24 ラヤーナ 薬師のことを知る(16日目)
『ラヤーナ・こっちなの』
「今行くわ。」
昨晩、久しぶりにベッドでぐっすりと眠ることができた。
ここは精霊の森で、木の根元で眠ったとしても体に疲れなどはないが、気持ち的にやはりベッドや布団のような寝具でちゃんと寝ると休めた感が全然違う。ちなみにラヤーナは日本にいたころは布団ではなく、ベッド派だ。
今朝おきると1階のテーブルの上にマーゴの実が置いてあった。
ラティの話から、もう少しするとこの小屋の周りの木に実が生っていくので、そこから自分の食べたい木にお願いすると実が一つもらえるようになるようだ。今はまだラヤーナがこの世界に完全に馴染むために必要な実を森が置いているということらしい。
今朝はこの小屋の裏にある水をバケツで汲んで神水に変えこの小屋から森全体へ水を撒いた。できるだけ魔法を強く使うようにし、神水をたくさん、精霊の森すべての場所へ届けることと魔力のレベルが上がることを考えて神水を撒いた。土魔法のレベルが上がったら、小川の水を貯めるような囲いを作り、そこの中の水を全部神水に変えて森中に神水をいつでも撒けるようにしたいと思っている。
魔力が上がれば、半日かかっている神水を撒く作業も、一瞬でできるようになりそうだ。
今はお昼にラーゴの実を食べた後、ラティに連れられてオバーコが生えているところへ向かっている。ラティは食事をとらないのか聞くと、神水と、ラヤーナからあふれる森神人の半精霊気が食事の代わりになっているそうだ。薬草から薬ができるようになればそれもごちそうになるらしい。
『このおくなの・オバーコ・薬草なりたいって・いってるの』
「そうね。私にも聞こえるわ。早く行ってあげましょう。」
『ドーミもね・薬草なりたいって・いってるの・そっちも・いくの』
「はいはい。大丈夫よ、今日は午前中にたっぷり神水を撒いたから、午後は薬草を刈って風魔法で乾かしたものをこの袋に入れて、根から薬草を掘り出したものも取ってきて、育てられるように植えましょう。小屋の前に畑も作らないといけないわね。」
『そうなの・ギーの葉も!うえてって・いってたの』
「そちらにも後で行きましょう。」
『ギーの葉・見にいくの・とちゅう泉・いくの・泉・見にいくの』
「泉に?もちろんいいわよ。ラティのラーゴの木の近くだものね。」
『そうなの・でもそれだけじゃないの・泉・とくべつなの・女神さまの・泉なの』
「女神様…?そういえば、レーリナが自分は女神様のかわりって言っていたわね…」
『レーリナ・たいへん・たくさん・がんばってるの・ラティも・森も・みんながんばるの』
「…いろいろと大変なのね…確かにレーリナにこちらに連れて来られた時は、すごく困っていた感じだったし…疲れ果てているような感じだったわね。」
『たいへんだったの・でもラヤーナきたの・だからだいじょうぶなの・森の力もどるの・女神さま・もどるの・レーリナ・たくさんらくになるの』
「女神様は今、泉にいらっしゃるの?」
『女神さま・ちからつかった・今はねむってるの・おやすみしてるの・だからレーリナが・おしごとしてるの・みんなたすけるの・森のみんなで・たすけるの』
「ラティも助けてくれているものね。」
『そうなの!ラヤーナが・力もつ・ま力あがる・体げんきになる・レベル上がるの・森の力たくさんもどるの・女神さま・げんきになるの』
「ええ。私にも何となくわかるわ。私の力が強くなると、森が元気になるのね。そして森が元気になれば、女神様も元気になって、このエルクトラドムの世界もよくなるのよね?森の外はどうなっているのかしら…」
『森のそと、ラヤーナのレベル上がる・ラティといっしょにいくの・ヴェルネールの森・ヴェルネリアおうこくなの』
「ヴェルネリア王国…この森のある国がヴェルネリア王国というのね。」
『そうなの・今は精霊の森の中だけ・そのそとはふつうの森なの・そのそとに町があるの・ラヤーナのレベル・あがったら・くすり・町でうるの・おうこく・いま薬草のくすり・ないの・つくれる人・いないの・みんな・だんだん・よわっていくの・薬草のくすり・ひつようなの』
「薬を作れる人がいない?確か私の職は“薬師”となっていたから、そういうお仕事はあるのかと思ったのだけれど、今はいないの?」
『いないの・やくし・とくべつなの・ふつうのいきもの・やくしになれないの』
「…薬師ではない職ならなれるのね?」
『なれるの・いろいろあるの・しょく・たくさんあるの・ふつうのいきもの・てきせいあるの・でもみんな・なれるの』
「薬師にも適性があるということね?」
『やくし・もっととくべつなの・やくし・森神人と・森神人のにんげんしゅのしそんだけなの』
「…じゃぁ、今はいないのね…私…だけなのかしら?」
『今は・ラヤーナだけ!これから・ふえるの!』
「…増えるって…それって子孫よね…それって…」
『たのしみね~・ラヤーナ・いっぱいしそん~~・たのしみね~~~~!』
「……ラティ……一応ねぇ…まだ中身は80代のところも残っているのよ…最近自分が16才だっていう実感と感覚は出てきているんだけど…まだ部分的には80…83才だったかしらねぇ…その時の成熟感というか…年寄り感というかなんというか…まだ少しあるのよね…」
『ラヤーナ・だいじょぶなの!しそん・いっしょなの・ラヤーナの・まえのせかい・つくりかたいっしょなの~~!ラヤーナ・しそんつくるの・しっているのね~・あんしんね~』
「………………それは…まず相手が必要でしょ…………………」
『いっぱい・これからたのしみね~』