7.登録
ついにミダラは冒険者ギルドへ到達。
中に入ると左から順に、受付、任務受付所、達成受付所、階段、酒場、武具売り場、依頼受付所があった。
受付では若い女性が暇そうにあくびをしていた。
任務受付所の女性もペンを鼻と上唇の上の所の間に挟んでいる。
対象的に、達成受付所のメガネをしている女性は忙しそうだった。
手つきや表情からしても、必死に働いているのが見てとれる。
酒場はガヤガヤしているが冒険者達が楽しそうだった。
武具売り場は現在休業中らしい。戸締りしていた。
依頼受付所には男の人がヨダレを垂らして寝ていた。
「それじゃあ、最初は受付だね!僕は新しい冒険者が来るから都合が良さそうな冒険者にパーティー組んで貰えるか交渉してくる!」
「お、おぅ。」
なんか、ガルガンチュアがおかしい。
どうしたんだろうか、やけに頬が赤いような...。
受付にくると女性が待ってましたと言わんばかりの笑顔でこんにちは!と言ってきた。
初めは椅子から立ち上がってテイマーですか?珍しい!とか、この子かわいいいい!と言われてくしゃくしゃにされたりして大変だった。
ガルガンチュアの目線が受付の女性ばかりにいっていた。
が、次の瞬間にはパッと切り替えてクールに振る舞おうと頑張っている。
…これは確定だな。
15分ぐらい経ち女性が座ると、やっと本題に入る。
「ここにくるのは初めてですか?」
「ああ。」
「ではギルドへ登録しますか?」
「頼む。」
「はい!では魔物は登録しなくて大丈夫ですか?」
「…うむ。」
「わかりました!」
女性はハッスルしながら受付の奥にある扉の方へと歩いていった。
しばらくすると、石板と、腕輪の様なものを二つ持った女性がにこやかな表情で扉を開けて戻って来た。
「石板に魔力を送りこんで自分の名前を言ってみてくださいね!すると、冒険者登録ができます!」
「わかった。」
ガルガンチュアはそういうと、自分の中から少し密度を薄めた上に属性を変化させた魔力を石板に送り、名前をいった。
緻密なコントロールで素人のムラがある魔力の出し方を再現するところも用心深い。
10秒経った頃、石板がシュイン、という音を立て光っていた。
「登録完了です!」
「お、凄いな光ってる。」
「魔力を使って魔力の情報を保存するんですよー。凄いですよね!…あ、あと腕輪です!」
「腕輪の機能は?」
「腕輪では自分のアビディティー、スキルや魔力量、自分の異常状態とかまで見れちゃうんですよ!冒険者には必須のアイテムです!あと、自分だけ見る事もで出来ますよ!...あと個人同士のチャットもできますよ!」
「ほほう。いい事を聞いたな。」
「??」
「んん、ああなんでもない。」
「?…では、腕輪をつけてみてください!」
「ああ。」
つけた途端、腕輪を中心に青色の魔法陣が広がった。
一瞬、監視系統の呪印入りかと思ったが神が勝手に解除した様だった。
念のため私も一瞬魔力制限装置を解除して、呪印を書き換えて魔法陣の中に入れた。
危なかったが、なんとかなった。
誰にもバレない速さだったのは確かだ。
魔法陣が消え、腕輪が模様にそって光っていた。
どうやら腕輪の機能が起動したようだ。
「では、自分のステータスゲージを開いてみて下さいね!」
「お?これがステータスか。」
目の前には光る半透明の紙の様なもの、しかし位置がブレていない。
常にガルガンチュアの目の隅に見えるようになっている。
…ガルガンチュアが言ってた通り、これは使える。
そして、ステータスにはこう書かれていた。
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冒険者ステータス
名前:ラウト
種族:人間族
職業:テイマー
属性:闇、土
ランク:F
経験値:0
総魔力量:1000
魔力コントロール練度:30%
潜在性:120%
アビディティー:創造思考、思考加速、テイム、質量干渉、万里壁、解析鑑定
状態:通常
==============================================
…やはり、人間は属性の分け方をわかっていない。
属性はエネルギーで分けるべきだ。
なぜなら属性とは本来、真核がこの世にある性質の中でどの性質が扱いやすいかを分類するものだからだ。
この世では、属性を
火、水、風、土、光、闇 で分けている。
しかし本当の属性というのは 、
動、重、合、物、反 だ。
動は、物体の運動、振動。
重は、重力や磁力。
合は、何かが融合する事。
物は、物質の事。
反は、反物質の事だ。
火は動と合、光は合、水と土は物と動、闇は反、と言う事だ。
これも、真核の事と同じく共有できる相手が少なすぎる悩みの一つだ。
..気づけば、お姉さんが固まっていた。
ラウトのステータスを、口をあんぐり開けてみている。
「.......え?!そそそ、総魔力量1000!?」
「?どうした。」
「しかもコントロール練度も30%ってあなた、元冒険者?!」
「何を言っているんだ。これぐらい当然だろ。」
「普通はみんな魔力量10とかそのぐらいですよ?それにスキルも凄いやつですよ!」
『………っ、迂闊だった。』
『あれ?……そんなに弱かったっけ。人間って。』
「そうなのか?」
「ええ、っていうか元冒険者か確認します!ちょっと待っててください。」
受付の人はそういうと、石板を持って行ってその場からいなくなった。
数分後ガクブルしながら、受付に戻ってきた。
「本当に新入りさんなんですね…。」
「ああ。しかし、元冒険者だと何かダメなことがあるのか?」
「元冒険者だったりすると、冒険者の時の規則違反経歴だったり、とにかく色々面倒な感じになっちゃうんですよー。」
「なるほど。というより、規則があったのか。」
「あ、説明忘れた!失礼しましたああ!」
「わかったわかった。説明してくれ。」
「えっと、規則は主に3つです!
一つ、魔物を必要以上に討伐しない事!他の冒険者への配慮ですね!
二つ、冒険者同士での争いや喧嘩はしない事!直ぐに止まらなくなりますからね…。
三つ、冒険者は依頼を達成出来なかった場合、依頼主に最低でも報酬の8分の1の代金を払う事!
…という感じです!
あとはそれなりにマナーを守ればいいかなと!」
「…ああ、わかった。」
「ちなみに、これを何回も破っちゃうと冒険者としての活動を一時停止、場合によってはギルド退会処分になっちゃいますので気をつけてくださいね!」
「わかった。」
「…そういえば、もうステータス的にはランクBに達しているので3つランク上げさせてちゃいますね!」
「あ、ああ。」
受付の人が詠唱を唱えると石版がまた光り、かと思えばその光の色が変わり、消えた。
「…ステータスチェックしてみてくださいー」
「ああ。」
すると、ランクの部分がFからCになっていた。
「おっけいですね!」
「…あと、ステータスの消し方だが。」
「あ、ええと、なんか消したいと心の中で言うと消えるらしいです!」
『消えよ。』
途端に、私の視界から消えた。
あとでこの道具、虚空源史化させる事にしておこう。
凄い便利だ。
…というより任務とかランクとかの説明がされてなかったな。
「あと、任務とかの説明もしてなかったですね!」
「あ、そうだったな。」
「ではちょっと待っててくださいね!」
よかった。
少し話題を変えた事で荷が軽くなった気がする。
受付の人が今度は石板を戻して紙を持ってきた。
結構大きい紙だった。
紙にはランクについてのピラミッドが書かれていて、Fが一番下、SSが一番上となっていた。
受付の人が胸ポケットから棒を取り出した。
取り出し方が変に癖のある取り出し方だったが気のせいか。
となりのイケメンはそっぽを向いた。
やけに鼻が伸びている気がするが…。
まあ、いい。
「それでは説明します!まずランクの説明です!ランクとは…」
どうやら、ランクに関しては強さの指標の一つとしての役割を果たしていて、これによって受けられる依頼の難易度が変わるらしい。
FからDまでは力仕事の手伝いやボランティア、CからAまでは魔物、魔獣の討伐や捕獲、SとSSは大型魔物などの倒す難易度が高い魔物の討伐や捕獲である。
私達は飛び級でCなので魔物討伐や捕獲も可能なのか。
私的にはかなりムッとするが、まだ堪えるべきなので、堪える。
ランクアップするには、ランクに合った複数の依頼を達成し、経験値を貯める事が条件で、特に問題が無ければ依頼達成した際にその日にでも経験値と引き換えに受付でランクアップできる。
しかし、依頼達成を偽装したり、失敗したらその時点で元のランクの最初からやり直しという事になる。
ちなみにランクがダウンする事はないらしい。
特典として、ランクAになると武器と防具一式がギルドから贈呈される。
ランクSになると国外含むギルドの中の飲食店を自由に使える。
ランクSSになると、ギルド公認の冒険名誉勲章が貰える。
この勲章があればある程度の国へは自由に移動出来るようになるらしい。
ランクSとランクSSの特典はかなり使えそうだ。
飲食店は情報の交換にも繋がる。
国々を自由に行き来できるのは便利な上に、不正入国などをして怪しまれるという面倒な事がおこることがない。
ランクSSになるのは検討しておこう。
「…なので周りのパーティのメンバーや一緒にいる人の入国も自由になるんですよー!」
「なるほど、それは便利だな。」
「ええ、でも元々これぐらい強いんだったら経験値なんてすぐ貯まりますし、一年も続けてれば絶対ランクSにはいってると思いますよ!」
「そうなのか?」
「ええ!」
「…フッ」
なんてこった。
…受付の人、神に惚れる。
何故こんなことに。
……というよりそういうのはいいからはやく依頼と言うものをこなしたいのだが。
「あっ!…えっ、ええっとぉ、これで以上です!っ…」
『いいっやほお!美人ゲットだぜ!』
『うるさい。』
「ありがとう。」
「あ、あのぉ!」
「…ん?」
「え、っっっと、また今度…来て下さいね?…」
「…ああ。いいぞ。」
わかりやすいぐらい口調が変わってたのだから驚きだ。
面白い。
………いや、そんな事してる暇はないな。
神はさっきから一人でニヤニヤしている。
キモい。
………急かそう。
『こらこらこらこら、はやくして下さいよ。』
『はあはっはああああー、久しぶりに女をゲットしたぞ!実に愉快だあ!この世界の女は余裕であるなぁ!』
『はぁ…。ところで神さまって性別あるんですか?』
『ああ、一応あるぞ。ただ神は個体単位で強いため、生殖は殆ど機能しないがな。』
『へー。』
『しかし我も恋愛感情ぐらいあ…というより汝の性別を知らぬのだが。』
『女ですよ。』
『えっ』
『…何ですかそのリアクション。』
『ぁぁ……』
『そんなことより、行きましょう。』
『…』
『…はやく行きましょう。』
『…どうしたのだ。すごく怖いぞ。もしかして、妬いてるのか?』
『いいえ、はやく任務受付所へ行って任務をこなしたいだけです。貴方こそさっきから。』
『ぐぬぬ、汝は我を何だと思ってるのだ。』
『女を口説く、話が通じない神。』
『っぐはっ!』
精神ダメージを負わせ、いう事をきかせる。
こういうタイプにはこれが一番だ。
だが、ちょっと可哀想だったな。
『全く、直しt…』
『ううぅ、わかったから、やめろ。やめてくれたら、やる事はやるから。が、条件がある。』
『…いいでしょう。それで、その条件とは?』
『我もひさびさにハッスルしてるのでな、自由時間が欲しいのだ。』
『……いいですが、言動は私が怒らない程度ぐらいに抑えて下さいよ。』
『汝は細かいな。』
『それぐらいしなきゃ、駄目なんですよ。』
『…むむう。』
そう言ってる間にガルガンチュアは任務受付所についた。
『…墜とさないで下さいよ。』
『いや、我の愛する女は全世界に一人なのだ。』
『ああ、やっぱり。一目惚れしたんですね。』
『…フンッ、なんとでも言えば良い。』
『嘘もろばれですよ。』
『……』
『あとなんで口説いた風に言ってるんですか。三重をはらなくて大丈夫ですよ?』
『……………』
『そして最後、なんで名前聞かなかったんですか。』
『…うるさいわ。名前は今度聞くから大丈夫だ。』
『その今度…くるんでしょうかね?』
『ぎくっ、』
『貴方はもしもが足りない。すぐこうだろうと思いこむ。大事なのはその次です。
結局…戦闘も恋愛も同じ事ですよ。』
『ぐぬう、何故そんな事がわかったのだ。』
『独学です。現実逃避した時、虚空空間の中で考えてた事があったんです。』
『なるほど。…という事は汝は…』
『いません。いた事もありません。』
『…ああ、そうか嘘だなそれは!』
『嘘じゃありません。』
『むむう。』
『それよりはやく声かけてください。わざと寝かせてから起こす気ですか。』
『あ、ああ、すまぬ。』
『はあ。』
神は恋愛下手だった。
面白い。実に愉快だ。
またいじってやろう。
…そうか、これだ。
これが友達か。
失っていた何かが目覚めた気がする。
懐かしい。
自分の中に新たな世界が作られた感覚だった。
如何でしたか?
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次回もお楽しみに!
次回から不定期になると思いますが、ご了承ください。