3-52 魔剣士ゲルハルト 2
何故だ…なぜなんだ!!!
あまりにもおかしい…セヴェリは魔剣士ではなかったはずだ。
それにあのギルド長はどういうことだ!
あの魔獣に至っては上位種であってもあの力はおかしい。
何か…何かが…こちらの想定外のことがおこっているのか…
あれから3回、はじめからあわせて4回の魔法剣のぶつかり合いがあった。
最大限の魔力を乗せたぶつかり合いがおこり、そのたびに大量の魔力と体力を消費している。ラヤーナの薬がある限り、こちらはすぐに回復して相手からの攻撃に備えているが、この体力と魔力はやはり本来、人ひとりが持てるものではない。
他の攻撃をしてこないところを見ると、ゲルハルトの最大の魔法は今の魔法剣から放たれる攻撃魔法の様だ。
ラヤーナは足元に魔道具を置き、その反応を見ながら魔法防御や身体強化の魔法をかけ、シールドを張り続けている。
先ほどから大きな魔法を使い続けている攻撃を担当している3者は、いくら回復薬を飲んでいるとはいえ、相当きついはずだ。
「嬢も相当消耗しておるんじゃろ?」
「大丈夫です。私もちゃんと薬を飲んでいます。」
「あいつの魔力はどうなっているんだ?明らかに尋常ではない。」
『邪気がつよくなっているぞ。』
「うーむ…此奴も相当無理をしておる様じゃの…」
『邪気が強まった!』
「魔方陣か?」
「あ!」
「どうした、ラヤーナ!」
「魔道具が…」
ラヤーナがアマートから譲ってもらった魔方陣を壊すことができる魔道具が完全に作動できるようになったようだ。
これなら…
「セヴェリさん、この魔道具を相手の方に向けてください!」
「向こうに送ることはできないぞ。」
「はい。この魔道具は手元に会った方が良いと思います。魔方陣を壊す魔道具なんです。今魔方陣を使うのはあのねっとりだけなので、そちらに向けるだけで作動します!」
「…あいつに向ければいいんだな…」
「はい!」
セヴェリは魔道具をシールドの最前線に、ゲルハルトの方へラヤーナに指示された道具の向きの通りに置いた。
『魔方陣か…』
「また攻撃するつもりじゃな。」
「いや、もう一つ魔方陣が浮きあがっている。」
「…あの魔方陣は…おそらく魔力吸収のものだと思います…今までは体に埋め込まれたまま、通常の搾取だったみたいですが、多分…それでは足りなくなって魔方陣を浮き上がらせて効果を強くしたんだと思います…」
「嬢、その通りじゃよ。魔方陣はの、浮き上がらせて使用することで、より魔力を増幅することができるんじゃ。少なくとも、エルクトラドムの魔方陣はこの地から力を与えてもらうからの。」
「そうなんですね…でもあの相手の魔方陣はこの地の恵みはありません。」
「おそらくだが…集められる全方向から魔力を集めるつもりだろう。…我々の魔力もか…」
ゲルハルトの魔力吸収の魔方陣が遠くからでもわかるほど怪しく光り始めた。
「やはり…我らの魔力を吸収つもりじゃな。」
『我の魔力が…』
『やだなの~~~・ラティの魔力が引っ張られるの~~~~』
「魔道具が作動します!」
ゲルハルトの魔方陣がラヤーナ達の魔力を吸収しようとしたところで、魔道具から小さな光の針の様な物が飛び出していく。それが怪しく光るゲルハルトの魔方陣へと向かい、その魔方陣へ次々と飛び込んでいるようだ。
『ラヤーナ~~~・まだ引っ張られるの~~~~~』
「ラティ、堪えるんじゃ!」
「シールドの魔力も奪おうとしているのか?」
ラヤーナとラティが張っているシールドの魔力が引っ張られ、いびつな形になっている。
『邪気がこちらに漂ってくるぞ!』
しかし、突然魔力が引っ張られる感覚がなくなった。
シールドも今は普通の形を保っている。
『なんだ…』
「何が起こったんじゃ?」
「ラヤーナ…この魔道具はどうなっているんだ?」
『もう引っ張られないのね~~~~~』
「よかった、魔道具がちゃんと動いたみたいです。」
「これはいったいどういうことじゃ?」
『ラティね~~~・見えたのね~』
「何が見えたんじゃ?」
『この魔道具ね~・飛んで行った光の針が魔方陣を少しずつ壊してたの~~~~~』
「なんと!」
『それでね~・魔方陣が壊れちゃったのね~』
「騎士団にいた時にはそんな魔道具、聞いたことがないぞ…」
「この魔道具は、サフェリアの魔道具屋さんから譲っていただいた物なんですけれど…」
『アマートさんね~~~』
「魔方陣解除の魔道具で、時止めの魔法が掛かっていた箱から出てきた古い魔道具なんです。私でも詳しい仕組みはわからないんです。でも…動いてよかった…」
「此奴はどうなっているんじゃ?」
「…攻撃が来ないな…」
『邪気が小さくなっているぞ』
「ラヤーナ、ギルド長とアルバスとここにいるんだ。」
「セヴェリさん!」
「嬢、おそらくセヴェリ一人で大丈夫じゃよ。何かあれば儂もいこう。今は嬢を儂とアルバスで守ろう。」
「でも…」
「大丈夫じゃよ。心配ならば付加魔法と防御の魔法をセヴェリに掛けてやるとよいじゃろう」
「…はい…」
ぐっ…何が…何が…何が…あぁ…王妃様…俺に力を…魔方陣が壊れるなど…そんなことが…
「ぐはっ…力が…集まらない…ごぼっ…」
「…ここまでだな…ゲルハルト…」
「くっ…貴様…セヴェリ!いったい何をした!俺に何をしたんだ!!!魔方陣が壊れるなど…そんなことがあっていいはずがない!この魔方陣は王妃様が直に俺に下さったんだ。その魔方陣が…がぁっ…ぐふっ…くそぉ…!!!」
「魔力も体力も、もはや残り僅かか…」
「な…な…俺を…どうする…」
「もちろんここでお前を仕留める…」
「な…なんだ…俺は…俺は…やめ…やめてくれっ!!!」
「…怖気づいたか…」
「いやだ!俺は…死にたくない!!俺は…王妃様の側に立つべき者だ!!!王妃様!!!!!王妃様―――――――――!!!」
「見苦しいぞ!」
「くそっ!!!俺は…俺こそが…美しい王妃様の側に居るべきなのだ!俺こそが美しいあの方の側にいるにふさわしい容姿と力を…」
「…お前…今の自分の状態が分かっていないのか…」
「何、何を…何を言って…」
「自分の手を見てみろ…」
「俺の手だと?」
ゲルハルトは自分の手に視線を移した…
「な…なんだ!!!!!これは…なんだーーー!!!!!!!」
「やはり…お前は搾取していただけではなく、搾取をされていたんだな…」
「な…な…な…俺の姿は…どうなっている…手が…体が……」
「そうだな…お前の予想通りだろうな…」
「やめ…やめて…やめてくれーーーーーーーー嫌だ…いやだ!!!!!!」
「哀れだな…今のお前の状態は、己がしてきたことの報いだ…」
「俺の…俺の美貌が…俺の…美しい俺が…こんな…こんな…」
「これまでだ、ゲルハルト…」
「あ…ぎゃぁぁぁ………ぁぁぁ……ぁぁ……ぁ………………………………」
※前半は結構激しい戦闘のはずなのですが…文章力が足らず、すみません。m(_ _)m