2-5 ラヤーナ ギルドで説明を受ける
「ラヤーナさん、まずはレベルですが…3ですね。魔法は3のスキルが使えるのであれば、町の人のお手伝いなどはできると思いますよ。ギルドの掲示板には、討伐のような魔法やスキルの高い人たち向けの依頼と、お手伝い等のギルドに登録済みの人であればだれでも受けられる依頼があります。レベルが上がれば、新しい討伐依頼も受けられるようになります。」
「はい。わかりました。素材を売るにはどうしたらいいですか?お肉とか…もあります。」
「あら、魔法レベル3では攻撃魔法は使えないと思うのですが…あぁ、魔獣に育てられたんですよね。その魔獣が倒したのかしら?」
「あ、そうです。その素材はどうすればいいですか?」
「素材の買取りは向こう側にある、買取りカウンターで受け付けています。今はちょうど空いているので、一緒に行きましょう。」
「はい。ありがとうございます。」
ラヤーナと周りからは見えないラティは受付の女性の後について歩く。
買取りカウンターの前に行くと、女性が説明を始めた。
「ここが買取りカウンターになります。もってきた素材をこのカウンターの買取りボックスに入れてください。食肉となる鬼獣の肉はこの赤い箱に入れてください。鬼獣のその他の素材はこちらの黒い箱に入れます。その他の物、例えば採取依頼のあった草や花、枝などはこちらの緑の箱に入れます。この箱はすべて空間魔法がかかっていて、箱よりも大きなものでもするすると入っていくので、見たことがない人は、はじめはびっくりすると思いますよ。」
「…あの…私のカバンも空間魔法がかかっているので…最初はびっくりしました。」
「あら、珍しいわね。空間魔法がかかっているカバンはとても高価なものなのよ。」
「あ、そうなんですね…」
「森で育ったということだったから、もともと生まれた村で所持していたものだったのかもしれないわね。魔獣は小さな子を育てるときに、その子に必要になりそうな道具を子供のいた場所や村などから持っていくこともあるというわ。さぁ、それでは素材の鑑定をしていきましょう。まずは、食肉からでいいかしら?」
「はい。お願いします。」
「そうしたら、まずギルドカードをカウンターの検査台にある、『カード挿入』のところに入れてください。そして赤い箱をカウンターの検査台の上に置いてください。その箱の中に、買取り用の食肉を全部入れます。入れ終わったら『検査』のボタンを押してみてください。」
カウンター近くに置いてある赤い箱を一つ手に取る。表にはわかりやすいように、肉のマークがついていた。ラヤーナはこの箱を検査台の上に置き、カバンから持ってきた食肉を出して全部入れていく。まだ氷魔法が使えないので、このまま持っていても腐ってしまう。とりあえず、持っていたものをどんどん入れていく。
「…随分あるのね…これ…グリズルーよね…こんなにたくさん?」
「あぁ、私の仲間の魔獣がかなり強いので、彼が全部狩ってくれました。」
「ホーンビットはわかるけれど、グリズルーをこれだけ狩れるのはすごいわね。まぁ、これだけ強いからこそ、村で残ったあなたのような子どもを育てることができたのでしょうね。よかったわね、強い魔獣があなたを見つけて、育ててくれて。」
「はい。本当に彼には感謝です。彼がいなかったら、正直今日ここには来れていないと思います。」
…本当に、さっきの森での戦いはきつかった…肩に座っているラティも、そうだそうだとうなずいている。
「うーん…もったいないわね…これ、毛皮とか、牙とか、きちんと別にしておくと、素材として別買取りができるのよ。このままだと食肉として一緒の計算になるわ。」
「毛皮とかそのままではまずいですか?」
「そのままでもいいのよ。ただ、食肉としての計算が、一番単価が安いの。ギルドの方で、そのような食肉素材は後でまとめて加工して食肉と素材を分けるようにするからギルド側としてはどちらでもいいのよ。素材として別にできると、部位にもよるけど、素材に関しては少なくとも買取り額は10倍以上になるわ。魔法が3のレベルでも、小型刃物などを一緒に使うことで素材として部位を取り出すことができることもあるから、それも初心者講習で習うといいわね。」
「はい。わかりました。ありがとうございます。」
「食肉としては…肉質もよいし、量もたっぷりね。買取りの代金はすべてギルドカードに登録されます。買取り終了のボタンが光ったら、『了解』を押してください。そうすると食肉素材として自動的に保冷庫に転送されるのよ。鮮度を落とさないためにね。その後順番に食肉と素材に分けられて、市場に出回るの。もし『了解』を押さないと、食肉はすべて戻されます。食肉はそのままだと痛むので、次に買い取りを押すとほぼ買取り値段は下がるので、自分たちで食べたい分は初めから別にしておくといいわよ。ちなみに、食肉売買はギルドのみになります。王国の法律で決まっているの。自分で使う分に関しては直接鬼獣を退治して手に入れてもよいことになっているわ。」
「はい。わかりました。」
「買取りボタンも押したわね。そうすると…、見て、カード挿入口が光っているでしょう?そうなったらもう取り出して大丈夫よ。さぁ、ギルドカードを確認してみて。」
ギルドバンク:458,000エルク
「あら、すごいわね。大金よ!」
「…そうなんですね…すみません、その、お金を使ったことがなくて、モノの値段とか、よくわからないんです。」
「あぁ、初めて町に来たんですものね。大丈夫よ、初心者講習では世界の常識も取り扱います。物の売買、相場などについても取り上げますよ。昔は無知な若者を対象に騙すようにして犯罪まがいのことをするようなものもいたの。今は王国が、全ギルドにそのようなことがないようにしっかりと支援するシステムがあるのよ。あなたも安心して頂戴ね。」
「はい。助かります。」
「お金、単位は『エルク』ね、引き出したいときは、引き出しカウンターに行けば大丈夫よ。」
引き出しカウンターはギルドカードを入れて、数字を入力すると、そのエルクが出てくるような仕組みの様だ。日本にいた時のATMに似ている。ギルドが開いている時間ならいつでも使えるそうだ。
「さぁ、次は素材ね。」
ラヤーナは素材についても同様に買取カウンターで手続きを進めた。今回素材として出したものはホーンビットの角だ。
ラヤーナの現在の所持金はこのようになった。
ギルドバンク:578,000エルク