2-6 ラヤーナ 販売について知り、初心者講習を申し込む
ラヤーナは女性の後について、ギルドの奥の囲いのある場所に向かった。ここでその他のいろいろな話をしてくれるようだ。
「お店についてですね。」
「はい。森で…その作ったものなど、もし売れればなと思っているんですが、町の中で物を売るにはどうしたらよいでしょうか?将来的にはお店を開けたらと思っていますが、今はまだコンスタントにお店を構えて品物を売れるほどではないんです。」
「なるほど。町で売るには、販売許可を取っていただきます。どのようなものを売るのか、どのくらいの価格にするのか、ギルドで審査をします。安全性や値段設定が適切かどうか等を確認するためです。」
「そうなんですね。審査を受けるには、品物を持ってきた方がいいですか?」
「はい。実際に品物を見せていただき、ギルドで鑑定をします。その際に、販売価格のアドバイスもさせていただきます。あまり高い設定は住民への負担となりますので、必要な経費等も合わせて検討したうえで適性価格帯をお知らせします。必要経費は素材購入費用ももちろんですが、購入するかわりに鬼獣などの討伐で素材を直接入手する場合もその手間や入手の難易度が必要経費に換算されます。特殊な製造方法や素材を使用している場合、それがその品物の価値を高めるような場合は、素材についてすべて鑑定結果として出るわけではなく、安全かどうか、効能や効果があるか、住人への利になるものか、ということが鑑定基準になりますので、秘伝として継承されるようなものが知られてしまう、というわけではありませんのでその点もご安心ください。適性価格帯の範囲でしたら、値段の設定は自由にしていただいて構いません。適正価格よりも不当に高い場合はギルド管轄内での販売はできません。審査に通った品物は販売許可となります。」
ラヤーナはラティの様子をちらりと見てみた。ここで薬をだして審査を受けた方がよいか考えているところだが、ラティはカバンに入れている薬を指さし、受付の女性に審査をしてもらった方がよいと言っている。神水のことや薬草については、一応まだ秘密の範囲になるもののため、鑑定を受けて大丈夫なのか少し心配だ。
『ラヤーナ・薬見てもらった方がいいの~・これから町で売るの・だから審査必要なの~・心配ないの~・神水の秘密はまだ鑑定で出ないの~・ラティわかるの~・大丈夫なの~』
ラティが大丈夫というのであれば大丈夫なのだろう。
ラヤーナはカバンから薬を取り出して、女性に見せる。
「これを審査して頂きたいです。私が作った薬です。」
「薬?」
「はい。外の…町ではどのように薬などを取り扱っているのかわからないので、そのことも知りたいのです。これは私が森の材料で作った薬です。擦り傷や軽いやけど、虫刺されなどに効果があります。」
「これは…聖水で作ったのではないのね?」
「聖水から作ったわけではありません。」
「あなたは治癒魔法師ではないものね。先ほどの能力認識プレートには表示されていなかったけれど、どうやって作ったの?」
「あぁ…その…私のいる森でしか知られていないようで…その、森に生えている薬草を使って薬を作っています。森の水の力もあるかもしれません。」
「そう…。鬼獣に襲われてしまった村の中にはステータスには載ってこない特殊技術や製法、村人の中には特殊能力を持っていた種族の村もあるらしいから、そうなのかもしれないわね。」
特にそれ以上詮索されずに薬を手に取ってもらえ、ラヤーナはほっとした。
森神人のことは、ラヤーナの横で、まだ話さない方がいいよ~、とラティが言っている。
魔獣に育てられたということもそうだが、ギルドの職員が勝手にいろいろと納得してくれて非常に助かっている。ついでにというわけではないが、職員の話からこの世界の状況も少し知ることができてそれもありがたい。
「これが薬、というのはどうしてわかったの?」
「仲間の魔獣の傷を治すことができます。魔獣に限らず、町の人たちに安全に使っていただけると思います。」
「そう、…。効能も含めて、鑑定もできるから、それも合わせて審査ということでいいかしら?」
「はい、よろしくお願いします。」
「それでは、今鑑定装置に入れてくるわね。結果が出るまで半ルラル…半刻ほど時間がかかるの。その間、品物の売買や初心者講習と、この世界の簡単な常識をお伝えしますね。」
女性は薬をもって、一度席を立ち、鑑定の準備をすると、ラヤーナ達のところに戻って、説明を始めた。
品物の売買や初心者講習については以下の様になっていた。初心者講習については5つの講習
・この世界のなりたち、王国と森
・町での生活ルール
・読み書きと算術
・商売のイロハ
・病気とケガへの対処法
を申し込んだ。少し慣れたら、体術や魔法訓練にも申し込んでみようかと思っている。
1.品物の売買について
・販売許可が下りている品物についての販売が可能。新商品等を売る場合も、すべて審査を受けなければならない
・販売価格は、適性価格帯の中で設定する
・限定販売の場合は、ギルドの横にある、『ギルドカフェ』の中の、販売コーナーで売ることができる
・販売コーナーは、10区画あり、使用されていなければ、当日でも申し込んで利用できる
・販売コーナーの使用料は、売り上げがない場合、使用料はかからない
・売り上げがある場合、一日単位で1区画を使用することになり、使用料は1回1,000エルク、または売り上げの10%のどちらか低い方を払う
・店舗を構える場合も、販売する商品については全てギルドの審査が必要
・勝手に店舗を作ることはできない
・店舗はギルドの商業部門が管理している
・店舗は主に賃貸と購入の2種類があり、どちらも商業部門が斡旋している
・ギルドで管理している以外での店舗はギルドへの事前相談と認可が必要になる
・店舗での売買の場合、店を開く日、時間は事前に申請しなければならない
・仕入れ等のため長期休業する場合は、事前に商業部門への届け出が必要
・町での商売には税金がかかる。販売コーナーの区画使用料にはそれが含まれている。店舗の場合、賃貸の場合は毎月の賃貸料に含まれる。購入の場合は、店舗の大きさで金額が決まっており毎月支払うことになっている。それ以外の店舗の場合はギルドに事前に相談をし、税金額をきめる。その他、住民は居住している家で同様に税金を支払っている。
2. 初心者講習
・この世界のなりたち、王国と森
・町での生活ルール
・読み書きと算術
・商売のイロハ
・病気とケガへの対処法
・異種族との交流
・モノ作りのコツ
・農作物の育て方
・鬼獣への対処方法について
・体術訓練
・魔法訓練
・剣術槍術訓練