだったのね…あ、でもバケツとかそういう道具はどうだったのかしら?あれはべつに戸棚に入っていたわけではないし…」
『バケツはね・森の中心の近くに落ちていたの~・森が少しでも生き残れるように・時間経過が遅くなる魔法を森の中心辺りにみんなでかけてたの~・だからバケツ使えたの~』
「…そうだったのね…本当に…危なかったのね…」
『シールド近くのみんなね・眠ってたの・力いっぱい使って眠ってたの・でも今はね・ラヤーナいるのね~・みんな元気になったの・シールド近くのみんなも元気なの~~~・ラティ嬉しいの~・森の外に薬草少しあるくらい元気になったの・だから大丈夫なの~』
『あぁ、そうだな。我も秘森に力が戻ってきていることは感じ取れていた。森神人に会えるかもしれないと思っていた。』
「そうなのね…みんな…ラティも…アルバスも…ずっと頑張ってくれていたのね。」
『いっぱい頑張ったのね・だからね・ラティね・お薬欲しいのね~・甘いのなの・薬水いっぱい欲しいのね~・お腹すいちゃったのね…』
「あらあらあら…」
『薬水か…我も食してみたいものだな。』
「…そうね…町で買った道具があるし…薬草はカバンに入っているし…ラーゴの実は…」
『あるの~・そこにあるの~・ラティの薬草植えるところの後ろにあるの~~~・作ってなの~~~~~~』
「分かったわ。ラティ、アルバスも、少し待っていてね。さぁ、薬水を作りましょう。」
ラヤーナはラティとアルバスのために、持ってきた薬草全部とできたばかりの家の裏手にあるラーゴの実を使い、たっぷりとラーゴの薬水を作った。
『美味しいのね~~~~~~~~~~!』
『旨いな!』
2人は、作った薬水を全部飲み干し、満足そうにくつろいだ。