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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第3章 ラヤーナ争奪戦?
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3-37 ラヤーナの不安 2


ラヤーナは話を始める前に、目の前にある自分で入れたお茶に口を付けた。部屋に戻った時に自分の中で整理をしていたつもりだが、声に出して説明しようとするとやはり緊張する。暖かいお茶をコクリと飲み込み、そっとカップを置いた。


「ギルド長、セヴェリさん…。あの王は…王なのでしょうか…?」


「…ラヤーナはあの王は王ではないと?」


「嬢、どういうことかの?」


「まず初めにお話ししたいことなんですが…あの王からは別の視線を感じました。」


「別の視線?どういうことだ?」


「あの王を通して誰かがこちらを見ている、と感じました。」


「!」


「ふ~む…なるほど…」


「王の目を使ってこちらを観察している…そのような感覚です。誰かが私達を観察しているんでしょうか?」


「…そうだな…ラヤーナのその感覚はおそらく…」


「あやつじゃな…」


「…この地に降りているということか?」


「じゃがどうやって…」


「この地に…降りている…ですか?」


「…そうだな…本来この地に降りることができないものが降りている…ということだ…」


「…この地に降りることができない…どういうことなんでしょうか?」


「そうじゃの…この世界に認められておらんものはこの世界の地には立てん。しかし、そのようなものがこの世界に紛れ込んでおる。」


「…あの…よくわからないんですが…」


「…そうだな…例えば…我々は空気がない場所では生きていけない…」


「あぁ、そうですね。こっちの世界もそれは同じですよね。」


「……。だが、空気の無い場所で生きているとしたら?」


「…え…それって…水の中でも息ができる…とか…宇宙に行っても宇宙服なしで生きれるとか?」


「うちゅーというものはなにかわからんが…息ができん、というのはまぁわかりやすい表現じゃの。人間種は水の中では息ができんからの。」


「ギルド長は息ができるんですね。」


「フォッ、フォッ、フォッ。まぁのぉ…」


「え…それで…あの…人間種なのに水の中で息ができる、みたいな…者?人?…が今ここにいるっていうことなんですか?」


「あぁ…おそらくコリファーレに…」


「コリファーレに…」


「そうじゃよ。我々が警戒しているのはそういうことじゃ。嬢、王には他におかしなところはなかったか?」


「あ、あの…」


「なんだ?」


「王もそうですが、あの押しつけられそうだった護衛の人も…」


「名はなんじゃったかの?」


「ゲルハルトか…」


「おお、そうじゃった、そうじゃった。」


「王も、護衛も…あの…うっすらとしか感じられなかったんですが、魔方陣が…」


「…魔方陣…」


「はい。はっきりと身体に浮き上がって見えるというものではないと思います。体の中に埋め込まれているような感じでした。」


「どんな魔方陣かわかったか?」


「王には2つ、護衛には1つ魔方陣があると思います。」


「王には2つ…それは何じゃ?」


「王と護衛、どちらにもある魔方陣はおそらく魔力を吸い上げているものだと思います。この間攫われた際に監禁された家の隅にあった魔方陣ととても似ている感覚がありました。」


「魔力の吸い上げじゃと?」


「はい。彼らは誰かに…こちらを見ていたその人に魔力を吸い取られていると思います。」


「…なんと…」


「そして、王の身体にあったもう一つの魔方陣は、見たことがない物だったんですが…魔方陣から受けた感じが、強い蠱惑のような感じを受けました。魅了のようなきれいなものではなく、もっとドロドロとしたようなものに絡めとられているような感じでした…それに…不快感もありました…」


「蠱惑とは…厄介じゃの…それに…不快感を感じたじゃと?」


「不快感か…それについてはわからないな…それに蠱惑か…それが使えるのは…」


「彼奴か…」


「あの…その魔方陣ですが…どちらの魔方陣もちょっと不思議な感じがして…」


「どんな感じだったんだ。」


「えっと…あの…何となくなんですが…違和感があって…」


「違和感?」


「はい。あの…何というかその…」


「なんじゃ、嬢。」


「あの…ギルド長はもうご存知だと思うんですけれど…私…この世界の前に、別の世界に居まして…」


「おお。そうじゃったのぉ~。嬢も飛ばされておったんじゃの。」


「…私…も?他にも…」


「おお、それで先ほどのうちゅーなんじゃらかは他の世界の言葉なんじゃな。」


「え、あぁ…はい。そうです。」


「それで、嬢が感じた違和感とはなんじゃ?」


「あの…私はエルクトラドムに来て、自分は本来この世界に生きる者なんだ、ということを最近理解するようになりました。前の世界…地球の日本という国だったんですが、そこでの人生はとても安定していて充実していましたし、幸せに過ごしたと思います。ですが、今自分がこの世界に来てみて、私の魂はこのエルクトラドムの世界に帰属していて、この世界が私の故郷であり本来過ごす場所なのだ、ということがよくわかるようになりました。」


「ほう、そうか…嬢の魂もようやく世界に根付いたということじゃの。良いことじゃ。」


「はい…それで…あの魔方陣から感じた気配…というか感覚なんですが、この世界のものではない…なにか根本的に別のところのものがあって、この世界に帰属していない…この世界のものではない、ということをうっすらとですが感じました。それに…なんとなくなんですけれど…前の世界にいた時のような…不思議な感じが少しだけ…本当にわずかなんですけれど…それも感じました。」


「…この世界のものではない…?前の世界?ラヤーナ…それはどういうことだ?わかる範囲でいい。感じた範囲でいい。全部話してくれ。」


これまで驚きながらも静かにラヤーナの話を聞き、ギルド長と相談していたセヴェリが、急に食いつくようにラヤーナに聞いてきた。


「セヴェリさん…あの…もしかしてこれってとても重要なことなんですか?」


「あぁ…とても…とても重要なことだ。」


「…わかりました…感じたことをお伝えします。もし…聞きたいことがあったら聞いてください。お答えできるかわかりませんが、私の感じた範囲でお伝えします。」


「あぁ、頼む。」


「まず、王と護衛から感じた魔力を吸収する魔方陣なんですが、この世界、エルクトラドムの地の力を全く感じられないんです。」


「力が感じられない?」


「はい。最近出てきた私のスキルなんですが…地の恵み…というものです。このエルクトラドムの地の恩恵を感じることができるものです。もう少し私のスキルが上がれば、受ける恩恵を自分に必要な力に変えることもできるようになると思います。それが地の恵みの力であり、おそらく私にしか使えないスキルだと思います。私は薬師ですから薬草を植えたり、果実を採取したりしていますが、それらの草や実は、この地の恩恵を受けています。薬を作り続けているうちに、その地の流れや恩恵が分かるようになったんです。そして、私自身も地の恵みを多く受けていることが分かるようになりました。エルクトラドムに生きるすべての生き物、草木や魔獣、人や様々な種族、エルフもドワーフも、鬼獣でさえもエルクトラドムの地の恩恵を受けているのが分かります。」


「なるほど。そうか…」


「はい。ギルド長にも、セヴェリさんにも地の恩恵が流れていることが分かります。」


「ふむふむ…じゃが、王にあった魔方陣にはそれが感じられない…ということかの?」


「はい、そうなんです。魔法を使う時、物を作る時、スキルを使用するとき、全てのことに置いて、地の恩恵が感じられます。今この部屋にかけていただいた様々な魔法もお二人の強い魔力の中に地の恩恵が感じられるんです。」


「地の恩恵か…」


「ですから可能性として、あの魔方陣を掛けたものはエルクトラドムに帰属しないのではないかと感じました。」


「エルクトラドムに帰属しない…」


「はい。どこか別のところの…例えば以前私が生きていた別の世界のものがこの世界に紛れ込んだりしたら…」


「…そんなことがあり得るのかの…」


「あ…あの…」


「ん、なんだ?なんでも言ってほしい。」


「はい。あの…」


ラヤーナは首に張り付いているラティをそっと引き離し、ラティに聞いてみた。


「…ねぇラティ…ローラ様から聞いたこと、話してもいいかしら?」


『大丈夫なのね~・おじいちゃんとセヴェリは・全部大丈夫ね~』


「全部…そう。わかったわ。」


「あの、ギルド長、セヴェリさん、今ヴェルネリアの森にはローラ様が…本来のこのエルクトラドムの女神様がいらっしゃいます。1000年前に力を失われ、ずっと森で眠られていたんです。まだ力を全て取り戻されてはいませんが、少しずつ以前の力を取り戻していらっしゃいます。」


「…女神が…ご無事であったのか…良かったわい…」


「ギルド長は女神様をご存じなんですか?」


「儂は年寄りじゃからのぉ~」


「…そうですか…やはり1000年前に女神様を守ってくださろうとしていた方たちのお一人だったんですね。」


「…1000年経っておるのか…」


「女神様がそうおしゃっておられました。」


「そうか…」


「はい。そこで女神様…私たちはローラ様とお呼びしています。まだお力を取り戻されておらず、女神、という言葉はあまり使われていません。」


「うむ…おそらくあのものに少しでも気づかれないようするためじゃろ。女神という言葉はその言葉自体が特別じゃからの。特に最近は、彼奴の力が増しておるのではないかの。慎重になるに越したことはない。」


「はい。今は、ギルド長とセヴェリさん、お二人の強い魔法で言葉に出しても大丈夫だろうと感じます…。でも、どこで気づかれてしまうかわかりません。ですので、私もローラ様とお呼びさせていただいています。お二人にお話しするときもローラ様とお伝えします。」


「よしよし、それでよい。ローラ嬢を守るのも儂らの役目じゃ。」


「ローラ嬢…可愛い響きですね。ギルド長がおっしゃると、ローラ様もとても可愛いお嬢様という感じがします。」


「実際そうじゃろうて。して…そのローラ嬢がなんと?」


「はい。ローラ様が神界にいらっしゃったときにまず気づかれたらしいのですが…そこに居てはいけない方がいると…そうおっしゃいました。」


「そこに居てはいけない…じゃと?」


「はい。1000年前のことをお聞きした時に…ヴァルテリさんという方が…ローラ様を守ろうとしてくださったと伺いました。ローラ様のお話では…この界を統べる神は皆を平等に愛するので、何か1つに心を奪われたりはしないとおっしゃいました。」


「…じゃが、彼奴は何としてもヴァルを我が物にしようとしたぞ…」


「はい…ですからローラ様は、そのような気持ちを持つものがエルクトラドムの神界に存在すること自体がおかしい、とおっしゃいました。」


「…そもそも神界にいることが…おかしい?」


「はい。」


「…それは…じゃあ…あれはどこから…」


「彼奴はどこから来たのじゃ…彼奴のためにヴァルが…」


「ヴァルとは…ヴァルテリさんのことですよね?ギルド長のお知り合いだったんですか?」


「そうじゃよ。ヴァル…ヴァルテリは儂の弟子だったんじゃ。」


「お弟子さん?」


「あぁ。ヴァルは儂の弟子で、優秀な竜騎士じゃ。」





※ ギルド長は竜族の中でも水龍系のため、水の中でも大丈夫です。

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