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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第3章 ラヤーナ争奪戦?
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3-22 誘拐の経緯


「お嬢さん、こちらで休むといいですよ。」


「あ、ありがとうございます。」


「怖い思いをされたんじゃないですか?」


「あ…いえ…危害を加えられることはありませんでしたから…」


「…無理はしなくてもいい。サフェリアの騎士団があなたを守りますよ。」


そう言うと、その騎士はそっとラヤーナの手を握ってきた。

自分では気づいていなかったが、ラヤーナの手は震えており、騎士はそれを心配して手を握ってくれたようだ。人の手の暖かさがジワリとラヤーナを安心させる。気づけばラヤーナはホロホロと涙を流していた。


「…私…本当は怖かったんですね…自分で気づいていなかったけど…」


「おそらく捕らえられて怖いという気持ちよりも緊張が先だったんでしょう。ホッとして緊張がゆるんだんですね。」


「…すみません…お見苦しいところをお見せして…」



「いえいえ、それよりも若いお嬢さんがよく気丈に頑張ってこられましたね。」


騎士の言葉で自分が今まで気を張っていたのだとようやく実感した。サフェリアの騎士たちに助けられホッとはしていたのだろうが、いつもそばにいるラティが戻りギルド長も連れて来てくれて、ようやく自分が本当に安心したのが分かった。


「あちらの部屋もまもなく魔法解除が終わると思います。団長が戻りましたら少しお嬢さんに、今回のことを伺うことになると思いますが…大丈夫でしょうか?」


「……はい。大丈夫です。いつもお世話になっているギルド長も居てくださいますし、あとになると記憶があいまいになってしまうこともあるかもしれないので、…お願いします。」


ラヤーナがそう話したとき、ちょうど部屋から団長、ギルド長とラティが出てきた。


「団長!魔法解除は無事に終わられたのですね。」


「あぁ、問題ない。」


「嬢、落ち着いたかの?」


「はい。ギルド長、来ていただいてありがとうございます。」



「いやいや、儂がここに着いたときはサフェリアの騎士団が嬢を助けた後じゃったからの。私の出番は特になかったよ。」


「でも、ギルド長に来ていただいて、とても安心しました。」


「そうか、そうか。」


ラティがパタパタとラヤーナのもとに飛んで来る。


『ラヤーナ無事なのね~・よかったのね~・安心ね~』


「こちらのお嬢さんが無事でよかったです。我々騎士団が以前からサフェリア王国で怪しい動きをしている者をマークしていたんですよ。今回は団が追っていた輩が他国の者と通じながらこの町の祭りに潜り込んだので、我々もこの近くで張っていたんです。団長が怪しい魔術が使われたことを察知したので早めに動いてお嬢さんを助けることができました。」


「そういうことじゃったか…」


「お嬢さん、少し拉致されたときのことを聞いてもかまわないか?」


「はい、もちろんです。団長さん…ええと…団長さんとお呼びすればよいですか?私はラヤーナと申します。助けていただいてありがとうございました。」


「あぁ、申し遅れてすまない。私はセヴェリ。サフェリアの第5騎士団で団を任されている。お嬢さんの側にいるのはセレスタン、私の部下で副団長だ。もう一人、この部屋の入口にいるのはジェラールという。他にも外で待機しているものが5名ほどいるが…」


「あ、ありがとうございます。多分…今はそれ以上お名前を覚えられないと思うので…すみません。」


「いや、かまわん。」


「…団長…そんな言い方をしたらお嬢さんが怖がってしまいますよ。すみません…ラヤーナさんでしたね。団長はこのような体躯ですし一見怖く粗暴に見えますが決してお嬢さんを害することはありませんので安心してください。」


「…………」


「あ、はい。大丈夫です。」


「……それで……ここに連れられてきたことを聞く前に、お嬢さんのことを少し聞いておきたいのだが、答えられる範囲でいいので答えてほしい。」


ラヤーナはギルド長の方を見た。


「嬢、大丈夫じゃよ。安心して今町でしている商売について話しなさい。」


『ラヤーナ~・ここにいる人たちは大丈夫なのね~・騎士団みんないい人ね~・嘘ないのね~・ラヤーナの味方なのね~』


ギルド長とラティが大丈夫というのであれば問題ないだろう。


「ええと、私は薬を作って町で販売をしています。サフェリア王国の騎士団にもおそらく薬が届いているのではないかと思うのですが…」


「ええ!薬って、あの薬ですか?あのものすごくよく効く薬ですか?」


横からセレスタンが声を上げた。


「…ええと…ものすごくよく効くと言われても何とも言えないのですけれど…」


「セレスタン殿…じゃったかの…あの薬はラヤーナ嬢が作ったものじゃ。各王国の騎士団に薬を廻しておるのはリエスのギルドからじゃよ。嬢が作った薬を儂らの方で管理して各王国に販売と管理をしておる。みんな嬢に感謝せねばの。」


「…いえ…私は自分にできることをしているだけですので…」


「薬か…それで奴らはラヤーナさんを狙っていたんですね。団長、依頼者はサフェリアの者ではないとさっきの奴らは言っていましたよね。」


「…そうだな…それに関しては後でこちらで調べておく…それで奴らはどうやってお嬢さんをここに連れてきたんだ?」


「ええと…目が…」


「…目…あぁ、あの魔方陣の残滓だな…」


「はい。お祭りでしたので他国からの出店もたくさんありました。その中の魔道具屋さんで魔道具についていろいろと伺って、そこで古いランプの魔道具をいただきました。先ほど見ていただいた物のなかにあった魔道具のうちの1つです。その頂いた魔道具に『目』がついてきたようです。いただいたときは気づかなかったので、カバンに入れる時に目がついてきたのかもしれません。」


「あの魔法は繊細で制御が難しいものだ。高い魔力を持った魔術師でも扱うのは難しいものだがそれを魔方陣で補助していたのだろう…こういう魔法を使うのは…」


「コリファーレじゃな…」


「そのようだな…」


「…コリファーレ…ギルド長…あの…どうしてコリファーレ王国なんでしょうか?」


「嬢はまだ王国の特徴については知らないことが多いじゃろうからの。コリファーレの魔術師は緻密な魔法を使うものが多い。魔方陣を多用するのもコリファーレの者の特徴じゃよ。」


「…魔方陣は他の国の人たちは使わないんですか?」


「使わないのではなく、使えないんですよ、お嬢さん。」


「使えない?」


「セレスタン、説明してやれ。」


「はい。ラヤーナさんの国、ヴェルネリア王国の人たちは4種の魔法を基本として日常を過ごされていますよね。」


「はい…」


「ヴェルネリアは比較的種が混ざっていて、ここの国民は人間種も含め魔力の高さもまた魔力自体も安定していて魔法を使う際に魔方陣や詠唱などは特に使わず魔法を使うことができます。4種以外の魔法を使う際もそのまま使われています。ラヤーナさんも魔法を使う際は特に詠唱等はしないですよね。」


「…はい…そのまま…使っています。」


「われわれサフェリア王国では亜人よりも人間種が圧倒的に多く、魔法を使う際には魔道具の補助を借りる必要になることが多いんです。そうでないと身体の方が耐えきれなくなってしまい怪我や下手すると命に関わるようなことになってしまうんですよ。そのため魔道具を使うことが普通なんです。団長のような亜人種の場合は魔道具を必要としないこともありますが、魔道具を使えば威力を増したり、リスクが減りますので、サフェリアの者は魔道具を使うのが当たり前なのです。」


「…それでサフェリア王国の魔道具はいろいろと工夫されているんですね…」


「えぇ。アウロレリアはエルフが多く、魔力が高くて器用に魔法を使えるので魔道具なども洗練されたものが製造されています。そして、コリファーレでは非常に高い魔力を持った者はとても少ないのです。ヴェルネリアと同じように種が混ざっている国ですが、なぜかコリファーレ生まれのものは種に関わらず、魔力が高くならず、威力が弱い。それを補うように彼らは細かく繊細な魔法を幼少のころから訓練し、そのような魔法をつかえるようにしているのです。そこで彼らは自らの魔力を高く強いものにするために魔方陣を使います。この魔方陣を使用できるのはコリファーレ生まれの者だけとなっています。」


「…他の国の人たちは使えないのですか?」


「おそらく使えないのでしょう。私も昔試してみましたが、まず魔方陣を緻密に書くことができません。簡単な魔方陣でも魔法は発動しませんでした。はるか昔はどの国でも使用されていたという記録がありますが、今は簡単な魔方陣であってもコリファーレ生まれ以外の国の者が使用すると発動されないようなのです。」


「…使えないんですか…」


「はい。そして今回はこの家の数か所に魔方陣が描かれていたため、コリファーレの者が今回のことに関わったのだろうということになります。」


「…そうなんですね…そういえば依頼者があとでここに来るって、言われました。その前に皆さんに助けていただけて本当に良かったです。」


「えぇ、本当に間に合ってよかったです。」


「あぁ。それで…その『目』がどうなったんだ?」


「あ、はい。すみませんお話が飛んでしまって…。その魔道具についていた『目』なんですが、見つけようとすると逃げてしまって…捕まえるのが大変でした。」


「…捕まえたのか?」


「はい。ええと…」


ラヤーナは床に落ちていた指の長さほどの小枝をそっと持ち上げ、糸の代わりに実際に目が動いた様子を伝える。


「こんな風に、糸くずが動いていたような感じで私の視線から逃げるように動いていましたが…ちょうど私の服の前の方に動いてきたところを、糸くずを持ち上げるような感じで掴みました。こんな感じです。」


目の前で小枝の端を持ちぶら下げて見せる。


「…その…動くものを捕まえることに躊躇は…なかったんですか?」


セレスタンが思わずといった感じでラヤーナに尋ねた。


「はい…躊躇はなく…その…どうなっているのかなぁ~…と…」


「フォッ、フォッ、フォッ。面白そうなものをやっと捕まえた、という感じだったのじゃろ?」


「そうなんです、ギルド長!」


「…そうか…」


団長のセヴェリは顔色も変えずに返事をしたが、ラヤーナの隣にいるセレスタンは少しあきれたような顔をしている。


「…ラヤーナさん…そういう時は躊躇してください。好奇心だけで動くと今日のようなことが起こりますよ。」


「…はい。すみません…気を付けます。」


「…それであの部屋にあった魔方陣が発動したんだな…」


「はい。あの糸くずのような線がそこからパカッと2つに割れて、目が見えました。そこから光が漏れ出てその光に飲み込まれたらここに居ました。」


「そしてここに捉えられたのか…」


「団長が感じた魔術はその時に発動されたものですね。」


「おそらくそうだろうな。その後は、どうした?」


「はい。その後、男性二人が私に危害は加えないが依頼主が来たら引き渡すというようなことを話しました。依頼主が来るまでの監視役と言っていました。それから魔法は使えないということも言っていたんですが、それは団長さんが魔法を解除してくださったんですよね…」


「あぁ。それについてはもう心配はない。」


「そうですか。良かった…」


「あとは…ここで待っていたら皆さんが助けに来てくださいました。」


「そういえば、リエスの町のギルド長は良くここが分かりましたよね。」


「フォッ、フォッ、フォッ。嬢には強力な守りがついておるからの。嬢に異変があれば儂のところに情報が来るようになっておるのじゃよ。嬢はリエスのギルドが守ることになっておるからの。」


「ギルドが直接ラヤーナさんを守っているんですか…凄いですね…」


「薬の重要性はお主も理解しておろう。嬢を守るのは最重要事項じゃよ。だがな…薬を手に入れたいと思うものが増えてきておる。サフェリアもコリファーレもみんな欲しいんじゃろうて…嬢はこれからもっと狙われる可能性が高い…ギルドだけでは守りが十分とは言えないかもしれんな…」


「その点についてはサフェリアの国王と王国騎士団長も同様のことを言っていた。」


「そうか…ではサフェリア第5騎士団長のセヴェリ殿、今後の嬢の守りについてこれから交渉をお願いしようかの。」


「…私の守り…ですか?」


「そうじゃよ、嬢。つい先ほど、ヴェルネリア王国の国王とサフェリア王国の国王から書簡が届いての。」


「…わかった…では一度、この捕らえた者たちを国へ連れていく。その後でリエスのギルドに向かう。」


「その必要はないじゃろ。ほれ、これが書簡じゃよ。読んでみるとよい。」


そこには、

1.サフェリア第5騎士団はこのままリエスの町に残り、ギルド長と今後についての交渉をすること、

2.交渉内容とはリエスの町にいる薬を作る人物を守ること、

3.これは国同士の最重要課題となっているため現在の職務は第4騎士団と第3騎士団がすでに引き継いで進めていること、

4.ヴェルネリア騎士団とも連携すること、

5.そしてこのことに関してはリエスのギルド長ヴォイット=キヴィネン氏を最高責任者とすること


が書かれていた。また捕らえた者はすぐに第4騎士団が引き取るため、そのまま町に残るように補足説明が書かれていた。


「第4騎士団が来るのか…」


「ほれ、もうすぐ来るじゃろうて。」


「あぁ、来たようだな。」


「あっ、団長。第4騎士団のラザール殿が団を連れてこちらに向かってきました。」


「ラザールか…あいつに任せるのであれば大丈夫だろう…わかった、ギルド長。これからこのままリエスのギルドに向かう。」


「フォッ、フォッ、フォッ。よろしく頼むよ、セヴェリ殿。」





※セレスタンは天然タラシ。本人は決して女性に好かれようとか口説こうと思っていない。



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