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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第3章 ラヤーナ争奪戦?
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3-39 竜騎士の翼


「さぁ、ギルド長。これから薬を塗ってみますね。はい。上着は脱いでくださいね~。」


ラヤーナに上着を全部脱ぐように指示を受け、ギルド長はおとなしく従っていた。


「薬を塗る前に、今の状態(人化している)でも傷の確認をさせてくださいね。」


ラヤーナは森の家から追加で多くの量のいろいろな薬も持ってきていた。傷の状態や種類によっては、薬の組み合わせも必要になるかもしれないと思ったからだ。ラヤーナは細かい傷を見つけると、この間からギルドに卸し始めたばかりの新しい薬-古い傷の修復-を塗っていく。ギルド長の身体には細かい傷がたくさんあり、竜騎士である体にこれだけの修復されていない傷が残る、ということはその傷自体が非常に深かったということなのだろう。ギルド長に薬を塗る前、竜騎士の身体について、少し説明を受けたが、元来竜騎士の身体は非常に頑丈であり、大概の傷は竜族の持つ自然治癒力で治ってしまうらしい。そのため傷跡として残ってしまうものは相当な深い傷であるということだ。そして、傷跡として残ってしまった体には痛みも残り、その身体の能力も下がってしまうということだった。その残っている傷跡がこれだけたくさんあるということは、ギルド長はどのくらいの痛みを我慢してきたのだろう。これらの傷は相当古いものが多い。きっと1000年前の戦いのときにヴァルテリ同様に身を挺してローラ様を守ろうとしてくれたのではないだろうか…。


ラヤーナはそれらの傷一つずつに丁寧に薬を塗っていった。小さい傷は古いものであっても薬を塗り始めるとゆっくりと傷が治っていき、ギルド長の身体の状態が良くなってくことが分かる。


「おお~~~~なんと…」


「どうですか、ギルド長?」


「…これは…嬢…儂は嬢にどれほどの感謝をささげたらよいのかの…」


「え、ギルド長、感謝なんて…」


「いやいや、嬢。嬢は医療の心得もあるのじゃろう。身体の状態をしっかりと確認し、薬を使っておる。私の身体の傷は古いものじゃて自分の身体能力も傷があっても十分じゃと思っておったが…傷が治るとこれほど身体が回復するとは思っておらんかったわ。」


「それほど回復された実感があるんですか?」


「あぁ、まったく凄い薬じゃの。」


「そうですか…ですが…背中にうっすらと傷がありますが、こちらはこの薬では効きませんでした。」


「まぁのぉ…」


「これ…本来翼があったところなんでしょうか…そこに傷がある、ということですよね。」


「そういうことじゃの。儂には自分の背中は見えんでのぉ。」


「…ギルド長…背中を触診して思ったんですが…おそらく人化している状態でもこれから試す新しい薬を塗れると思います。」


「そうなのか?」


「はい。先ほどの古い傷跡を薬で塗っているときに思ったんですが、ギルド長が竜化をされるとかなり大きいのではないのでしょうか?」


「…なぜそうおもったんじゃ?」


「薬の吸収が…薬が傷にするすると吸い込まれるんです。おそらく竜の姿での傷を修復するために、その傷の大きさ分の薬を吸収していたんだと思います。」


「ほぉ~~~」


「ですから、人化していても、竜体を取られていても、使う薬の量は変わりません。おそらく、人化しているときにできた傷跡は薬の量は少なく、変化して身体が大きいときに傷ができて残っているものはその大きさにあった薬量が必要になると感じます。ギルド長の身体にあったいくつかの傷は、薬の量が少ないところがありました。ですが、ほとんどの傷は非常に多くの薬量が吸収されています。それは、竜体になられたときの戦いの傷が多く残っていた、ということだと思います。」


「そうか…嬢は…身体を見るだけでそれだけのことが分かるということかの…薬師とは凄いものじゃな…」


「いえいえ、私には戦闘能力はありません。自分を守るためであったとしても、攻撃魔法を放つのは怖いです。鬼獣であればもう平気になりましたが、やはり人に向けては怖くてできません。この町やこの国、この世界を、身を挺して守っていただいている皆さんがいるからこそ、私たちは過ごすことができます。」


『おじいちゃんはすごいのね~~~・竜体~~~・見たいのね~~~~』


「ギルド長、そのお背中にある傷…作ったばかりの薬ですが、それで治療を試みたいと思います。」


「そうか…」


「それでなんですが…多分、今の薬量では足りません。先ほどの薬の吸収量を考えると、もっと薬が必要だと思います。それで森の家で急いで薬を作ってきます。」


「それならまた次回でも…」


「いえ、何となく…これからのことも含めてなんですが、今薬を作ってしまってギルド長のお身体を完全に治した方が良いと思います。薬を作るための元の薬はあります。ですので少しお待ちいただけますか?」


「分かった、嬢。薬ができるまで待って居よう。」


「はい。おそらく2~3ミルでできますので、ちょっとお待ちくださいね。」


今いる場所は森の家がすぐ見えるところではあるが、念のため森の家の入口までついてきてもらい家に入って薬を作り始めた。


「…のぅセヴェリ…私の翼が戻るとは…考えてみたこともなかったよ…」


「……」


「また…あの頃のように…この空を…森の上を…飛べるようになるのかの…」


「……」


「嬢はすごいのぉ…」


「あぁ…そうだな…」


ギルド長はまったりと空を見上げている。

セヴェリは何も言葉にせず、ギルド長の想いを感じ取っているかのようだ。


「お待たせしました~」


「おお、早いのぉ~」


「はい!目いっぱい魔法を使ってきました。」


「…嬢…それでは嬢が…」


「ギルド長、魔法もたくさん使わないと、レベル上げができないんです。転移して町に戻る魔力は残っていないので、あとで一緒に送ってくださいね!」


「分かったよ。」


「はい。それではもう一度上着を脱いでくださいね。」


ラヤーナは薬を大きな箱にいっぱいにして作ってきた。大きさで言うと日本の通販から届く大きめの段ボールのような大きさだ。1キュプの入れ物の一体何個分になるのだろう…数万個分にはなるのでないだろうか。


ラヤーナは薬を手に取り、ギルド長に話しかける。


「この出来たばかりの薬を塗っていきます。塗った時の感想を教えてください。冷たいとか、痺れるとか、かゆみを感じる等、何かあればお願いします。一応薬は鑑定済みですので、副作用はないと思いますが、感じ方は人それぞれです。できるだけ不快のない物を作りたいと思っています。」


「おお、そうか。何か気づいたことがあれば嬢に伝えよう。」


「はい。それでは塗っていきますね。」


ラヤーナは薬を背中の翼の位置、人の身体では肩甲骨のあたりからその下にかけて薄っすらと傷跡がある位置に薬を塗っていく。だが思っていた通り、薬は塗るとすぐにギルド長の身体に吸い込まれていく。うすく塗っていては全く足りない。ラヤーナは薬を手ですくい、手のひらに山盛りにしてギルド長の背中に乗せるようにしていった。するとその薬の山盛りがあっという間に傷を通して吸い込まれて行っているのが分かった。


『薬ね~・するするギルド長の身体に入っているのね~』


「すごいな…薬が本当に吸い込まれていく…俺の時でさえここまでではなかったぞ…」


「おそらく、ギルド長の傷は相当深くひどいものだったのだと思います。」


ラヤーナは手を止め、少し考えた後ギルド長にお願いをした。


「ギルド長、すみません、ここにうつぶせになっていただけますか?薬の吸い込み量が多くて速いので、背中に薬を山盛りにして塗り込んでいきます。」


「ふむ…うつ伏せかの…ふーむ…じゃが…警戒はしておかんと…」


「ギルド長、俺がこの辺りは警戒しておく。アルバスも側にいる。何かあればすぐに対応する。今は薬を塗って身体の状態を元に戻すことを優先したほうがいい。薬の効果もラヤーナは早く確かめたいだろう。」


『ギルド長~・頑張るのね~・ラティも応援するのね~・今身体を治しておいた方がいいとラティも思うのね~・きっと今治さないとだめなのね~』


「うーむ…精霊がそう言うのであれば…今はそうしておこうかの…」


ギルド長はラヤーナに言われたように、身体を地面の草の上にうつ伏せにした。

ラヤーナは薬の大きな箱をギルド長の身体のすぐ横に置き、薬を両手で掬いながら背中に薬をのせて塗っていく。

何か掬うものを持ってきて、薬をのせていく方が早いかとも思ったのだが、この薬はまだ試作段階で、ラヤーナの手で感触を確かめたい。そう思い、ひたすら軟膏状の薬を両手で掬ってはギルド長の背中にのせて刷り込んでいった。

少しずつ薬の吸収速度が遅くなっていき、傷が治ってきているのがラヤーナにわかった。ギルド長はもっとそう思っていたのではないだろうか。およそ1ルラル経った頃、ようやく薬の吸収が止まり、背中の傷が完全に治療され、身体全体の状態が修復された。


「ギルド長、いかがですか?」


「………」


「あの…ギルド長?…薬は効いていると思うんですが…痛かったりしませんでしたか?」


「…嬢…」


「はい?」


「素晴らしいことじゃの。」


「え?あの?」


「セヴェリ、嬢を頼む。下がられよ。」


「え?」


「ラヤーナ、下がるぞ。」


セヴェリに抱きかかえられるようにして、ギルド長から離れた。

すると、ギルド長は身体をゆっくりと変化させ、竜体にと変化した。


『ギルド長~~~・かっこいいなのねのね~~~~~!!』


「…すごい…」


「飛ぶぞ。」


「え?」


竜体を取ったギルド長はその背中に大きな翼を持っていた。

あぁよかった…翼はちゃんと修復されたんだ…

ラヤーナがそう思った瞬間に、大きな風圧がかかった。

セヴェリがラヤーナを守るように前に立ち、見上げると、大きな竜が森の上をゆっくりと飛んでいる。


「…あれはギルド長?」


「そうだな。」


「よかった。翼が元に戻って…。なんだか…とても嬉しそうに飛んでいますね。」


「そうだろうな。」


「綺麗な色…水色の銀色?銀色に青みがかかっていて光っていますね。」


「あぁ。ギルド長は水龍系の竜族で、当時の竜騎士のトップだった人だ。」


「え!そんなにすごい方なんですか?」


「あぁ…。魔力も相当高い。ラヤーナの薬で身体の傷が完全に治ったことで、魔力も攻撃力も相当戻っているだろう。」


「すごい…」


『おじいちゃん~~~~~・きゃ~~~・かっこいいなののののね~~~~~!!』


ラティはラヤーナの周りをパタパタと飛んでいる。ギルド長の飛行を見て、飛びたくなったようだ。


しばらく空をゆったりと飛んでいたギルド長だが、ゆっくりと地上に戻り、すぐに人型に戻った。

(よかった…竜化して戻ったら服がない、なんてことが無くて…)


「嬢、何と感謝をしていいかわからん…良い言葉が思い浮かばんのじゃよ…」


「ギルド長の竜の姿はとても素敵ですね。」


「そうかの…嬢にそういってもらえると嬉しいのぉ。」


「よかったです。傷の具合はいかがですか?どこか痛みや傷が残っているようなところはありませんか?」


「ないな。今の儂の身体は傷一つない状態じゃよ。素晴らしい薬じゃの。」


「はい、そう言っていただけると嬉しいです。」


「本当に凄いな。」


「セヴェリさん、ギルド長もですが、この薬が必要になるような無茶なことはしないでくださいね。」


「…最善は尽くす…」


「セヴェリさん…」


「嬢。儂も最大限努力はしよう。じゃがのぉ…この薬が必要な時がそう遠くないうちに来てしまうじゃろ…」


「そうですか…。この薬は明日、ここに戻ったら作れるだけ作ります。それから…薬のことでもう少しご相談したいんですがギルド長、今晩またお時間は取れませんか?もう、時間的には一度町に戻らないといけないと思います。ですが薬のことで、昨晩の続きのようなことになりますが、もう少しお伝えしておきたいことがあります。」


「うむ、わかった。今晩また昨日の部屋へ伺うとしよう。今日はこの後どのような予定かの?」


「俺は騎士団の動きを確認しておきたい。また明日からしばらく森にこもるからな。」


「私はお店に出て、お客さんの要望を聞いてみたいんです。明日は材料や素材を町で買って森に帰る予定です。」


「そうかそうか。では儂は国王たちと話をつけておこう。今晩はいろいろと対策をまとめた方が良いじゃろうからの。」


「はい。よろしくお願いします。」


「あぁ。セヴェリ、先ほどのことも、頼んだぞ。」


「分かった。」


この後すぐにギルド長の転移魔法で店に戻った。

ちょうど朝食の準備ができるところでラヤーナはレスリーたちと、セヴェリはギルド長を伴って食堂で騎士団と朝食を取った。


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