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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第3章 ラヤーナ争奪戦?
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3-35 コリファーレのフェルディナン王2


ラヤーナは相談室から出ると、外で待っていたセヴェリと一緒にギルド長の部屋に向かった。先ほどの話は…聞かれて困るかと言われれば、困るということはないが、非常に恥ずかしい…。自分は…セヴェリに惹かれているのかもしれない…そんな事実をメリルに突き付けられてしまった。まぁ、確かに…絢音の頃からこの類については非常に鈍かったという自覚はある。

ラヤーナはチラリとセヴェリの方を見るが、彼は全く気付いていない。

話は聞かないと言っていたではないか。きっと自分に遠慮をしてメリルとの話は聞かないでいてくれたのだろう。まぁ、さっきのはガールズトークだ。


「セヴェリさん…セヴェリさんはコリファーレの王をご存じなんですか?」


「…あぁ…多少はな…」


「どんな方なんですか?」


「メリルから話は聞かなかったのか?」


「聞きましたが…どうもピンと来なくて…」


「そうか…会えばわかる…おそらくお前にならわかるだろう…」


「分かる…なにがですか?」


「少しでも…何かわかったら、森に戻ってから俺に話してくれ。」


「私が何かわかるんでしょうか?」


「あぁ。」


「分かりました…よくわからないけど…わかりました。」


セヴェリがフッと笑う。


「この間もそう言っていたな。」


「…そうでしたね。」


「セヴェリ団長、ラヤーナさん、コリファーレ王とギルド長がいらっしゃいます。どうぞ中へ。」


メリルがギルド長の部屋のドアを開け、二人に中に入るように促す。


そこには、おそらく大変な美丈夫の王らしい風格を持った人と、ギルド長が待っていた。

しかし…何だろう…この…変な感じ…


「嬢、呼び立ててすまなかったの。」


「いえ…」


「こちらはコリファーレのフェルディナン王じゃよ。」


「初めましてフェルディナン王。ラヤーナと申します。王様にご挨拶するときの作法を知らないものですから、粗相があったらすみません。」


「いやいや。どうか気にせずに。随分と可愛らしい若いお嬢さんだ。」


そう言って、ラヤーナの方を見てほほ笑む。…営業スマイルか…それにしてもメリルが言っていた通り大変な美丈夫…なのだろう。笑顔から魅惑の光でも放たれているのではないかと思うほど鬱陶しい笑みだ。なんと言うのか…人らしくない美しさというのか…美しいのは認めるがただそれだけで…こういうのはどこかで見たことがあるような…うーん…何だったか…昔…日本で…


「そちらは…セヴェリ殿か。サフェリアの騎士団でも活躍されているそうだな。」


「フェルディナン王、ご健勝の様で。」


「あぁ…お前もな。」


「はい。」


あ、思い出した!あれだ、ビスクドール…確かそんな言い方をしていたと思う。実際には人形よりもずっと美しいのだろうな…あぁ、昔何かで見たことがある外国の俳優さんの写真だったような…あれは雑誌の特集で…世界一のイケメン写真が集められていて…そう、そんな感じの写真の中の人だ…この王様はあれに近いような気がする…


「ふぅ~む…本当に可愛らしいお嬢さんだな。このような可愛らしい女性を、我が国の手の者が無理やり拉致をしようとしたこと、本当に済まなかったと思う。我が国の者でこの件に関わったものは厳正に処罰をしておいた。」


「そうですか…。」


「もうこのようなことはないだろう。ラヤーナ嬢、お詫びに我が国に招待をしたい。我が王国に対して不安もあろう。それを払拭するためにも是非来ていただきたい。」


「…それは…あの…」


ラヤーナはギルド長を見た。


「嬢、王からの話じゃが、無理はせんでもよい。行ってみたいと思うのならそれも良し、まだ不安だと思うのなら無理をせんでもいい。」


「そうですか…それでしたら、私はご遠慮したいと思います。」


「なぜかな?王である私が直々にご招待しているのだよ?」


「はい。とてもありがたいことなのですが…やはりその…私は襲われたばかりでこの地を離れるのはとても不安です。まだ、どこかに行ってみる、という気持ちの余裕はありません。大変申し訳ありません。」


「…不安…そうか。…やはり若いお嬢さんにとってはとても怖いものだったのか。」


「…はい…すみません…まだ…」


「そうか。それではいまではなくてもかまわん。少し落ち着かれたら是非わが王国を訪問して欲しい。異国も良いものだぞ。」


「…そうですね…まだしばらくは考えられませんので、その時が来ましたらお伺いさせていただきます。」


ラヤーナはこの王と話をして、わずかな違和感を感じた。

始めは、昔見たことがある写真のような人で、綺麗すぎると人間味がなくなるのではないのかと思って見ていた。だがそのうちに、それとは別の違和感を感じた。何と言って表現してよいのかわからないが…誰かが見ている?王が自分を見ているはずなのに、見ているのは王ではなく別の誰か?


王はその後、薬の商談についてギルド長と話を始めた。

時折、ラヤーナに薬のことを質問してきたが、納品数や時期などは全てギルドが他の国と平等になるように調整をしているため、主にギルド長と話している。

王という立場の一国のトップが…薬の商談に来るだけでわざわざここまでやって来るのだろうか?

他にも…何だろう…何かこの王には…

あれ…?あれって…うっすらとしか感じられないけれど…もしかしたら…


ラヤーナは質問されたり振られたりする話に返答をしながら、王のことを失礼とはならないように気を付けて観察をした。セヴェリもそんなラヤーナを見守りながら警戒を怠っていない。


「ラヤーナ嬢、サフェリアから護衛がついているのであれば、我が国、コリファーレの騎士も護衛に付けよう。一国だけの、ましてや一騎士だけであなたを守るのは心もとない。」


「王様…そちらも特に必要ないです。」


「ラヤーナ嬢、私はあなたの心配をしているのだ。我が国はこれからもあなたの薬を使用させていただきたい。だが、もしあなたの身に何かあればそれも叶わなくなる。我が国の民があなたに危害を加えようとしたことは事実だが、だからこそ、我が国の騎士こそあなたを守れるとは思わないか?」


「申し訳ありません。お申し出はありがたいことだと思います。でもやはりお断りします。」


「ラヤーナ嬢、護衛としてそばにいるのはセヴェリ殿であろう。彼ではあなたの側に立つのにふさわしいのであろうか?私の騎士を呼ぼう。彼、ゲルハルトを見れば気も変わろう。そちらのメリル殿か、私の部下のゲルハルトを呼んでくれ。」


「ギルド長…」


「よい、呼んで差し上げなさい。」


「はい。わかりました。」


メリルが部屋から出て、しばらくすると一人の男性を伴って部屋に入ってきた。メリルの顔が少し赤い。男性の顔を見て、ああなるほど…と思った。きっと……2つ目のお花鑑賞を楽しんでいるのかもしれない。

おそらくであるが、王がゲルハルトの方がふさわしいと思っているのは顔の造作のことだろう。確かにメリルが言っていた通り、王は非常に美しい。そして、自分の美しさをよく理解している気がする。またメリルが連れてきたゲルハルトも王に次いで大層な美丈夫だ。コリファーレの顔面偏差値はいったいどうなっているのだろう…。


「ラヤーナ嬢、彼が私の部下のゲルハルトだ。彼はもちろん騎士としても優秀だが、男性としても素晴らしい。ラヤーナ嬢の側にいるのにふさわしいだろう。セヴェリ殿は確かに護衛としては優秀かもしれないがあの強面では一緒に居て楽しくはないだろう。どうかな、彼をセヴェリ殿と一緒の護衛に、あぁ、ラヤーナ嬢がセヴェリ殿の護衛を断りづらいのであれば私からサフェリアの王に伝えよう。ラヤーナ嬢が良ければこのまま彼を護衛として…」


「…いいえ、結構です。私はセヴェリさんに護衛を続けてもらいます。」


「遠慮する必要はない。サフェリアの騎士団に助けられたからと恩を感じているのだろう。しかしそれではラヤーナ嬢が気の毒ではないか。ゲルハルトは非常に優秀であるしこのように美しい。ラヤーナ嬢も一緒に居れば、ゲルハルトに…」


「いえ、本当に必要ありません。あの…私そちらの方…苦手です…」


「苦手?どういうことだ?せっかくの私の好意を…」


「王様は…何が目的でこちらにいらしたんですか?薬の商談でしたらギルド長がまとめてくださっています。私の身は確かにいろいろと狙われているようですが、このヴェルネリア王国も、この町の皆さんも、国を超えて守ろうとしてくださっている騎士団の方たちも、皆さんとても良い方たちで私には不満はありません。」


「…しかし…サフェリア国ばかりが…」


「特にサフェリア王国に便宜は図っておりません。どの国にも平等に薬は卸しているはずです。そうですよね、ギルド長。」


「そうじゃの。特にどこか1つの王国に便宜は図っておらん。今は嬢に薬を作ってもらっておるが、町の者は嬢の店で買うておるし、国を超えて購入に来る者もおる。差別はせず、購入希望者には普通に店で買えるようになっておるよ。」


「…ラヤーナ嬢は美しいものに心を惹かれないのか?」


「美しいもの…ですか?」


「あぁ、そうだ。美しいものを見ていれば、それだけで心豊かになる。気持ちも満たされてくる。もちろん美しいということだけがすべてではないが、同じ条件であればより美しい方が良い。美しさに合わせ、すべてが洗練されてくる。騎士とて同じだ。美しい騎士は無駄な動きがない。所作も美しくあろうとする。そしてそのための訓練も怠らない。それは騎士の強さ、身のこなし、敵を素早く倒す力となる。このゲルハルトはそのどれを取ってみても超一流だ。ラヤーナ嬢の側にいれば必ずそのすばらしさに気づくだろう。」


「王様のおっしゃることも一つのお考えでそれもよいと思います。…ですが私が美しいと思うものは私が決めたいです。ゲルハルト様が素晴らしい方であろうと、今は私には余裕がありません。王様、襲われたときの怖さは今も残っているんです。ですから、今日は私のような一民が王様やゲルハルト様にお目に書かれただけでも十分なのです。」


「だが、そばに置けばもっと満たされるだろう。」


「いえいえ、本日お二人にお目に書かれただけでお腹いっぱいです。」


「腹がいっぱい?」


「あぁ、いいえ、その…美しいお二人にお会いできて大変満足しているということです。ですが今はもう十分なのです。」


「フェルディナン王よ、まだ嬢は町の生活にもやっと慣れてきたところなんじゃよ。王の護衛は大層な美丈夫であり、他の女性も気になってしまうじゃろ。そのような御仁が嬢のためだけにこの町にいるとなると、周りの女性がどう思うかの…女性の敵意は怖いからの。嬢はまだ襲われた時の恐怖があるようじゃし、町の中が騒がしくなり嬢が不安になってしまうような状況を作らん方がいいと思うがの。」


「…そうか…ギルド長にそういわれては…」


その時ゲルハルトがすっとラヤーナの前に出て膝をついた。


「ラヤーナ嬢、ゲルハルトと申します。私にあなたのお側に仕え、あなたを守る役目を頂けませんか?」


…跪いて許しを請うって…これはまさしく何かのシーンにあったような…

…え…待って…この人も何か変だ…何だろう…王よりももっと…変…

あ…この人ももしかして…あぁそうだ…多分…うっすらと感じる…


「ラヤーナ嬢?」


「あ、すみません。いえ、お断りします。私には…ちょっと対応しきれません。」


「………対応…ですか?」


「はい。あの…もうこちらをお暇してもよいでしょうか…ちょっと疲れてしまって…」


「うむ…嬢、無理をさせてしもうたようじゃの、すまんの。王、ゲルハルト殿、今日はすまんが引いてくれんかの。嬢が疲れておる。王の気持ちもわからんではないが、少し性急ではないかの?嬢のことを考えるのであれば、無理はさせられん。そうであろう?」


「…わかった…今日は…これ以上の話は無理なようだ。」


ラヤーナはほっと息を吐いた。


「だがラヤーナ嬢、私の考えは変わらぬ。そなたにそばにいるべきなのは我が国の騎士であるはずだ。またラヤーナ嬢が落ち着いたときに来よう。」


その後しばらくしてコリファーレのフェルディナン王とゲルハルトはギルド長との話を終わらせ、部屋から出ていった。部屋から出た後すぐに気配が消えたため、おそらく転移魔法で自国に帰ったのではないかとラヤーナは感じた。


「…コリファーレ王には困ったもんじゃの…」


「…何か対策を打たないといけないな…」


「…あの…今日はもう…店に戻ってもよいでしょうか?」


「あぁ、かまわんよ。」


「あの…ギルド長…セヴェリさん…」


「今日は店に戻ってレスリーたちとゆっくりするがいいじゃろ。あとで様子を見にいこう。セヴェリ殿、ラヤーナ嬢をよろしく頼むぞ。」


「分かった。」


「メリルさんも、今日はありがとうございました。」


「いえ、私はいいのよ。それよりもラヤーナさん大丈夫?少し顔色が悪いわ。」


「あぁ、大丈夫です。…王様相手でしたので、緊張していたのかもしれません。」


「そうね、それはそうよね。それにしても…コリファーレ王、少し強引だった気がするんですけれど…ギルド長…あの王はこのような方でしたっけ?」


「そうじゃのう…どうかのう…」


「コリファーレ王もゲルハルト様も、眼福でしたね!ですが…何というか…やはり他国もラヤーナさんを手元に置きたい、と思っているんでしょうかね?それで今日は強引に話を進めようとしていたんでしょうか?」


「まぁのぉ…」


「ラヤーナさん、でもゲルハルトさん、すごい素敵でしたね!」


「メリルさん…ゲルハルトさんを連れてこられたとき顔が赤くなっていましたよ。」


「だってラヤーナさん、超絶美丈夫が二人もいるんですよ!世界1,2位ですよきっと。ラヤーナさん、いいんですか?ゲルハルトさんに跪かれたラヤーナさんを見て、私の方がドキドキしちゃいましたよ!あぁ~美しい騎士が姫に跪いて一緒に居たいと許しを請う…今はやりのお話の様だわ~~~~~」


ラヤーナにとっては大変疲れた王との話し合いだったが、メリルにとっては楽しい体験だったのかもしれない。自分は疲れたが、メリルにとって楽しいことが少しでもあったのなら、まぁ良しとしよう、ラヤーナはそう思うことにした。


「ゲルハルトさんはちょっと苦手です。落ち着かないですね…」


「それは彼が美しすぎるから?」


「…そういうことじゃないんですけれど…なんていうか…こう…ねっとりというか…しつこいというか…」


「美しいものに慣れていないからよ、ラヤーナさん。慣れよ、慣れ!美しいものは見ていて元気になるわよ。見ていれば慣れるわよ。」


「…メリルさんは美しいものがお好きなんですね。」


「あら、みんなそうよ。鑑賞するにはいいでしょ?今日はそういう意味で良い鑑賞ができた日だったわ。」


「メリルさんが楽しかったのならそれでいいです。」


メリルが楽しかったとわかり、何となくラヤーナの疲れも少し軽減された気がした。違和感については後でセヴェリとギルド長に話すことにして、今は本当に一休みしたい。


「ギルド長、ラヤーナととりあえず店に向かうことにする。少し休んで今日はそのまま店の者と過ごすようにし、明日はおそらく店に出ると思うが…。ラヤーナの体調を見て決めたい。」


「よしよし、わかった。セヴェリ殿、気を付けて頼んだぞ。」


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