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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第3章 ラヤーナ争奪戦?
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3-41 聖水の力


「薬?」


「はい。」


「薬とは…完全修復の薬のことかの?」


「そのことも含めて、になります。」


「…これからコリファーレ王国と戦いになるようなことになると、薬を向こうに送ることは考える必要があるか……」


「もし戦いになった際、コリファーレの人たちに苦しんでほしいとは思っていないんですが…」


「…そうじゃの…今でも表向きはコリファーレ王国にも平等に薬を卸しているからの…敵国となる相手に薬を送るのは考える必要があるかもしれんな…あるいはそうなった際、コリファーレは薬を奪おうとするかもしれんのう…」


「…倉庫だな…これからの貴重な薬はその倉庫に保管し、ラヤーナが鍵を掛け、ギルド長が持って管理をしたほうがいいな。」


「そうじゃな…コリファーレに嬢の完全修復の薬が渡ってしまうのは危険じゃ。彼奴が自分たちの傀儡に使い、戦おうとする可能性もあるじゃろうし…」


「空間魔法で作った部屋を倉庫にするということと、鍵を作ることは明日森に戻ったらすぐに準備をします。それから空間魔法のレベル上げも早めに進めて、鍵に所有者を付けるように必ずします。セヴェリさんに手伝ってもらってサフェリアに行って香辛料を手に入れたりして森の家を往復することでレベル上げをしたいと思いますし、転送ボックスでしたっけ、あれはアウロレリアのアルナウトさんに直接送ってみたいと思っているので、できるだけ空間魔法を使うようにします。」


「そうかそうか…嬢もできることをすすめるとよい。」


「それと…先ほどギルド長がお話された薬のこと…コリファーレに渡すことについてなんですけれど…」


「なんじゃ?嬢の完全修復の薬は渡さん予定じゃ。この間出来たばかりの薬もまだコリファーレには卸しておらん。他国にもまだじゃ。コリファーレに通じている者が、他国に紛れておるかもしれんからの。その点は嬢、容赦を願いたい。嬢の望みは皆に平等にということだとはわかっておる。じゃが今は彼奴がどのように手を打ってくるのか見定めねばならんからの。」


「その点はギルド長にお任せしていますし、私の方で特に異論はありません。ギルド長も、セヴェリさんも、この世界のために一番良いように考えて動いてくださっていることは十分わかっているつもりです。」


「ラヤーナ、では薬のこと、というのは何のことだ…何か…他にも何かあるのか?昨晩話してくれたこと以外に、王たちから何か感じたのか?」


「実は…そうなんです。セヴェリさんはどうしてそう思ったんですか?」


「…ラヤーナを見ているからな…何か考えているのだろうと感じていた…」


「そうですか…」


「フォッ、フォッ、フォッ。さすがセヴェリじゃの。して、嬢、何かわかったのかの?」


「あの、薬なんですが…もしかしたら、治癒魔法を入れて強力にしたものは、コリファーレの人たち…というか、魔方陣を体に埋め込まれている人たちには、私の薬は効かないかもしれません。」


「嬢の薬が効かない?どういうことじゃ?これまでの薬はコリファーレにも卸しておる。少なくともコリファーレの兵士たちにも同じように効果が出ていることは聞いておるぞ。」


「俺もそう聞いている。特にコリファーレの騎士たちだけに効かない、ということはなかったはずだ。」


「はい…これまでの薬は効くと思うんですが、この間作ったものとギルド長に使っていただいた完全治療薬に関しては、効かないかもしれないんです。」


「なぜそう思った?」


「セヴェリさん…あの…私変なことを言っているかもしれないので、違っていたら教えてください。」


「何を気づいたんだ?」


「あの新しい薬なんですが、効果を高めるために治癒魔法を使った、ということはセヴェリさんにもギルド長にもお伝えしたと思います。まず薬についてなんですけれど、神水…薬を作る時に使っているものです。この神水ですが、王宮の中にある聖水と似たようなものだと思います。この王宮にある聖水…エルクトラドムの地の力ももちろん関係があると思いますが、それよりも森神人の力かもしれないと思っていまして…」


「森神人の?どういうことじゃ?」


「セヴェリさんはサフェリアの国の方ですよね?」


「…あぁ…」


「サフェリアの王宮の中にも、聖水が出るところってあると思うんですが…」


「あるな…」


「王宮の中にある、聖水が出るところって王族の誰かが何かしていませんか?」


「何かとは…どういうことだ?」


「えっと…何というか…何か祈ってるとか…何か祭りをしているとか…儀式をしているとか…毎日なのか時々なのかはわかりませんが、そういうことがあるんじゃないかなって…」


「…どうしてそう思ったんだ…」


「…やっぱりそうなんですね…」


「…サフェリアは…王女が週に1度、聖水に祈りをささげている。」


「…ヴェルネリアは王子じゃよ…同じじゃ…週に1度儀式をしておるのぉ…まぁ祈りのようなもんじゃよ…特に儀式や祈りを担当している王子や王女に負担がある、ということは無いようじゃが…」


「そうですか…」


「ラヤーナ、どうしてそう思ったんだ?誰から話を聞いたのか?」


「エルウィンからでも聞いたのかの?」


「いえ、そう言うことではないんです。聖水が神水に近いもの…というか、力がなくなりかけている神水ではないかと思いました。」


「力がなくなりかけている…」


「はい。聖水はおそらくもう少ししたらただの水になると思います。今はまだ辛うじて少し聖なる力を残しているようですけれど…」


「神水とは、嬢が薬を作る時に使っているあの水かの?」


「はい。私のスキルで水を神水にします。」


「…聖水から作る薬の力が弱くなっているのはその聖水自体のせいなのか?」


「もちろん、治癒魔法の力自体が弱くなってきているということもありますが、聖水にその治癒の魔力を留めておく力がなくなってきているのだと思います。」


「…聖水の力がなくなってきているのか…」


「はい。私の新しいスキル、地の恵みが少しずついろいろと使えるようになってきました。そして、このエルクトラドムの地に関わることに関していろいろなことが見えてきたんです。その中で聖水が力を失いつつあること、神水と聖水は性質が同じだということが分かったんです。」


「嬢の作る神水と聖水が同じ?」


「はい。ただし、聖水はとても力が薄く弱い状態です。今まだ辛うじて聖水の力が残っているのは、王族が何らかの形で力を込めているからだと思いました。」


「王族が関係あるのかの?」


「はい。彼らは…おそらく先代以前の森神人の子孫が混ざっているのだと思います。」


「森神人の子孫か…」


「ローラ様に教えていただいたのですが…森神人は女神様の代替わりがおこると変わるということでした。また薬師として薬を作れるのは森神人と、森神人の子孫、いとし子だけだということでした。代替わりがおこるとその子孫はいとし子としての力はその代限り、ということで継承はされないそうなんです。そしてそのいとし子もスキルの力にばらつきがあるそうです。非常に強い力を持っていたいとし子は、王族と婚姻していた、ということも伺いました。そして神水を作る力を何らかの形で王族…王宮に残していった、それが聖水として使われている泉なのではないかと思いました。」


「先代の森神人の詳しいことまではわからんが…王族は森神人を非常に大切にしてきたと聞いておる。当然いとし子たちも害されないように必要に応じて王国が見守ってきたそうじゃ。」


「そうですか。」


「今…森の家と、精霊たちがいる更に森の奥にある精霊の森ですが、私のスキルで作った神水を作れる石『森神人の石』を設置しています。今はその石を強力にしたので、しばらくはそのままで使えます。数年から数か月に一度、石に再度スキルの力を込めれば、また神水が作れるようになります。」


「ほぉ~そのようなスキルがあるのかのぉ…森神人とは不思議な存在じゃの…」


「それで…その王宮にはそのような石が残っているのではないかと思います。もしかしたら、先代の森神人が強い力を込めて作り、強い力を持ったいとし子の子孫、王族のどなたかにその石と相性の良い方がいらっしゃると、その方の魔力の様な物を石に捧げると石に神水を作れるようになるための力が込められていくようになっているのではないかと思いました。」


「…そうじゃったのか…王族には生まれると必ず行う儀式があっての…聖水が作られる王宮の中にある泉で儀式が行われる。生まれた王族の赤子をその泉に触れさせる、というものじゃが、聖水の泉の儀式を担当する王族がそれで決まるそうじゃ。おそらく泉が何らかの反応を示すのじゃろう…」


「…憶測でしかないんですが…1000年前の大きな戦いの際、森神人が力を失う直前にこれからのことを危惧されてそのようなことをなさった可能性もあるかもしれないと考えました。」


「…そうか…そうじゃったのか…」


「ラヤーナ、その聖水の件とコリファーレの者に薬が効かないということとはどんな関係があるんだ?」


「そう、そうですよね。すみません、ちょっと話がそれてしまって。その私の新しい薬なんですが、私が作った神水を薬に使っていることはお伝えしましたよね。」


「あぁ。」


「新しい薬は、そこに治癒魔法、時間魔法などを掛けていきます。私の作った神水は治癒魔法など、私の魔力を非常によく内部にとどめておくことができるので、薬の効果を飛躍的に上げることができたのだと思います。」


「なるほどのぉ…」


「そして、この神水なんですが、この地の恵み…エルクトラドムの地の力も大きくかかわっています。神水は、このエルクトラドムの世界の恵みでもあるんです。」


「この世界の恵み…神水や聖水が…ということか…」


「はい。ですから、この世界の生き物であれば基本的に薬が効くことになります。鬼獣に効かないのは、鬼獣が持っている瘴気の様な物が地の恵みを捻じ曲げてしまい、鬼獣には治療薬とならず全く効果がない物になってしまうからです。」


「ほぅ…そんな効果があるのか…」


「はい。そしてコリファーレの人たちに効かないかもしれないと言ったのは、この治癒魔法を使った薬についてになります。」


「治癒魔法を使わない薬であれば効果はあるということか。」


「そうなります。神水を基に作った薬に治癒魔法を使うと、神水が含んでいる地の恵みを最大限に引き出し、エルクトラドムという世界の地の力の恩恵を受ける形になります。薬自体の効果と、治癒魔法の効果、地の恵みの恩恵が合わさることで、薬の力が大きく引き出されます。またそこに時間魔法を入れることで、修復の力も大きなものになり、古い傷、時間がたってしまった傷にも時間魔法と地の恵みとの相乗効果で効くようになっています。」


「地の恵みか…知れば知るほどすごい力じゃのぉ…その力の恩恵を儂らは知らずに受けておったのじゃな…」


「はい。そして…コリファーレの方たちですが、普通の人たち…魔方陣が埋め込まれていない人たちにはこの地の恵みの恩恵が十分届くと思います。」


「一般の民には効く、ということなのか…」


「…コリファーレに一般の人が残っていれば…です…」


「嬢…それは…嬢は気づいたのじゃな…」


「はい…コリファーレの多くの人たちは…おそらく大なり小なり、魔力を搾取される魔方陣が体にあるのではないかと思います。生まれてすぐの儀式等で多くのコリファーレの人たちはあの魔方陣が埋め込まれてしまっているのではないでしょうか。」


「…そうか…そうじゃったか…」


「あの『めー』さんの魔力はおそらくコリファーレの人たちから奪ったものだと思います。あの魔方陣を埋め込まれてしまうと、地の恵みの力は届きません。この力はエルクトラドムに根付く人たちの者であって、魔方陣を埋め込まれてしまうと、地に立っていることはできても、地の恵みの恩恵が非常に薄くなってしまいます。魔方陣と反発してしまう力の様な物だと思います。」


「反発してしまうのなら、薬は効かないのではないのか?」


「これまでの薬は緩やかな地の恵みの力を含んでいるものであったため、完全に反発をするほどではなかったのだと思います。ですが、おそらく…薬の効きに関しては、他国の人達よりも効きは悪かったと思います。とはいっても、聖水で作った薬よりは薬の効果はあったと思います。ですからコリファーレの人たちにとってみても、これまでの薬は『十分効く』という評価だったのでしょう。」


「では、実際には薬の効きが悪かったとしても、これまでと比べて使用していればやはり効く薬という認識だったということなんだな。」


「はい。そして、治癒魔法を入れたことで地の恵みの力が強く作用している新しい薬は、この魔方陣があるものを完全に、別の地…異界のものという形で作用してしまうため、もしかすると効かない、ではなく、毒にも近い薬になってしまうかもしれません。」


「毒か…逆にそれこそ新しい薬をコリファーレに回すことはできんな…儂とてそこまで非常にはなれんよ…」


「はい。私もその方が良いと思います。」


「そうだな…コリファーレの国民を巻き込むことは俺も賛成できない。」


「えぇ。そう思います。そして…これもあくまでも憶測でしかないんですが…コリファーレの王宮にある聖水の泉…まだあればですけれど…そこから出る聖水にはもう力はないと思います。コリファーレの王があのような強い魔方陣を埋め込まれている状態で、聖水の泉に力を保てるとは思えません。」


「そうか…嬢…コリファーレは大きな立て直しが必要なる…そういう状態なのじゃな。」


「はい…王族はおそらく皆傀儡になっている可能性が高いです。あ、そう言えばメリルさんが王妃様はとても美しい方だと言っていましたが…」


「王妃か…あれは…」


「セヴェリさんはご存じなんですか?」


「…見たことはある…だがあれは…見た目はそうなんだろうが…何か…引っかかってな…」


「そうじゃの…なんじゃろうな…」


「…あの…お二人の手を貸していただけますか?」


「手か?ほれ。」


「あぁ…かまわないが…」


ラヤーナは二人の手を軽く握ると言った。


「お二人とも、コリファーレの王妃様にお会いしたことがあるんですよね。私、ちょっと気になることがあって…もう一度王妃様のお顔などを思い浮かべていただけませんか?」


「なんじゃ?嬢はまた違うスキルを持っておるのか?」


「スキルと言いますか…探索魔法と地の恵みといろいろと組み合わせると使えそうな気がして…」


「また儂らで実験台なのか…よいよい、好きにせい。」


「はい、すみませんが…でももしかしたら…なのでよろしくお願いします。」


二人に王妃を思い浮かべてもらう。ラヤーナは今思いついたスキルと魔法の組み合わせで、二人に負担がかからないようにゆっくりと魔力を流しながらスキルを使っていく。

二人は今王妃の顔などを思い浮かべているはずだ。その残像をはっきりと見ることはできないが、地の恵みの力をたどれば何か性質が分かるかもしれないと思った。


「…っあ!!!」


「嬢、どうした?」


「ラヤーナ、大丈夫か?」


二人は慌てて手を離すと心配そうにラヤーナを見つめた。


「あ…あ…あの…王妃はおそらく…『め』…です…」


「彼奴じゃと!」


「そして、王を通して見ていた人もこの方です。」


「なに!」


「…この人…エルクトラドムの人ではないです…この人からは全く地の恵みが感じ取れません…」


「ラヤーナ…それは…本来は人ではないから、ということなのか?」


「…いえ…そういうことではないです…ローラ様には逆にとても強い地の恵みがあると思います。私にも精霊たちにも、もちろんお二人にも…でもこの人にはエルクトラドムに関わる地が何もないんです…。」


「何もない…全く関係が無いということなんじゃな。」


「はい。」


「ではどうしてこの地に降り立てる?コリファーレの地には何かあるのか?」


「…コリファーレの地……………もしかしたら…いや…じゃが…」


「ギルド長、何かあるのか?」


「儂の記憶が正しければ…それはディーデの杖…魔術師ディーデリックとの関わりかもしれん…」


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