26 ラヤーナ 精霊の水飲み場を作る(25日目)
「おはようラティ」
『おはようなの~』
神水を森に撒き、畑の薬草もしっかりと育ってきている。
小屋の周りには実をつけ始めた木も出てきた。まだ食べられるほどではないが、あと1週間ほどしたら小屋の周りの木にお願いして実をもらえるようになるだろう。
薬草から薬水を作れるようになったため、まず朝にたっぷりの神水の水撒きをした後、大量に薬水を作り、それも森全体に少量ずつではあるが撒くようにした。森の中を歩いてみると、ラティと同じような姿をした精霊たちを見かけるようになった。まだ本体の木や草から離れることはできないようだが、ラヤーナが近づくと、嬉しそうに近寄って話しかけてくる。それに薬水も、どの薬草のものが好きなのか伝え、次のリクエストもしてくるようになった。
もっと力が戻ると、精霊たちは精霊の森の中は自由に飛べるようになるらしい。
飛べるようになったらラヤーナのいる小屋に薬水をもらいに来ると言っている。
「…精霊たちはみんな薬水が好きなのね…薬師のスキルが上がればもっと違う薬も作れるようになって、彼らが好きな薬も作れるようになると思うの。みんながいつ来ても美味しい薬水が飲めるようにしたいわね。」
『ラヤーナの魔法つかうの・おうち・改造するといいの~』
「そうよね…魔法のレベルが上がればいいのよね…」
『土魔法ね~・レベルが4になると・おうちの改造できるの~~』
「改造したいわね…」
『お外にね~・精霊の薬水飲み場・作るといいの~・いつでも飲めるように・魔法をかけておくの~』
「…いつでも飲めるように…?」
『そうなの~・水魔法もね~・レベルが上がると・水の性質保全・するの~』
「水の保全…そんなこともできるのね…水も土も魔法をもっと練習しないとだめだわ…」
『ラヤーナ・お風呂するの~・ラティ・お風呂好きなの~・ラヤーナとお風呂なの~』
「…確かに…お風呂は水魔法の練習になるわね…この間お風呂に入るために魔力使いすぎてとても疲れたもの…火の魔法だって調整するのが大変だったし…」
『でもラヤーナの魔力・いっぱいあがったの~・レベル上がるまで・あと少しなの~』
「…わかったわ…後でお風呂にしましょう…」
『あとね~・精霊の水飲み場・土の土台つくる~・今のレベルでできるの~』
「土の土台…そうか、先に土台ね。粘土で作ることばかり考えていて、レベルが上がらないと作れないと思っていたわ。」
『土の土台ね~・ごつごつの~・作るの~・薬水いれるところね~・つるつるするように・土に魔力入れるの~・粘土にならなくても・できるの~・レベル上がったら・粘土に変えればいいの~』
「そうね。ありがとラティ、それでやってみるわ!ねぇあとこの間から考えていたのだけれど、日時計を作ってみたいの。今はアウラの位置で何となくの時間を考えているけれど、調剤をするようになると、時間は結構大事なのよね…」
『ん-とね~・とけいね~・ラティも・一緒に作りたいの~』
「一緒に作りましょう。今日は、精霊たちの水飲み場と、日時計、お風呂にも入りましょうね。」
『水飲み場・つくるの~・ラティもおてつだいするの~・とけいも・たのしみね~』
「さぁ、そうしたら今日は忙しいわね。まずは畑の薬草を摘んで、もっと乾燥葉を作りましょう。その後で、水飲み場と日時計と、お風呂ね。」
『きゃ~・やることいっぱいなの~・たのしいの~・ラティがんばるの~』
薬草を摘んで乾燥葉を作った後、水飲み場を作る作業に取り掛かる。ラティは精霊たちのことをよく知っていて、彼らが飲みやすくなるような方法をラヤーナに教えてくれる。
結局水飲み場は、小屋の柵のようなところ、敷地の入り口近くに土台を作り、その上に大きな平たいお皿のような器を5つ乗せた。ラティの言っていたようなツルツルの状態にするのはまだ難しかったのだ。器は小屋にあったものだがそのうち器自体も作るつもりだ。5つそれぞれには別の薬水を入れる。まだ精霊たちがここまで飛んで来れないため、薬水の用意は1週間後からにしようと考えている。それまでに、水の保全魔法も使えるようになりたい。
その後ラヤーナはラティと日時計を作った。ラティに方角とアウラの位置を確認してもらいながら、土魔法を使って、畑の横にある庭の日当たりのよいところに日時計を作る。日本にいた時と同じような時間単位にした。これでおよその時間が分かる。エルクトラドムでは季節によってアウラの昇り方が変わるということはないらしい。季節も4つあるものの、非常に寒くなったり、非常に暑くなったりというほどではなく、少し暑い、少し寒い、という程度の差の様だ。この寒暖の差は、主に夜に昇るルシオラとミコーの出方の違いからくるものらしい。
そしてこの日最後にお風呂のお湯を作った。
水の生成がまだできないため、水魔法で水を留め置くのではなく小屋の裏手にある小川の水を湯舟の中に移動させた。そのほうが効率よく魔力を使え、ラティ曰く、レベル上げの練習にもちょうどよいそうだ。火の魔法も前回よりも大分上手く扱えるようになり、この日は風魔法・土魔法・水魔法・火魔法のどれも非常に良い流れで魔法を使うことができた。お風呂に入ったせいもあるかもしれないが、非常に体が暖かく、身体を流れている魔力が研ぎ澄まされたように質が上がっている気がする。今日は一日中魔力を使い続けてさすがにもう眠い。
ラヤーナは寝間着に着替え、ベッドに入った。ラティもラティ専用のベッド-ラヤーナのベッド脇の棚の上に置いた小さなバスケットに柔らかいクッションと布を入れたもの-に入る。二人ともつかれていたのか、すぐに眠りについた。