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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第1章 ヴェルネールの森を再生しよう
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3 ラヤーナ 神水をふるまう (1日目)


「さて…お腹が空いたわよね…」


ラヤーナは周りに生えている木を一つずつ見ていく。


「…これは…リンゴの実?」


木になっているものはリンゴに似ている実だ。たくさんなっているわけではなく、見える範囲では全部で5,6個程度しかない。

オレンジのような実がついている木もあった。こちらは2,3個実がついている木があるが、それも多くはない。別の木にはバナナのような実がついている。しかしこちらは房ではなく1本ずつ、しかも1,2本程度しか生っておらず、木の形もラヤーナが知っているものとは少し異なる。他にもグレープフルーツのような実や、マンゴーのような実もある。こちらも木を見ると実が1つついていればよく、実がついてないものがほとんどだ。


「…どれもあまり実をつけていないのね。でも、今はお願いするしかないわね。」


ラヤーナはリンゴのような実をつけている木のそばに行き、幹にそっと手を添わせる。


「こんにちは。私はラヤーナ。さっき名前の時にさわさわとお返事をしてくれたのでしょう。少ししか身を付けていないところで申し訳ないのだけれど、大切な実を1ついただけないかしら?」


ラヤーナがそう呼びかけると、リンゴもどきの実をつけた気がさわさわと揺れ、リンゴのような実が1つ、ラヤーナの手元に落ちてきた。それをしっかりと受け取り、木に手を添わせお礼を言う。


「ありがとう。」


木はまださわさわと揺れている。何かあるのかと思い、もう一度幹に手を添わせ、ゆっくりと心を落ち着かせてみる。


『・・・し・ん・す・い・・・』


「しんすい?」


『・・・み・・・ず・・・も・り・が・み・の・・・み・・ず・・・』


「水?もりがみ?…神様のこと?…しんすいって…もしかして、神水?」


『・・・み・ず・・・ら・や・・な・・み・ず・・・』


「らやな…私?…私の水?」


『・・・い・ず・み・・・ら・や・・な・・・み・ず・・・』


「泉?ん~~水…、水を持ってきてあげればいいのかしら…」


ラヤーナがそうつぶやくと、気がさわさわと揺れる。


「お水ね。あら、でもどうやって汲もうかしらね。入れ物のようなものは…」


そう言うと、ラヤーナの足元に何かの実の殻のようなものが転がってくる。


「…これ…ヤシの実の殻?ちょうど転がってくるっていうのもすごいわね。」


ラヤーナはその実の殻を使い、湧き水を汲むとリンゴもどきの実をつけている木の根元にそっとかける。しかし、木はわさわさと揺れ何となく違うと訴えているように感じた。


『・・・ら・や・・な・・て・・み・ず・・・』


「て?」


『・・・ら・や・・な・・て・・か・け・る・・・み・ず・・・』


「私の手でかけるってこと?」


肯定するように、木はさわさわと揺れる。

ラヤーナは泉でもう一度入れ物に水を汲むと、今度は手で少しずつすくいながら木の根元にかけた。すると木がさわさわと揺れ、一瞬であるが木全体が淡い光をまとわせた。


「え、木って、光るの!?」


『・・・ら・や・・な・・あ・り・が・と・・・す・こ・し・・・げ・ん・き・』


「あら、少し元気になったのね。よかったわ。…私、木と会話できるみたいね…他の木はどうなのかしら?」


ラヤーナは近くにあった別の木に手を添え、同じように問いかけてみる。


「こんにちは。私はラヤーナよ。あなたは…」


『・・・た・・・す・・・け・・・・・・・・・・・』


「…さっきの木よりもつらそうね…葉にも元気がないし…お水がほしいの?」


『・・・ほ・・・し・・・・ぃ・・・も・り・・・が・・み・・・し・ん・・す・・・』


「…神水かどうかはわからないけど、お水ね。…本当に苦しそうねぇ…ちょっと待っていてね。」


ラヤーナは泉に行き水を汲む。手ですくいながら木の根元に水をかけていく。


『・・・も・・・と・・・ま・・・だ・・・た・り・な・・・ぃ・・・』


「あらあら、まだ足りないのかしら、本当につらそうね。これは何回か往復しないとだめそうね。」


この木も含め、森の木全体が水を欲しがっている感覚が伝わってくる。のどが渇いているような感覚で、このままでは可哀そうだ。自分が回れる範囲だけにはなりそうだが、今日は水やりで一日が終わるだろう。ラヤーナは自分が空腹だったことを思い出しリンゴもどきの実を食べた。やはり食べるとリンゴの味がし、食感もリンゴそのものだ。


「やっぱりこの実はリンゴなのかしら…」


リンゴもどきの実を1つ食べただけで空腹がなくなり、身体に元気がみなぎる。


「不思議な実ね。一つ食べただけでこんなに元気になるものなのかしら。」


空腹感がなくなっただけではなく、疲れもなくなっている気がする。


「この森の木が不思議なものだから、実も特別なのかもしれないわね。さぁ、喉が渇いている皆さんにお水をふるまいましょうか。」


ラヤーナは日が暮れるまで泉から水を汲んでは森の木々にかけ、暗くて足元が見えなくなったところで止め続きは明日にすることにした。


「結構往復したわね。この入れ物だとあまり入らないのよね。もう少し、小さめのバケツくらいの大きさの入れ物があるといいのだけれどねぇ…」


適当な木の根元に腰を下ろすと睡魔が襲ってくる。そのまま横になると自然と瞼が落ちてきた。


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