表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ペットな彼女と異世界へ  作者: らい
第一章 始まりの町
7/39

1-6 新たな仲間

 「リコ! 待てって! 落ち着け!」


 元が狐だからかリコの足めっちゃ早い!

 女神様に体力を増やしてもらったからかなんとか見失わずに済んでいるが、前世の俺ならとっくにばててるぞ!

 全力ダッシュで五分くらい走っただろうか、ようやくリコが足を止めてくれた。


 「冬輝様あの子たちが、魔獣に!」

 「はぁ……はぁ……なに?」


 膝に手をついて呼吸を整えていたのだが、魔獣という言葉を聞いて無理やりでも顔を上げないわけにはいかなかった。

 リコが指をさしている先を見ると中学生くらいの女の子二人が狼のような獣に追い詰められているところだった。

 まじかよ、やっぱり魔物なんですね……


 「なんとか助けられませんか!」

 「なんとかって言ってもな……」


 武器もなけりゃ戦闘もしたことがない。

 さらには戦闘スキルも覚えてないんだ、戦って勝てる可能性なんて皆無だろう。

 だからと言ってこのまま放置したら女の子たちがあの狼に襲われてしまうのは避けられないし、ここまで来た以上見捨てるわけにもいかないよな。


 「……よし、俺が少し離れたところから石を投げて注意を引き付けるからその隙にあの子たちと街のほうまで逃げろ」

 「でも、それだと冬輝様が」

 「心配すんな、すぐに俺も逃げて合流するから」


 つっても相手は狼だろ、逃げ切れる見込みなんてないんだけどな……

 今は女神様に強化してもらったステータスを信じるしかないが、この息切れからしてそれも当てにはできない。

 そもそも女神様にステータス上昇に過信はするなと言われているし、運良く撒けることを祈るしかないか。


 「リコは迂回してあの子たちのとこまで行け」

 「冬輝様……」

 「いいから! 早くしないと助けられないぞ」

 「……ご武運を」


 少しの間俺のことを見つめた後リコは走っていった。

 すぅーーー、はぁーーー。

 よし、俺も行くか、頼むからうまくいってくれ。

 俺はリコと反対のほうに少しだけ移動したあと、足元に落ちていた石を拾い狼に向かって投げつける。


 コツン


 うん、どうやら狼に当たったようだ、こちらを睨んで威嚇してきている。

 睨めっこなんてしていられない、さっさと逃げるだけだ!

 俺が走り出した瞬間、狼も追いかけてきていることが分かった。

 へっ、ガキの頃から逃げ足だけは速かったんだ。

 なんだかんだワンチャンあるんじゃないか?

 ちらっとだけ後ろを見ると、今まさに狼が飛びかかっている瞬間を見ることになった。


 「冬樹様ぁぁぁぁーー!!!」


 ああ、リコの叫びが聞こえるよ。

 これが走馬灯ってやつか、この状況なんて一瞬のはずなのにはっきり認識できる。

 新しい人生の終わりも早かったな……

 こんなチュートリアル中に死亡イベントなんて、この世界には神も仏もいないのか。

 あ、居たわ、超絶美人でおっちょこちょいな女神様が……

 ああ女神様、まだ二日しか経っていませんがもう一度お会いできそうです。


 「はぁぁぁぁ!」


 へ?

 なんか急に人が飛び出してきたと思ったら、狼が吹っ飛んで三メートルほど離れた木に激突していったんだが。


 「シルク! アンタが遅いからギリギリだったじゃんか!」

 「ごめんごめん、余裕で間に合うと思ったんだよ」

 「二人とも急に走り出さないでくださいよー!」


 もしかして助っ人ですか? しかも三人も。

 助かるパティーンですか?

 なんとかなっちゃう感じですか?


 「僕はあいつを仕留めてくるよ。その人を頼んだ」

 「はいはい、アンタ大丈夫?」


 狼を突き飛ばした、片手剣と盾を持った赤髪の女の子が手を差し出してくれた。


 「あ、ああ、ありがとう」


 俺が手を借りて立ち上がるとすでに戦闘が始まっていた。

 いや、これを戦闘と言っていいのだろうか、どちらかと言えば暗殺と言ったほうが適切かもしれない。

 あのシルクと呼ばれていた銀髪の男、手に持っていた双剣で一瞬のうちに狼の首を刎ねやがった。

 首から大量の血を吹き出しながら倒れる狼。

 絶命するとそこにいたはずの狼は霧となって消えてしまった。


 「すげえな」


 あまりにも鮮やかだったので見入っていると、剣に付着した血を払いながらシルクがこちらに戻ってきた。


 「大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」

 「ああ、大丈夫だよ」

 「よかった、悲鳴が聞こえてきたものですから心配しました」


 なるほど、たぶん俺たちと同様、あの女の子たちの悲鳴を聞いたんだな。


 「それにしても、武器も持たないでどうして森の中に?」


 あー、ごもっともな質問が来たよ。


 「薬草採取に来ていたんだが、俺たちも悲鳴が聞こえてきたんでここに来たんだ。森に入っちゃいけないとは言われていたが無視するわけにもいかないだろ?」


 まあ、実際のこと言うとリコが走っていったから仕方なく来たんだが。

 そうでなくても応援を呼んでから戻ってきただろうし、遅かれ早かれ森に入ることにはなっただろうけどな。


 「不用心にもほどがあるわよ!」

 「す、すいません……」

 「まあまあ、この人もあの子たちを助けようとしたんだし悪いことではないじゃないか」


 怒られた、明らかに年下の女の子に怒られた、結構悲しい。

 こればっかりはしょうがないと思うの。

 悲鳴が聞こえて無視するほど薄情な人間じゃないし。

 ん?この子、腕を怪我してないか?


 「なあ君、腕から血出てないか?」

 「あ! ほんとだ、なんで黙ってたんだよアリサ」 

 「べっ、別にこんなの大した怪我じゃないわよ」


 すぐに腕を隠すアリサちゃん。

 さっき狼を吹っ飛ばしたときに少しだけ攻撃をもらったんだな。


 「ちょっと見せてみな」


 強引に手をとって確認する。

 うん、腕に少しだけ爪で切られた傷がある。

 幸いなことに傷も深くないし、これなら問題なく治癒で治せそうだ。


 「ちょっと! 急に何するのよ」

 「まあ、少し見てなって、治癒キュアー


 おお、やっぱこのスキルすごいな。

 少しの痕も残さず綺麗に治っちゃった。


 「はい、これでおしまい」

 「はあ!?」

 「すごい、まさか治療スキル持ちとは」

 「め、珍しいですね」


 みんな驚いているようだ。

 あ、隠そうとしていたのについ使ってしまった。

 でもまあしょうがないよな、うん。

 人助けは大事だし、何よりも俺が助けられたんだから。


 「冬輝様ー!」


 おっと、そうこうしているうちにリコたちも来たようだ。


 「よかった……無事みたいですね」

 「ああ、この人たちが助けてくれたんだよ」

 「そうでしたか、それはありがとうございました。あ、あとやっぱりこの子たち、三毛猫と柴犬ですよ!」


 先ほど襲われていた女の子たちがリコの背に隠れて覗いてくる。

 さっきは気が付かなかったが、二人はリコと同じく獣の耳と尻尾を備えていた。


 「あるじー?」

 「ほんとですー!あるじー」


 え?この二人があの三毛猫と柴犬?

 それって小屋で一緒に遊んでいた三毛猫と柴犬ってことだよね?

 近くにいるかもとは話していたが、ほんとにこんな近くにいたんだな。


 「主だー! こっちの世界にいたんだー」

 「ほんとだ! 主の匂いがしますー」


 ぐはっ!

 姿が変わったのだから全力ダッシュで抱き着いてくるのはやめていただきたい……

 あー身長は145cmくらいか、幼さ的に中学生ってところだな。

 そんな姿で、動物と同じように飛び込まれたさすがに痛いですって。

 あと柴犬? 恥ずかしいから顔を埋めて匂いを嗅ぐのはやめてくれませんかね?


 「悲鳴を聞いたとき、なんとなく三毛猫と柴犬っぽい感じがしたんですよ!」

 「なるほどな、だから急に走り出したのか」


 俺には全然分からなかったんだが、動物同士だからわかったってことか?


 「あのー、いろいろ事情を伺ってもいいですか?」


 話に入りづらそうだったのか、シルクがのそのそと聞いてきた。


 「ああ、すまなかった、助けてもらった身だ、何でも聞いてくれ」

 「わかりました、では先に森から出ましょうか」


 うん、あんな魔物がでるところなんていたくない。

 さっさと出るとしよう!

 話はそのあとだ。


一気に登場キャラが増えました、キャラ設定考えるだけでも一苦労です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ