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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第3章 ラヤーナ争奪戦?
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3-40 魔法レベル上げ


ラヤーナは朝食をいただいた後、店に出てどのような薬が良く売られているのか、また他に欲しい薬がないかをお客に聞いてみることにした。


「あら、今日はラヤーナさんがいらっしゃるのね。」


「こんにちは。いつもお買い上げありがとうございます。」


「いいのよ。いつも助かっているもの。うちの人たちは人付き合いが多すぎて、すぐお腹を壊すのよ。全く…困ったもんだわ。食べ過ぎなければいいのにねぇ。このお店のお腹の薬には本当に助かっているわ。」


「そうですか、ありがとうございます。」


「この間なんか飲みすぎちゃってね。翌日頭が痛いって言いながら仕事してたわよ。本当にもう…」


「飲みすぎ…お酒ですよね…」


「そうよ。」


「お酒は皆さん酔わないんじゃないんですか?」


「あぁ、それはこの地域のお酒だったらなのよ。ほら、お祭りがあって、外国からのお客さんからその国お酒をかなりたくさんもらったのよ。それをこの間みんなで飲みまくってねぇ…全くもう、しょうがないったらありゃしないよ。」


「お酒は…他国のお酒だと酔うんですか?」


「そうだねぇ…その国で作ったものはあたしらの身体にはなじみがあるからね。酔ったりはしないんだよ。でも他所のもんは、野菜でも穀物でも少し違うからね。普通の量ならそういうことはないんだよ、でもうちの人達ったらもらった酒を一樽全部空けちまったんだよ。そりゃ酔うに決まってるだろうさ。」


「食べ物や飲み物にはそんなことがあるんですね…今までお酒で酔うことはないと思っていたので、酔った時用の薬は考えたことなかったんですが、そういう時の薬があったらいいですよね。」


「そりゃそうだね。ラヤーナさん、作ってくれるのかい?」


「すぐには無理かもしれませんが、考えてみますね。」


「そりゃ助かるよ。うちは商売をしているから、時期によってはあちこちから頂き物があるんだよ。酒もかなり届くんだが、いつもお祭りの後はこんな状態だったんだよ。あればありがたいね。」


「分かりました。少し時間がかかるかもしれませんが、いろいろと作ってみますね。」


これまでこの世界には二日酔いのような、お酒を飲みすぎた後に体調を崩すような症状は無いと思っていた。自国の物で作ってあるお酒ならば酔わないが、他国の物で作ると酔う…なるほど、そう言えば、他国の香辛料は地の恵みであっても、国よって少し異なるような気が確かにする。このエルクトラドムの世界の地の恵みであることは間違いないが、香りが違うというのか風味が違うというのか…。

薬を作っていくのに、香辛料も含め、もっといろいろな草や花、野菜のことを知る必要がありそうだ。


この日は薬茶の味を変えてほしい相談があったり、薬茶の効能に目の疲れにピンポイントで効くようなものの相談があったり、久しぶりに薬師として使っている人たちの要望を聞くことができた。やはり薬を考えたり、新しいものの構想を考えたりすることは楽しい。店の中で薬師として仕事をしているとホッとする。


今日はフランカが子どもたちを連れて出かけていたため、お昼は食堂でセヴェリ達と一緒に取り、騎士団の人たちから店の様子や子供たちの様子を聞いてみることができた。


「皆さん、いつもお店の方をお手伝いしていただいてありがとうございます。」


「いやいや、こういう仕事も面白いですね。それに、薬も騎士団で使われていたのは傷を治すもので、リラックスしたり、身体の中がすっきりするようなお茶はこのお店で初めて飲ませてもらいました。あれ、結構いいですよね。」


「そうですか、そう言っていただけると嬉しいです。薬茶は薬と言っても、健康を維持したり、少しずつ体調をよくしていったりするためのお茶ですので、薬のような強い効果や即効性はあまりないんです。でも飲み物ですから、毎日少しずつ飲むと良いんですよ。いろいろな風味があるのでお好きな味を楽しんでいただければいいなと思っています。」


「そう、そうなんですよ!俺は絶対マーゴがいいですね。あのマーゴ風味のお茶は毎日飲んでます。」


「そうですか、良かったです。ここでお手伝いいただいている間は、お茶はお好きなものを飲んでくださいね。」


「はい、遠慮なくいただいています。そしてお客さんに説明するときも自分で飲んでいるので伝えやすいんですよね。」


「はい。騎士団の皆さんが率直に飲み心地などを伝えてくださっているので、最近は男性の方もお茶をよく飲んでいるって聞きました。」


「仕事場に行くときに自分用のお茶として持っていく方もいるようですよ。」


「そうなんですね。」


食事を取りながら商品のことやお客からの要望なども聞いていった。今はすでに店で販売したりギルドに卸している、大量に消費されている塗り薬や薬茶、そして新しくできた完全修復の薬を作ることでしばらくは手いっぱいになってしまいそうだが、少し時間ができたら今日要望として聞いた新しい薬も作ってみたい。


「ラヤーナさん、少しお伝えしておいた方が良いことがあります。団長、いいですよね。」


「あぁ。セレスタン、直接ラヤーナに説明してくれ。」


「あの、何かまずいことでも?」


「お店の方は問題ないです。フランカさんや子供たちは我々が守っていますし、薬そのものの販売は順調です。」


「あ、そうですよね。セレスタンさんはユリアに、ジェラールさんはレスリーに、フランカさんは皆さんでついてくださっているんですよね。」


「そうですね。あとは手の空いている者は、町に買い物に行くということで偵察や店の周辺なども観察しています。」


「いろいろとありがとうございます。」


「いえいえ、これも我々の仕事ですし、今回は重要な任務ですよ。今ラヤーナさんの薬がなくなったら、また前のように治らないケガ人が増えていきます。本当にラヤーナさんの薬には感謝しているんです。」


「私の薬が少しでも皆さんのお役に立っているのであればそれはとても嬉しいです。」


「それでですね…どうやらこの町にもコリファーレのものが潜んでいるようです。」


「え…それはどういうことでしょうか…」


「商人を装っていますが、あの身のこなしはおそらく騎士でしょう。おそらくコリファーレの騎士が商人になってこの町の様子を偵察しているようです。」


「…コリファーレが…」


「昨日コリファーレ王がこの町に来てラヤーナさんに国に来るように迫ったと団長から聞いています。」


「はい…」


「万が一にもこの店の家族が襲われることは無いように万全を期していますが、ラヤーナさんもお気を付けください。ああ、ご主人のヘリットさんにもこっそり人を付けていますのでご安心ください。」


「はい…わかりました。ヘリットさんの家族を皆さんで守っていただいてありがとうございます。私にはセヴェリさんが一緒に居てくださるので大丈夫だと思いますが、私自身も気を付けるようにします。」


「そうですか。それから念のためですが、ヘリットさん一家の皆さんにはこのような小さな魔道具を身に付けてもらっています。首輪になっていますので、服の下に隠してしまえば邪魔にならないようなものです。」


「これは…?」


「コリファーレの魔法を専用に弾く魔道具です。」


「…見せていただいてもいいですか?」


「はい、どうぞこちらです。」


ラヤーナは首輪-ネックレスの様な物-を手に取って見てみる。

そこからは王や護衛の魔方陣から感じた違和感を弾くような魔法が掛けられているのが分かった。


「…この魔道具はどうやって作られたのでしょうか?」


「これはサフェリアで研究している物です。まだ市場には出ていません。」


「そうなんですね…」


「ラヤーナさんには、この魔道具にどのような仕掛けが施されているのかわかるんですね。」


「…いえ…魔道具の仕組みはわかりませんが…用途はわかります。」


「そうですか。これを1つラヤーナさんにお渡しします。昨日サフェリアから届いたばかりの物です。分解してみてももちろん構いません。自由に使ってください。」


「ありがとうございます。あの…本当に分解してもいいんですか?」


「えぇ。もちろん構いません。ラヤーナさんは魔道具にも興味がおありの様ですから。これだけの薬を作れる方ですので、もしかしたら魔道具に関しても、いろいろと新しいアイデアが出てくるかもしれないと思いまして…。もし、何かこの魔道具をもっと効果的に使える方法があれば、是非お知らせください。」


「分かりました。大事に使わせていただきますね。」


ラヤーナはその小さな魔道具を受け取り、上着のポケットに入れた。ラヤーナの首には、ヴァルテリの番のネックレスがある。重ね付けしてヘッドがぶつかってしまうのが嫌だったので、あとで別のアクセサリーにできないか考えてみようと思った。


午後もお店に出てお客から要望などを聞き、店が終わるとヘリット一家と夕食を取った後、店の自分の部屋に戻った。今晩はもう一度ギルド長と相談をする。地の恵みのスキルが使えるようになってから、薬についていくつか気づいたことがある。そして、あの魔方陣を昨日感じた時の違和感を考えるとおそらくラヤーナの予想していることは間違ってはいないと感じる。


「ラヤーナ、もうすぐギルド長が来るそうだ。」


「はい。私も大丈夫です。今開けますね。」


セヴェリはラヤーナの部屋に来るときは、必ずドアの外から声をかけ、ラヤーナが部屋の扉を開けない限り自分からは入ってこない。寝るときは同じ部屋と言っても、着替えなどもあるので気を使ってくれているのだろう。見た目は身体も顔もなかなかに怖い様相なのだが、その様子に反して…と言ったら申し訳ないが、非常に紳士でラヤーナのことを大切に扱ってくれる。


「またお茶を用意しますね。今日は夕方お菓子を作っておいたので、お茶菓子もあります。」


「そうか…ギルド長はあれで意外と甘いものが好きだからな。」


「セヴェリさんもお好きですよね?」


「……」


「ダメですよ、黙っていてもわかります。デザート食べているとき、嬉しそうですよ。」


「……………///…」


「さぁ、ギルド長もいらっしゃると思うので、お茶の準備をしますね。」


ほんの少しだけ顔を赤くしたセヴェリと共にお茶の用意をして客間へ向かった。


「ギルド長!もういらしていたんですね。すみません、お待たせして。」


「いや、儂は今ちょうど来たところじゃよ。嬢が部屋に来るときに合うように、セヴェリが合図を送ってくれたからのう。」


「あ、そうなんですね。セヴェリさん、ありがとうございます。ギルド長をお待たせしないで済みました。」


「いやのぉ…。今朝、嬢に身体を治してもらってからすこぶる調子が良くての。魔法の威力もだいぶ戻ってきていろいろと快適じゃよ。」


「それは良かったです。」


ギルド長とセヴェリは、昨晩同様魔法を掛けていく。今日も部屋には特に違和感はなかったものの、念のためということでしっかりと強い魔法を掛けた。ラヤーナはお茶菓子をテーブルに置き、ギルド長、セヴェリ、ラヤーナそれぞれの前にお茶を置いてから椅子に座った。


「して、嬢。まずは国王との話を儂からしよう。これからの対応についてじゃよ。」


「はい。」


「明日からこのリエスの町にはヴェルネリアの第三騎士団が常駐されることになった。表向きはこの町から山に向かったところにある辺境地帯の安全確認とそこにある村のサポート体制を整えるための拠点をこのリエスに置く、ということになっておる。じゃが、実質は外から嬢を攫おうとするもの、つまりコリファーレじゃな、そこへの対策じゃ。アウロレリアからはギルド職員として魔術師を派遣するそうじゃ。アルナウト殿は自分が来たかった様じゃが、国の商業を仕切っておる者がこちらに常駐するわけにはいかんじゃろ。まぁ、頻繁に見に来るとは言っておったがの。」


「ギルド長、国王との話し合いにはアルナウトさんも出席されていたんですか?」


「そうじゃよ。まぁ正確には、コリファーレ王以外のそれぞれの王国の代表者が集まっての相談じゃよ。どの国も嬢の薬が特別な物じゃとわかっておるからの。サファリアはこのままセヴェリの第5騎士団を引き続き任務に当たらせ、さらに情報収集役の者を数名よこすそうじゃ。彼らもここのギルド所属という形になるの。それに加えて、ミルミオーネからは優秀なドワーフを数名派遣するそうじゃよ。戦闘になれば様々な道具が必要になるからの。」


「戦闘…」


「ラヤーナ、できるだけ平和的に解決できればと思ってはいる。しかし相手がな…」


「そうなんじゃよ…。どうやらコリファーレは彼奴に乗っ取られているようだしの…他の王国は手を組みこの難局に対応しようとしているところじゃ。ヴェルネリアも含め、他国も、コリファーレが怪しいと思っておる。コリファーレは他国に対してもいろいろとおかしな動きがあるからのぉ。」


「…そうなんですね…私はまだ知らないことばかりで…」


「無理に知る必要はない。まずはできることを進めていくんだ。」


「そうじゃよ。国同士のことは国王たちに任せておけばよいんじゃ。嬢は、薬を作ること、自分の身を守る術を身に付けること、魔法のレベルを上げ闇と光の魔法を使えるようにすることが必要じゃろう。」


「はい。明日、森に戻ったらすぐに薬を作ります。ギルド長に使っていただいたあの完全修復の薬は、作成するために大量の魔力を消費します。それを作り続ければ確実に治癒魔法と時間魔法はレベル上げに十分な魔法を使えます。あと残りは空間魔法を上げることなんですが…カバンも薬入れも、森の家に大量に作ってありますし、実は森の家には空間魔法で作った隠し部屋もあります。」


「ほぅ、隠し部屋と?」


「はい。何かに使うため、というわけではなく、魔力レベル上げのために作っただけなんですけれど…」


「ふ~む。そこに鍵は掛けておるのかの?」


「鍵…ですか?」


「そうじゃ。鍵じゃよ。空間魔法で作った空間は、結界の中であろうと外であろうと、関係なくたどり着ける空間じゃ。そこに鍵をかけると、鍵を持った者だけが入ることができる部屋になる。すでに嬢の空間魔法はレベルが7になっておるのであれば、鍵を作ることはできるはずじゃ。そしてレベルが8になると、その鍵の所有者を限定することもできる。」


「鍵の所有者を限定することができる…ということは、その部屋に入れる人は鍵の所有者であればだれでも入れるということなんでしょうか。」


「レベルが8になってからカギへ掛けることのできる所有魔法じゃが、魔法を掛けた者が所有者として指定した者以外は使えんよ。鍵の所有者と一緒に入ろうとしても弾かれる。誰かが鍵を盗んだとしても入れん。レベル8で掛けることができる鍵の魔法は強力じゃ。」


「ではまず私の作った部屋に鍵を付けてみます。まだ所有者限定はできないみたいですから、鍵を作ったらギルド長とセヴェリさんにお渡しします。これから大量に必要になる薬も、一部そこに入れておくようにします。必要になったらお二人がそこから取り出して使用していただいてももちろん構いません。」


「なるほど…薬の倉庫じゃの」


「空間魔法のレベルが8になれば、その鍵に所有の魔法を掛けるようにします。」


「それがいいだろう。だが、鍵を作る程度では魔法のレベルを8に上げるのは難しいぞ。」


「そうですよね…もっと大量に魔力を使う空間魔法って…」


「転移魔法じゃな。」


「転移魔法は…、でもそれほど魔力を使っていないと思います。」


「嬢、そりゃ距離が近いからじゃろ。ここから森程度の距離では大した魔力は必要とせんよ。」


「あ…そうか…距離ですね。」


「そうじゃよ、それにセヴェリの転移魔法を使うこともあるじゃろ。」


「そうでした…。薬を作る時に魔力を使っちゃうと転移する気力というか魔力があまり残っていなくて、お店に戻るのが大変で、セヴェリさんに連れてきてもらったこともありました。」


「転移魔法は距離が延びれば使う消費魔力は大きくなるからの。セヴェリの国のサフェリアにでも行って戻ってくればかなり消費するじゃろう。」


「セヴェリさんの国…サフェリアですよね。行きたいですけれど…でも、まだヴェルネリアから出るのは危険かもしれないです。ローラ様に相談してみます。」


「そうじゃの。そうしてみるとよいよ。じゃがおそらく、彼奴は嬢のことを嗅ぎつけておるぞ。何処にいてもおそらくは同じじゃろ。」


「もう…あの『めー』さんはここにいることはわかっているんですか?」


「コリファーレ王が来たのがその証拠じゃろうて…」


「あぁ、俺もそう感じる。あの王が薬だけが理由でわざわざこのギルドに来るとは思えない。おそらく薬を作っているのが誰なのか、そしてなぜ薬が作れるのか…その理由を薄々感じていてラヤーナを確認しに来たのだとしたら、向こうが仕掛けてくるまであまり悠長なことは言っていられないな。」


「そんな…せめて闇と光の魔法が少しで使えるようになっておかないと…まだ…気持ちの準備だって…」


「ラヤーナ、この間森で襲われかけただろう。いつあのように仕掛けてくるのかわからない。明日森に戻ったらすぐに女神に相談したほうがいい。」


「分かりました。」


「儂の方でもできる準備はすぐにしよう。セヴェリも頼むぞ。」


「あぁ。もちろんだ。」


「あ、そうだ!ギルド長、セヴェリさん…薬のことをもう少し相談したいんです。」


まだ相談は続きそうだ。

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