表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

ギルド

明くる日、ぐっすり眠った私が起きたのは予定よりも一刻ほど遅れたときだった。

 急いで身支度を整え、一階へ降り、今日もそのまま泊まることを伝える。

 朝食食べるかと聞かれ、パンを思い出したが泣く泣く断る。

 バジルも眠そうにしているが、ポケットに入れて全速力でギルドへ向かった。

 

 「す、すいません。寝坊しました」

 

 大きい音を立てて扉を開けると、その中にはロボと昨日の賊が数人、それと

 ラール=フーがそれぞれ別の卓に座っていた。

 ギルドの受付嬢も困った様子で私を見つけると、

 「あなただったのね!」

 と驚いた表情をした。


 ロボの近くの席に座る。

 賊はにやけながらこちらを見てくる。なんとなくそれで察した。

 ロボは少し納得が行かなそうに上を見ている。

 状況がいまいち掴めなかったので、話を聞こうとするとラール=フーが先に口を開いた。

 「お嬢さんも昨日の件に関係してたとは、という事はこいつが相方か」

 

ラール=フーはこちらの近くの席に移ってきた。

 「昨日の件と申しますと」

 「あぁ、うちの従者が昨晩何者かに襲われた、それも十三人だ」

 倒したのは五人だから、ロボは屋根に登って八人も倒したのか。

 「そうですか。」

 「で、昨日の夜ギルドと自警団が出動して現場に来てみると、君とそこの獣人が居たってわけだ」

 「なるほど。」

 バジルは一度起きていたが、またポケットで眠り始めた。

 ギルドの受付嬢は少し戸惑っていたが、何も言わずに静観している。

 「昨日の自警団はどこへ行った?」

 ロボが口を開いた。

 「昨日出動した自警団は、急遽荒野へ演習が入りましたので」

 「なるほど。」


 恐らくラール=フーの狙いはこちらに先に謝らせる事だと入った時から分かっていたので、ここは静観することにした。

 だが、この我慢比べは一瞬で終わった。

 後ろで座って効いていた賊達がテーブルを叩いて立ち上がった。

 「俺は昨日、こいつの魔法に襲われた。恐ろしい火球と魔法の矢で撃ち抜かれたんだ。顔は覚えてる、間違いない」

 俺もそうだ、間違いないと後ろの二人も続く。

 お姉さんはこちらを不安そうに見てくるが目は合わせない。


 「そうですか。」

 「てめぇ、ナメてんのか」

 「その様なことは。」


 前に出てこようとする賊を、ラール=フーは制止した。

 少し落ち着いて、皆椅子に座ったところでラール=フーは覗き込むようにこちらを見てくる。少しは紳士だと思ったが、真っ黒だった。

 「我々も朝から呼ばれて困ってるんだ。素直に認めてくれればこちらもそれなりで手を打とう。どうですかね」


 「そうですか。」


 ロボは一言も喋らなかった。

 暫く似た問答が続くも、話は一向に進ませなかった。

 「なんかしょーもないね」

 バジルも寝起きたのか、ポケットから出ると鞄の中に入って飴を舐めはじめた。

 はっきり言って状況はかなり悪い。

 こちらは土地の人間ではないし、襲われたという証拠もない。

 それを証言出来るのはロボのみで、ロボも冒険者だから信用はない。

 何も答えないのではなく、何も応えられないのが本当のところだ。

 「受付のお姉さん、ここにいるのは当事者だけです。見ていた第三者がいるならば、その方々がいないとずっとこのままですよ」


 ふと呼ばれて驚くもこちらを見た。

 「第三者というと、昨日の自警団の方々ですか」

 「いや、それこそギルドの人も来てたみたいなんで、その人でも」

 目を伏せて首を横に振った。

 「暗くてよく見えなかったって皆言ってるわ。それに彼は異動になってしまって」

 「そりゃあ、街灯もなかったからな。」

 なるほど。街ぐるみでそういう事をやってるってことか。

 ロボは我慢出来ずに席を立ち上がった。

 

「ならば証明出来るものはない。ここらで失礼しよう」


 ロボが歩き出そうとした時、どこからか槍が伸びた。

 ラール=フーがロボの首元に槍を添えたのだ。

 「いや、ダメだ。それじゃ納得いかねぇ」

 「ならば証明してみせよ。此度の件、貴公の宴の帰りに起きたことだ。貴公にはそれに務める責務があるぞ」

 槍を手で下げるとロボはそのまま去っていった。

 納得はいかず、不満そうにラール=フー達もギルドから出ていった。


 「今のは魔法かな」

 「魔力は全くなかったね。錬金術ってやつかな」


 確かに全く反応出来なかった。

 魔力を使ったものなら感覚で反応出来ただろうが、今のは全くの無防備だった。

 ギルドのお姉さんは椅子と机を直してからこちらにやってきた。

 「本当にごめんなさい。」

 私は、何も言わずにギルドを出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ