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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第3章 ラヤーナ争奪戦?
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3-45 香草と香辛料と魔道具


翌日は予定通りファーベルの町へ転移をした。1度目はまずマーケットで香辛料や香草を見てまわることにした。


「…あれ…セヴェリさん、昨日と雰囲気が違いますね。何かあるんですか?」


「今日は…マーゴの日か…ファーベルのマーケットは週の後半、マーゴの日とグーフルの日は王国内でも違う地域の品物を扱う店が出る。週の前半はこの町の近くのものを扱っている店だ。」


「それはファーベルの町だけなんですか、それともサフェリア王国のきまり?それから…曜日はどこの国でも同じなんですよね。」


「あぁ。曜日や時間はこの世界ではどの王国でも共通だ。マーケットに関しては王国ごとに独自の取り決めがある。サフェリアは今言ったように、週の前半3日と後半2日で店が入れ替わることになっている。ギーの日が休みなのはどこの王国でも同じだ。」


「へぇ~そうなんですね…やっぱり色々なところへ行ってみるのは面白いですね。その国の文化も少しずつ違うし、扱っているものも違っている……あ!」


「なんだ?」


「セヴェリさん、あれをちょっと見てもいいですか?…あの扇の形の…でも香草?…薬草にするのならわかるけど……」


ラヤーナは香草を扱っている店へ向かった。



「はい、いらっしゃいお嬢さん。何かお探しかな?」


「ええと…先ほどちらっと見えたんですが、面白い形の…香草…だと思うんですが…」


「面白い形…フーム…もしかしたらこのことかな?」


店主は扇形の葉を取り出した。


「あ!それです。それは…香草なんですか?」


「お嬢さんはこの香草は使ったことが無いのかね?」


「はい。私はこの国のものではなくて…今日は買い物に来たんです。」


「そうかいそうかい。おや、そこに居らっしゃるのは…セヴェリ団長ではありませんか?」


「あぁ。」


「…もしや…こちらの、お、お嬢さんは…団長様の奥様…」


「いやいや。彼女に申し訳ないだろう。仕事だ、仕事。」


「仕事、そうですか。そうですよね~。大変失礼いたしました。」


「いやいい。彼女はヴェルネリアから来ている。いろいろと教えてやってくれ。」


「はい。それはもちろん。」


店主はラヤーナが質問をした香草について説明をしてくれた。


「これはイーチョだよ。」


ラヤーナが気になった葉はイチョウの葉によく似たものだ。日本ではイチョウの葉をお茶にして飲むこともあり、イチョウの葉エキスとして売られている。


「これ…香草なんですか?」


「そうだよ。このまま使う人もいるが、干してから刻んで料理に混ぜたりするね。」


「…そうなんですね…」


見た目はイチョウの葉によく似ているが…香草というよりは、薬草にした方が良いと思う。少し甘い香りがするので、日本のイチョウとは違う部分もあるのだろう。こっそりと鑑定を掛けてみると、血の巡りを良くする効果を示しており、やはり薬草として使う方が良いようだ。


その後、他にもいくつかの香草について説明をしてくれた。ラヤーナはフムフムと話を聞いている…が…何だろう…何となくさっきから気分が良くない。香草の中に、気分を悪くするような効果があるのだろうか?


「お嬢さん、ちょっと気分が悪そうだね。」


「あ、すみません…なんだかちょっと気分が悪くて…」


「そりゃ多分、香草に慣れてないからだろうな。初めての香草は複数匂いを嗅ぐと、お嬢さんみたいに気分が悪くなったりするんだよ。少しすればよくなるから今はあまり匂いをかがない方がいいな。」


「そうなんですね、わかりました。気を付けますね。」


『ラヤーナ~~~・これねぇ~・たぶんいいのね~・これ使うといいのね~・これ必要になると思うのね~』


ラティが指をさしている香草には小さな白い花がついている。こちらの世界では香草として売っているが…これ…日本にいた時の薬草…ムラサキに似ている…日本では紫根と呼ばれる根を使い、外用薬としては皮膚疾患、生薬としては麻疹の予防に効くはずだ。ただ…世界が異なるから効用も異なるかもしれない。


「…店主さん、この香草は何ですか?」


ラティがこれ、と言った香草について店主に聞いてみることにした。


「おやこれかい?これはムーラというんだよ。この根っこをすりおろして肉を焼くときに少量塗り込んで焼くと、臭みが取れて美味しくなるよ。ぺパパやソルルのような強い味は無いが、肉が柔らかくなるよ。葉も使えるんだよ。葉は刻んでスープに入れるとまろやかな味になるよ。」


「そうなんですね…」


日本で使ったことがある薬草のムラサキは根だけで葉は使わない。ここは地球ではないから、葉も使って問題ないのかもしれない。

ラヤーナは先ほどのイーチョの葉とムーラを、ここに置いてあるだけ購入したいと伝える。


「…本当に全部買っていくのか?」


「…すみません…全部ではお困りですよね…他のお客様も欲しい方がいるだろうし…」


「いやいや、そう言うことじゃない。この2つはここではあまり人気が無いんだ。全く売れないことも多い。お客はたいてい他の香草を買っていくんだが…」


ラヤーナが薦められた香草はお祭りの時に他国の出店から購入したことがある。それなりの量がまだ森の家にあるし、まだ使うアイデアが出ているわけでもないので今回は特に購入しないことにしたものだ。

それよりもこの2つは明らかにすぐに薬にできそうなものだ。特にムーラの方は、疫病に効くと鑑定で表示されている。ラティが必要になると言っているのだ…もしかしたら今後このムーラを使って作る薬が必要になるのではないかとラヤーナは考えていた。そのためにはこのムーラはあるだけ購入しておきたい。イーチョも血の巡りをよくする薬になる。今作っている血行促進系の飲み薬とは異なる効果を持っているはずだ。鑑定の効能には出ていなかったが…ラヤーナの薬師として持っているスキルからの感覚から…心の臓に関わる疾患に効くのではないだろうかと感じている…。


「次にいつ購入できるかわからないので…もし大丈夫でしたら全部頂きたいです。」


「そりゃこっちはありがたいけどなぁ…本当にいいのかい?」


「はい。お願いします。」


あるだけのイーチョとムーラを買うとカバンに詰め込んだ。たくさん買ってくれたから、とサフェリアのパーセも少しつけてくれた。パーセはラヤーナも森で採取することができる。だがもしかしたら、国が変わると少し品種も変わるのかもしれない。ありがたくおまけのパーセも頂戴し、ラヤーナ達は他の店も回ってみることにした。


『キラキラ~~~~~』


「はいはい。これお願いします。」


『これはピカピカなの~~~』


「すみません、このお菓子を下さい。」


ラティが気になったお菓子を購入しながら、マーケットを見てまわる。


「あら?あれって…」


ラヤーナの目に留まったのは黄色い粉…ウコン(ターメリック)に似たものだ。


「すみません…これは?」


「あぁ、これはウーリックだよ。これはちょっと独特の風味があるけどね。ハマると好きな奴は好きだね~」


やっぱりこれはウコンだ。匂いも効能もウコンとそっくりだ。その横にはシナモンのような香りのする香辛料がある。


「これは…?」


「それはシナーモだよ。菓子なんかを作る時に使ってるやつが多いな。」


シナモンとウコン…この2つも欲しいものだ。あればいいなと思っていたが、リエスの町では売っておらず、オータムナスのお祭りの時もなかったものだ。どちらの香辛料もそれなりに人気があるようで、店の方でもかなりの量を販売用に持ってきているらしい。さすがに全部…というわけにはいかなかったが、この2つも大量に買い込んだ。


ラヤーナはマーケットで、ザクロに似たザーロ、アサイーに似たサイアーを購入した。この間、薬屋の店でお客から二日酔いの話を聞いたので、先ほどのウコンと併せて、薬が作れないかと思ったのだ。

マーケットでの買い物を終えると、一度森の家に戻り昼食をみんなでとった後、再びサフェリアにやってきた。


「セヴェリさん、今度は魔道具屋さんに行ってみたいんですが、いいですか?」


「あぁ、昨日言っていたところか。いいんじゃないか?俺は特に必ず寄らなければならないところは無い。ラヤーナの行きたいところに行ってみればいい。」


「ありがとうございます!」



ラヤーナは昨日訪れた魔道具が扱っているマーケットの通りにやってきた。オータムナスに会った魔道具屋は今日この通りで店を出すだろうと昨日教えてもらったからだ。

いくつかの魔道具店をまわりながら、ようやく店を見つけた。


「あ、アマートさん!」


「ん?…おや…あぁ!!!あの時のお嬢さんか。」


「はい。先日はありがとうございました。今日はアマートさんのお店が出ると昨日他の魔道具店の方から伺いました。」


「それで今日来てくれたんだな。」


「はい!」


「そうか、そうか。魔道具の修理はやってみたかい?」


「はい。いくつかは自分で直すことができました。でもパーツが細かすぎて、なかなか修理できないものもあったりして大変です。」


「まぁなぁ…。慣れないうちはそんなもんだよ。だが自分で修理してみたってところがすごいじゃないか。」


「はい。アマートさんからたくさんアドバイスをいただいたので、少しずつですけれど、修理を進めたいと思っています。」


「おう。ぜひ頑張ってくれ。」


「それで…今日は何か面白い道具はありますか?」


「そうだなぁ…今日は修理済みの物ばかりなんだが…」


「これ…何ですか?お祭りの時には見なかったけれど…」


「あぁ、これは魔力吸収ができる魔道具だ。」


「え、魔力を吸収するんですか?」


「そうだよ。鬼獣退治に使うものなんだ。ヴェルネリアでは必要が無いだろうと思って持っていかなかったんだよ。」


「ヴェルネリアでは使わないんですか?」


「あぁ。ヴェルネリアは一般の住人でも攻撃魔力はそこそこ高いだろう?ヴェルネリアの騎士団なら下級兵士でも普通の鬼獣なら十分に対応できるだろうが、サフェリアは人間種が多いからな。ある程度鬼獣を弱らせないと危険だ。だから魔力持ちの鬼獣用に魔力を吸収する魔道具があるんだよ。」


「へぇ…そんな道具があるんですね。面白い…いくつか購入させていただいてもいいですか?」


「あぁ、もちろんだ。そうだな…これを購入するんだったらこっちも買っていった方がいいぞ。」


「これは?」


「魔力吸収を解除する魔道具だよ。」


「解除しちゃうんですか?」


「あぁ。」


「どうして…」


「そりゃ、うっかりしてる奴がいるからだよ。」


「うっかり?」


うっかりという言葉に、ラティもセヴェリもラヤーナの方を見ている。うっかり…自分も気を付けた方がいいのだろうか?


「私も…ちょっとうっかりのようなので…その魔道具も購入します。でもどうして解除の魔道具があるんですか?」


「これはさっきの魔力吸収を、うっかり間違えて別の対象に掛けちまう奴がいるんだよ。そういうことがあった時にすぐに解除できるようにするためだよ。」


「…あぁ…そういうことなんですね…」


「だから、魔力吸収の魔道具の数だけ魔力解除の魔道具は用意しておいた方がいい。吸収の方だけ使ったら、次はそっちだけ購入すればいいからな。」


「そうか…そうすれば、もしうっかりしていても大丈夫ですね。」


「…あぁそうだ…」


「他に何か面白いものってありますか?」


「そうだな…これなんか面白いぞ。」


「これですか?」


「あぁ。これは少し古いもんだから、俺が修理したものだよ。魔方陣を壊すことができる魔道具だよ。」


「え、魔方陣?」


「お嬢さんはあまり知らんかもしれないが、かなり昔、魔方陣はみんな使えたらしい。今はコリファーレの奴らしか使えない。まぁどうしてそうなったのかはわからないけどな。それでこの魔道具はかなり古いんだよ。時止めの箱の中に入っててな。それを修理してみたら、魔方陣を壊す道具だったっていうわけさ。」


「すごい…」


「コリファーレの奴らはサフェリアの物を購入しようとしないし、他に魔方陣を使う奴らもいないからなぁ…。修理はしたものの引き取り手は無いってことになるな。」


「でも…それ…私…欲しいです。」


「やっぱりな。」


「え?どうして、やっぱりって思ったんですか?」


「お嬢さん、昔の道具が好きだろう?使えなくても、どうなっているのか知りたいと考えるだろうと思ったんだよ。こんな使えない道具を欲しがる奴は珍しいんだよ。お嬢さんは使える、使えない、よりも、他にはない道具に興味を持つと思ったのさ。」


「…そうですね…この魔道具は普通に売ってないですからね…」


「そうだろう?」


「でもアマートさんは…こういう…珍しい道具を手元に置いておきたくないんですか?」


「俺は仕組みを知りたいのとそれを使えるようすることに興味があるんだよ。仕組みが分かったら後は欲しい奴が好きなようにすればいいのさ。」


「そうなんですね。」


「あぁ。そうだ!これもあるんだよ。同じ時止めの箱から出てきたんだ。」


「他にも?」


「あぁ。これは修理するのがかなり大変だった代物だ。」


「…これは…?」


「この道具は魅惑魔法の解除だな。」


「魅惑魔法の解除?」


「あぁ。今は魅惑魔法を使う奴はいないらしいが…こういう道具があるってことは昔はそんな魔法を使う奴がいたんだろうな。」


「………」


「これは魔力の残滓を綺麗にするだけじゃ使えるようにならなかったんだよ。魅惑を掛けたり解除したりする魔法や道具は古い文献にも全く載ってなかったから、魔力が通るようにするには大変だったんだ。まぁその分、この魔道具が使えるように試行錯誤でかなり楽しませてもらったけどな。」


「…確かに…試行錯誤しているときは大変なんですけど…楽しいんですよね。」


「そうだろ。お嬢さんなら俺の気持ちを分かってくれると思ったんだよ。」


「はい。試行錯誤は私も嫌いじゃないです。」


「そう、それでだ。こんな魅惑を解除するなんて道具あってもな…と思ったんだが、今日お嬢さんに会えて、この道具はあんたに渡せばいいと思ったんだ。お嬢さんは若い。万が一、そんな魔法がどこかで存在していて、お嬢さんが魔法にかかるのはよろしくないと思ったのさ。俺の話を理解してくれる貴重な仲間だからな。だからこれはあんたにやるよ。今日も道具を買ってくれたおまけだと思ってくれればいい。」


「え…いいんですか?」


「あぁ、この道具に興味があるだろう?」


「はい!あ…でも…」


「いいんだよ。持ってってくれ。その代わり、またちょくちょく魔道具を買いに来てくれ。」


「はい。ありがとうございます。サフェリアのファーベルの町に来るときは、アマートさんがいらっしゃる週の後半に来るようにします。」


「おお。そうしてくれ。俺の工房と研究所がある町はリチェルカだ。ここからもっと西にあるんだが、ちょっと辺鄙なところでね。あまり若い女性に来るように勧められるところじゃないんだよ。」


「私は気にしないので…そのうちアマートさんのいらっしゃるリチェルカにも行ってみようと思います。あ…でも今はまだ時間が無いので…もっと後になるかもしれませんが…」


「いつでもいいさ。来てくれるんなら嬉しいね。まぁ、俺はこの町にはたいてい、月の終わりの2週に来ることが多い。ファーベルに来てもらっても全然かまわんよ。」


「分かりました。ありがとうございます。」


「またいつでも来てくれ。」






①魔力吸収ができる魔道具 ⇒本来は鬼獣の魔力を吸収する道具、コリファーレの比較的魔力の弱いものが魔方陣を使って鬼獣の魔力を吸収して仕留める方法を模倣したもので、魔方陣が使えないサフェリアの人たちも使えるようにした道具


②魔力吸収を解除する魔道具 ⇒本来の目的は鬼獣に掛ける魔力吸収をうっかり間違えて違う対象にかけてしまったときに解除する道具


③魔方陣を壊すことができる魔道具 ⇒古い道具 時止めの魔法が掛かっていた箱から出てきた道具。道具自体はすでに使用済みの状態だったが、それをアマートが修理をした


④魅惑解除の魔道具 ⇒古い道具 時止めの魔法が掛かっていた箱から出てきた道具。魔力の残滓を綺麗にするだけでは動かず、アマートが相当苦労をしてその用途が分かり使える状態になった。ラヤーナに久しぶりに再会した時にたまたまこの道具を持ち込んでおり、ラヤーナと話をしているうちに、譲ることにしたらしい。

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