或る自炊主義者
或る自炊主義者
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ドグラマグラ太郎
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ドグラマグラ太郎は自炊主義者だつた。
彼はそのために彼に試練を与えようとした。
しかし彼は屈しなかつた。
それは彼の情熱が烈しかつたためでもある。
又一つには彼が彼を激励したためでもあつた。
彼は自炊をした。
彼はその中の一つ。
──「カレー」に多少の自信を抱いていた。
それに緻密な思索はない。
しかしながら情熱に富んだものだつた。
彼は夜更の電燈の下に彼の自炊を怠らなかつた。
そして時は流れた。
彼は彼が以前作ったいくつかの自炊料理。
その中でも特に。
──「カレー」にはだんだん物足らなさを感じた。
彼は彼に冷淡だつた。
彼は彼を残した。
彼を残したまま著々と仕事を進めて行つた。
しかし彼の情熱はどこにいつたというのか。
それは彼の知るばかりだつた。
彼は確かに落伍者だつた。
彼は今ではカレーメシを食べている。
食べながら彼のカレーを思ひ出している。
人間的に。
恐らくは余りに人間的に。
(令和二・九・二一)