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ペットな彼女と異世界へ  作者: らい
第一章 始まりの町
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1-3 宿屋と情報収集

 串焼きを食べて空腹を満たした俺とリコは、串焼き屋のおっちゃんに聞いた宿屋に向かった。

 街並みは中世な感じでレンガ造りの建物が多い。

建物の階層はあまり高くはなく二階建てがほとんどだった。

 中央広場の奥にはコンクリート造りのようなきれいな建物が並んでいる。

 富裕層のエリアって感じだ。

 といっても貧富の差が顕著に表れているような感じはなく、街には人族以外にもそのほかの種族と思われる種族もいるが、みな笑顔で話したりしているので、差別のようなものも少なそうだ。

 とてもいい街に来たのかもしれない。

 いろいろ見物しながら歩いていると宿屋と思われる建物にたどり着いた。

 扉の上にベッドの絵が描いてある看板がある建物。

 まさかこんなゲームみたいなわかりやすい看板があるとは思っていもいなかった。


 「ここ、ですかね?」

 「そうっぽいな、入ってみよう」


 両開きの扉を開けて入ってみると正面にカウンターがあり、フロア内には円形のテーブルと椅子が並んでいた。

 どうやら一階では食事がとれるレストランになっているようだ。

 昼間だからだろうか、客の数はそれほど多くはない。


 「あ! いらっしゃいませー、見慣れない方ですが食事ですか? それとも宿泊ですか?」


 テーブルを拭いていた中学生くらいの女の子が手を止めて話しかけてくれた。


 「ああ、宿泊したんだが」

 「わかりました! ちょっと待っててくださいね」


 そう言うと女の子は奥の部屋に入っていった、店主を呼びに行ったのかな?

 とりあえず目的である宿の確保は何とかなりそうだ。

 あとはお金が足りるかだけど……まあ大丈夫だろう。

 手持ちには二万マイル近く残っているのだ、言っちゃ悪いがそこまで高級そうな宿でもなさそうだし、最安値の部屋でも見繕ってもらえば当分は過ごせるだろう。

 カウンター奥の扉が開くと、女の子と変わって二十歳くらいのお姉さんがでてきた。

 先ほどの女の子と顔が似ているので姉妹だと思われる。


 「いらっしゃい、宿泊だけど、二人とも同じ部屋でよかった?」

 「あ、うん。リコはそれで問題ないか?」

 「はい、寧ろ同じ部屋がいいです!」

 「分かったわ、それなら二人部屋だと朝食付きで一日300マイルだよ」


 お、意外と良心的か?

 思ったより安いじゃないか。


 「分かった、とりあえず二週間ほど頼む」


 どうせ当分の間はこの街を出ることはないんだ、これくらいお世話になってもいいだろう。

 別に細かい期間だけにしておいて更新を繰り返してもいいかもしれないが、こういうのはまとめてやっておきたい派なのだ。

 それに、生きておく上で絶対に必要な衣食住の一つだ、そう考えれば二週間なんて妥当、むしろ短いかもしれない。


 「二週間だね、どうする? 部屋への案内は夜にするかい?」


 んー、疲れたっちゃ疲れたけど、まだ昼だしな。

 情報収集しないと何していいかもわかんないし、今からは街を散策するとして、部屋に入るのは夜でもいいか。


 「ああ、それで頼むよ」


 お姉さんはごゆっくりーと言い残してカウンターの奥へと戻っていった。

 残った女の子に店内の椅子に座って話をしていても良いか確認をとる。

 利用者であれば問題とのことだったので、俺とリコは近くの椅子に座り方針を決めることにした。

 

 「これからどうしましょうか?」

 

 とりあえず宿の確保は終わった。

 食事も、豊富な屋台のおかげで当分飽きることは無いだろう、それにこの宿でも食事が摂れるみたいだしな。

 そうなると次は仕事だな。

 働かなければ、いずれ所持金も尽きてしまうわけだし、どこかにハローワーク的なところはないものか……

 

 「まあ、この世界について知ることと、後は仕事探しだな」

 「女神様が言っていた冒険者とかですかね」

 「んー、ぱっと思いついてすぐに始められそうなのはそれくらいだよなー。でも戦闘系のスキルなんて持ってないし、リコはどんなスキルを持っているんだ?」

 「私が持っているのは解析スキルですね、あとは火の魔法が少し使えるみたいです」


 火の魔法か、狐火って聞いたことあるがそういうことか?

 なんか単純すぎるが……まあ、イメージの問題だろう。


 「ところでリコのスキルも女神様から選ばせてもらったのか?」

 「いえ、この世界に目覚めたときに頭の中に響いてきました」

 「なるほどねー、選んで手に入れたわけではないのか。魔法も同じように頭に聞こえた声が聞こえた感じか」

 「あ、魔法は違います。女神様が魔法も使えると言っていたのでいろいろ試し見たんです。そしたら火をイメージした時に手が温かくなって」


 そう言いながらリコが手のひらを前に出してきたので触ってみた。

 確かに温かい、体感40度くらいか?


 「一応、手のひらに小さな火も出せたのですが、出した後にすごい脱力感があったんですよ」

 「そうなのか、魔法っていうくらいだし魔力的なものを消費しているのかもな」


 そんなすぐに使いこなせるわけないもんな。

 火の魔法は戦闘に使うこともできそうだが、リコだけ戦わせるわけにもいかないし、何より怪我はしてほしくない。

 俺が一緒に戦えない以上リコの負担が多くなってしまうから冒険者の線はちょっとなしだな。

 他にできそうなのは、スキル的に何かを作って売るとかか。

 スキルについてもわからないことが多いし、たとえ何かを作ったとして個人的に売買してもいいのだろうか?

 それ以前に買ってくれる人なんていなさそうだよな。

 やっぱり何よりも情報収集が優先だな。


 「お水どうぞー」


 リコと話しているとさっきテーブルを拭いていた女の子が水をくれた。

 何も頼んでいないのに親切な子だ。

 ……もしかしたら客が少なくて暇なだけかもしれないが。


 「ありがとう、君はここで働いているの?」

 「はい、昼の間はお姉ちゃんと一緒にここで働いていて、夜はお父さんとお母さんが対応しています」

 「そうなんですね!まだお若いのに偉いですね!」


 リコがほめるとえへへといった感じに照れる女の子。

 そうだ、今なら忙しそうではないし、この子からこの街の情報を聞けるかもしれない。

 大人ではないが、俺たちからしてみればこの世界の住人というだけで大先輩なのだ、色々知るチャンスだろう。


 「実は俺たちこの街に来たばかりで街のことをよく知らないんだよ。よければ教えてくれないか?」


 この世界にチップという概念があるかは知らないが、銅貨一枚を渡しながら聞いてみる。


 「はいはーい! 何でも聞いてください!」


 よかった、チップを渡してもおかしなことではなさそうだ。

 女の子、名前はアカネちゃんと言うそうだが、アカネちゃんは同じ卓に座ると街の概要から話してくれた。


 先ず、この街の名前はエリシアという。

 王都から比較的に近く、周りに生息する魔物も弱いため、冒険者や行商人、近隣の村の住人もよく訪れるようで商業が盛んな街となっている。

 街の中央広場の奥にはこの街の領主や、エリア統括が住んでいるような富裕層のエリアがある。

 といっても公園や図書館、ギルドなどもそのエリアにあり、だれでも出入り可能らしい。


 「お兄さんたちは冒険者の方なんですか?」

 「あーそんな感じかな? でも戦闘は得意じゃないんだよね。スキルも治療と生産と解析しかないし」

 「えー、スキルを3つも! しかも治療スキルなんて持ってるんですね! 王宮専属治療師や聖職者の人でしか見たことありません! すごい」


 そう言えば門番の人も珍しいとか言っていたな。

 女神様からもらっただけだから何とも思っていなかったが、広まると変に注目を集めそうだ。

 今後はあまり言いふらさないほうがいいかもしれないな。


 「まあ、こんなスキルじゃあ冒険者なんてできないし、この街で仕事を探そうと思っていたんだよね」

 「それならギルドに行ってみてはいかがですか? 生産スキルを持っているのであれば、商業部門でやれるお仕事があるかもしれませんよ」

 「商業部門? ギルドって冒険者だけの集まりじゃないのか」

 「冬輝さん何も知らないんですねぇ」


 仕方ないだろう、こちとら急に異世界に来ることになって今自分が東西南北どっちを向いているのかすらわからないのだから……

 恥ずかしい限りだが、知ってるふりしていても何もわからないままだし、ここは我慢して聞くしかないよな。

 はあ、これなら女神様に詳しく教えてもらうべきだった。


 「俺たちド田舎出身なもんでな……その辺もよくわかってないんだよ」

 「そうですか、ギルドには冒険者部門、商業部門、魔法研究部門の三部門があります。お父さんに聞いた話ですが、商売をするのであれば商業部門に加入してライセンスの取得が必要みたいです。あまり詳しいことはわからないので、実際にギルドに行ってみることをお勧めします」

 「分かった、とりあえずギルドに行ってみるよ。色々教えてくれてありがとう」

 「どういたしましてー」


 話終えるとアカネちゃんはほかの客の対応に戻っていった。

 ギルド、ギルドねー。

 冒険者になる気はないけど、もしかしたら生産スキルを使って作った物の納品クエストなんかがあるかもしれない。

 それにスキルに関しても知らないことが多すぎるし、行ってみるしかないか。


 

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