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れっつ世界を救おう  作者: Luna
第3章 ラヤーナ争奪戦?
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3-18 魔道具の修理

「お待たせしました。」


「あぁ、さっきのお嬢さんか。今ちょうど片付けが終わったところだよ。」


「そうですか。あまりお待たせせずに済んでよかったです。」


「こっちもちょうど来てもらえて助かるよ。じゃ、宿屋に行くか。アマートがいるだろうから、俺はこの荷物を宿に置いたらパレードを見てくるよ。」


「ありがとうございます。」


ラヤーナは店番をしていた男性の後について宿屋に向かった。この時期はどの宿屋もいっぱいになるため、祭りの期間だけの期間限定で宿屋をするところもある。アマートはそのようなところの1つにこの男性と泊まっているらしい。町の比較的にぎやかな場所にある宿屋もどきのようで、この辺りであれば治安が悪いということもなさそうだ。


「この部屋だよ…。アマート、いるか?」


「あぁ、悪かったな、カスト。あれ、お客か?」


「ああ。お前に魔道具のことを聞きたいらしい。」


「…おや、この間のお嬢さんじゃないか。」


「アマートさん…こんにちは。魔道具のことを伺いたくて、こちらの男性のご厚意で連れてきていただきました。」


「このお嬢さん、お前と同じだぜ?きっと話が合うんじゃないか?」


「同じって…お嬢さんに失礼だろ。」


「いやいや、話してみればわかるだろ。俺はパレードを見てきたいからすぐ行くよ。きっと話は盛り上がるだろうが、お嬢さん、あんまり遅くならないうちに帰るようにしたほうがいいぞ。こいつ、話し始めると止まらないからな。」


「カストさん…とおっしゃるんですね。お気遣いありがとうございます。アマートさんにも無理をしていただかないように、早めに戻るようにします。」


「そうか、まぁ無理しない程度にはゆっくり話して行ってくれ。」


「はい。ありがとうございます。」


「じゃ、俺は見に行ってくるわ。」


「おお。俺の分まで楽しんで来いよ。腰はだいぶ良くなったから明日には大丈夫だろうが明日は国へ戻らにゃならんからな。今日は無理しないでおくよ。」


カストはパレードを見に行くために部屋から出ていった。


「お嬢さん、そんなに魔道具に興味があるんだね。」


「はい。カストさんには同じようなオタクだって言われました。」


「…全くカストの奴…まぁ俺については否定はできないな。パレードは1ルラル半ぐらいだろ。まぁ…半ルラルから1ルラルくらいなら話しても大丈夫だろうから、それくらいの時間でいいかい?」


「はい。ぜひよろしくお願いします。」


「お嬢さんは…」


「あ、すみません。ラヤーナと申します。」


「ラヤーナさんか。俺はアマートだよ。カストから俺の名前を聞いたんだろう。」


「はい。他のサフェリアの魔道具屋さんにも伺いました。」


「そうかい。じゃ、俺の自己紹介はまぁいいな。で、魔道具の仕組みを知りたいんだったな。」


「はい。今の魔道具についてはある程度は勉強したのでわかっているつもりです。」


「そうだな。今の魔道具は作り方や設計図なんかも出回っているからな。比較的簡単な物なら自分でも作れるだろう。そこにいろんな付加機能やデザイン、その他の付加価値を付けて他にはないものを魔道具屋は作っているんだよな。」


「はい。その点は理解しています。ただ、理解したからと言ってすぐ作れる、というわけではないですが、仕組みは理解しています。でも古い魔道具については今の魔道具とは少し異なっているものも多くて、設計図も昔の物はありませんし、魔力の流れ方なども今の物とは違うと感じます。」


「へぇ~よくわかっているね。ラヤーナさんだったかな。なかなか良い視点だよ。」


「そうですか。ありがとうございます。でもこの魔力の流れなんですが、今の魔道具は魔力が必ず一巡して戻ってくるようになっていますよね。実際は道具を動かしたりするために魔力は消費されますけれど、使わなかった魔力やその魔力の残質や残滓が必ず元に戻ってきて魔道具が動いていると思います。でも昔の魔道具はそうではないものも多くて、その魔力の残滓はどこに行っているのか、ということがまずわかりません。どこにもそれを感じ取れないですし、魔力の流し方が分からないものも多いんです。どうやったら動くのかもわかりませんし、修理をしたくても修理が必要な部分自体もわからないんです。」


「…よく道具を見ているんだね。ちょっと驚いたよ。まだ若いお嬢さんだよな…。今ラヤーナさんが言ったことは、古いタイプの魔道具の特徴でもある。ラヤーナさんは古い魔道具を持っているのかな?」


「はい…いくつか…あります。」


「その魔道具を使ってみたい…ということかな?」


「はい。まずは修理ができるようになりたいです。その上で使ってみたいと思います。」


「なるほどね…魔道具の修理は…特に古いタイプの魔道具の修理は結構面倒だよ?俺はそれが面白いから古い魔道具のとりこになったんだろうけどな。」


「私も自分の持っている魔道具を修理できるようになりたいです。古いタイプの魔道具の修理は難しいですか?」


「うーん…そうだな…難しいと言えば難しいし、簡単と言えば簡単なんだが…」


「難しいけれど簡単…ですか?」


「正しくは、簡単だがめんどくさいだな。ものすごい手間がかかる。根本的に古いタイプの魔道具は1つのルールがあってそれで動いている。そのルールを理解すれば簡単だが、理解したとしてもそれを実践するのが非常に面倒なんだよ。手間がかかりすぎるんだな…。あまりにも手間がかかるんで、みんな修理をしてまで使いたいと思わないんだよ。うちの工房でも、手間が比較的少ないものは工房の修理工が修理を担当しているが、非常に細かくてめんどくさいものは俺が担当している。」


「…どのようなルールなんですか?」


「古いタイプの魔道が動かなくなるのは、さっきラヤーナさんが言っていた魔力の残滓と関係があるんだ。新しいタイプのものは残滓が一巡して戻ってくるって言ったね?」


「はい。そのように感じています。」


「それで正しいんだよ。古いものは戻ってこれない。つまり残滓が中にとどまり、魔力詰まりを起こすんだ。」


「…でも、魔力を流しても魔力は流れませんでしたし残滓も感じ取れませんでした。」


「それは古いタイプの魔道具は残滓も含めて魔力を変質させたうえで動かすものだったからなんだよ。」


「魔力を変質させる?」


「そうだ。新しいものは魔力を変質させずにそのまま循環させて使う。だから残滓も戻ってくる仕組みだ。だが古いものは魔力を一度変質させてからその力を、道具を動かすために使う。残滓は使われずに残り、それが変質をして詰まるようになり、魔道具が使えなくなる。だから、昔の魔道具は使える回数が限られていたんだよ。」


「…使い捨て…って言うことだったんですか?」


「まぁ、簡単に言えばそうだな。使用回数制限がある魔道具だったってことだよ。」


「…じゃぁ、その目詰まりを取り除ければ…」


「そういうことだ。ルールについてはそれ1つだよ。道具を分解し、すべてのパーツに残っている汚れ、これは魔力の変質したものだな、それを落とし、魔力を変化させた力を流す回路の掃除をする、目詰まりしているからな、かなり丁寧に目詰まりも含めてきれいにする必要がある。全てを綺麗にし、もう一度組み立てれば魔道具は使えるようになるはずだよ。」


「それだけなんですか?」


「ルールはそれだけだよ。」


「それなら…」


「だがな…変質した魔力やその残滓を掃除するのがこれまた厄介なんだ。」


「…簡単には落ちない、ということですか?」


「そうだな。掃除するのに、魔法は使えないからな。」


「え…汚れを落とすための魔法は…ないんですか?」


「ないな。魔法を使うと残滓は全く落ちない。目詰まりも解消しない。」


「…それは…どうしてでしょう…」


「汚れの原因が魔力だからだよ。水でも火でも、何を使っても魔力が絡んだ掃除方法は全くダメだ。空間魔法、時空魔法まで使ってみたよ。時間を巻き戻す、ということをやってみたがそれも全くダメだった。魔力の残滓はものすごく厄介なんだよ。」


「…それは…確かに…あ、でもどうやって残滓を落としているんですか?」


「ひたすらこする、だな。」


「こする…ですか?」


「あぁ。ブラシなどでこすって、汚れをふき取る。特にワックスのような薬は必要ない。こすれば落ちる。それを布でふき取る。それだけだよ。」


「…それだけ?本当に?」


「あぁ。でも考えても見ろ。1つの魔道具は小さい物でも50程度のパーツはある。ランプのようなものでも200近くあるんだ。分解した後、それら1つ1つを全部こすって汚れをふき取るんだぞ。はっきり言って、終わらないよ。なかなか終わらない。」


「…それは…確かに…大変ですね…」


「あぁ。だから古いタイプの魔道具については、新しいタイプにはない物についてだけ、修理して販売しているんだよ。今ある物は、素材の耐性が耐えられるまでは使い続けられるからな。古いものは数回程度でも、新しい物なら数年は使える物が多い。」


「…そういうことだったんですね…」


「あぁ。だがな、古いタイプの魔道具には新しいタイプにはない、あるいは今は作ることができない道具があることがあるんだよ。それが面白いんだ。古い魔道具は修理してみないとどういう道具なのかが分からないことが多い。まぁ、修理している途中で、分解してみて何となくどういうものが分かることが多いけどな。だから、分解してこれはダメだ、となるとそのままガラクタや、修理用パーツとして分解してしまうことも多いよ。」


「なるほど…よくわかりました。」


「汚れをふき取る布は何でもいいんだけどな。ちょっと待ってろ…ああ、あった、これだ。これをやるよ。これは俺が使っている布だ。まだ使う前の物で予備に持ってきたものだから、残滓の汚れはついないぞ。こういうタイプの布が一番使いやすいからな。参考に持っていくといい。」


「ありがとうございます!私も手元にある魔道具の掃除をしてみます。」


「あぁ。古い魔道具は掃除をして使えるようになると、使い方は手に取ればわかるんだよ。そういう仕組みも古い魔道具にあるようだよ。」


「修理をすれば、触れるだけで使う用途も使い方もわかるんですか?」


「あぁ、わかるはずだ。少なくとも、俺が修理した古い魔道具はみんなそうだったよ。」


「分かりました!私も早速修理をしてみたいと思います。」


「あぁ、がんばれよ!」


「はい!」


「…あ…そういえば…これもやるよ。持っていくといい。」


「…これは?」


「これも古い魔道具だよ。この町で一昨日手に入れたんだよ。」


「一昨日?」


「あぁ、ラヤーナさん、あんたが店を訪れてくれただろ。あの後、カストに少し店番をしてもらって、俺も他のいろんな店を見てまわったんだ。俺の場合は、古道具屋をみてまわることが多いな。こういう祭りのときは、他の国からも店がでていて、古道具の中に古い魔道具が混ざっていることがよくあるんだよ。そこで手に入れたものさ。」


「…アマートさんがせっかく手に入れたものを…いただいてもいいんですか?」


「あぁ、同じものが3つ手に入ったんだ。おそらくだがこれはランプ系のものだと思うんだよ。ランプは割と部品が少ないから修理の練習にはいいと思うよ。俺は1つでよかったんだが、3つセットって言われて3つになったんだ。値段はただみたいなもんだったから気にするな。あと1つは工房の修理工の練習道具にするさ。」


「そうですか…それなら、ありがとうございます。いただきますね。」


「そろそろパレードも終盤じゃないか?」


「はい。私も町の店に戻ります。いろいろとありがとうございました。」


「また来年、祭りの時にうちの店に寄ってくれ。」


「はい。是非伺います。」


「魔道具修理の成果をそこで聞かせてくれ。楽しみにしているよ。」


「はい。今日はありがとうございました。」


ラヤーナはアマートに礼を言い、宿屋を後にした。


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