32.これから
その後......
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...私と、ガルガンチュアは話しながら、怪しい夜道を歩く。
「汝、やりおったな。」
「しっ、今貴方はラウトなんですから。」
「あ、そっか。」
「はあ。全く。」
「...ゴホンゴホン。まあ、神になったのはおめでとう。と言ったところか。」
「...まあ、そうですね。」
「ほほう?少しは素直になった様だな。」
「っっ。やめて下さい。」
「っっはは。...ともあれ、凄いな。」
「いえいえ。」
「そういえば、名前がミダラのままでは少しまずいだろう。名前を考えなくてはな。」
「...あー、そうですね。」
「ふーむ。」
「…貴方の名前って、どうやって決めたんですか?」
「ああ、俺か。...響き。だな。」
「ふーむ。」
そんなもんでいいのか。
...いい響き。
クリシュナ。
確か、アンディークが言ってたワードだ。
意味は分からないが、印象に残ってるな。
...そのままではつまらないので、少し捻りを加えよう。
クリシュナ。うーむ...とりあえず、省略してみるか。
クリシュ、...微妙だな。
クリシ、うー。
んー。
あー。
いー...
...クリシー。
これだ!
「...クリシー。」
ガルガンチュア、じっとこっちをみる。
顔が変にキラキラしている。
「なン...じゃなくて、あんた...センスがいいな。」
「そうですか?」
「ああ、なかなかいい名前だ。」
「そうですか。」
「ああ。」
...こうも嬉しいとは。
人間、いや神とは、おめでたい生物でもある様だ。
「...まあいいとして、どうしましょうか、これから。」
「そうだな。...先ずはあんたをどうするかだな。」
「それはつまり...」
「人間界においてはどういう人間か、を確立しなければいけない。という事だ。」
「そうなりますね。」
「...という事は、冒険者ですか?」
「そうだな。それが一番都合がいい。」
「ということは、ギルドに登録ですか...少し面倒くさい気もしますね。」
「いや...もしかしたら、ギルドに登録しなくてもいいかもしれないな。」
「?何故ですか。」
「先ず前提として、冒険者にならずとも冒険を一緒に出来ないわけではない。言い換えると、冒険者が冒険者以外と一緒に行動するのはアリだ。それを禁止するなんてそもそも規約に書いてないしな。」
「あー。でも、冒険者じゃなければ不便な所はあるのでは?」
「いや、今回の場合はないな。冒険者が使う腕輪についているステータスゲージはあんたも観れるし、S級になった時の国家間の移動についても付き添いまでなら可能だ。...それ以外の問題も特にないしな。」
「なるほど、そうですね。じゃあ、人間としてはその線で行きますか。」
「ああ。」
「...そして、神の世界ですね。」
「そっちだな、問題は。」
「私、論理的に神になったとは言え、それに関する情報を一切持っていないので...。」
「そうなのか?まあ、そういう場合は宗教を参考にあちらについて学ぶという線もあるが、それより直に世界に行った方がいいだろう。」
「え。」
「よし!では、いくぞ!」
「って今ですか?!」
「ああ、誰もみてないし、大丈夫だ。」
「だっ、だとしても行き方が。」
「なら教えてやる。」
「...はあ、そうですか。そこまでいうなら。」
よくわからないが、そんな感じで神の世界に行っても大丈夫なのか?
…そうか、そうだった。
こいつにどこかトンチンカンなことがあるのはわかっていることだった。
しかし神になってからというもの、私に感情的な物に流されてしまう傾向が生まれたな。
気をつけなければ。
「よし、わかった。...だが一つ言っておく。真核というのは、感覚で理解するものだ。言いかえるならば、どれだけ己の感覚が研ぎ澄まされるかが大事だ。なので、俺ができるのはサポートだけだ。自分が本質を理解するよう、努力をするんだ。」
「わ、わかりました。」
「でだ...自分の真核を感じれるか?」
「...ええ、そりゃあもちろんですけど。」
「先ずはそれを支配するんだ。」
「...というと?」
「今のあんたは、自分の真核を支配していない、いわゆる真核が不安定な状態にある。それを自分のコントロール下に収め、安定させるんだ。」
「え、じゃあいまは、」
「感じているだけだ。自分の物には出来ていない。」
「な、なるほど?」
「まあ、やってみろ。」
私は自分の真核の感覚に集中する。
......
...
いまいち分からない。
もう一度集中する。
...
ダメか。
最後。
...出来ないな。
ダメだ。諦めるな。
...もう一回、これで最後だ。
..ん。
真核の感じ方が変わった。
なんというか、変だ。
真核が、乱れている感じがする。
...そういえば、真核には周波数があったんだったな。
なら...
真核を捉える時の集中するベクトルをガルガンチュアに変えてみる。
すると、彼の真核は、なんというか安定している感じがする事に気づく。
なるほど。
...これは、声を出すのと似ている感覚だな。
今回やろうとしている事をそれに例えるなら、音の高さを揃えるという感じか。
原理がほぼ同じな事と、音楽を聞いていたのが功を奏したな。
そして、それを自分でコントロールする...。
つまり、周波数を安定させる。
ガルガンチュアに合わせる感じでやればいい。
...まだ、
まだだ、
あとっ....もうちょいっ。
?!
これか。
「...わかりました。」
「え?!もうか?!」
「えぇ。なんか声を出すような感覚、であってますかね。」
「うーむ。まあ、厳密には違うが、おおよそあっているな。」
「?」
「じゃあ、その音程を上げるイメージをしてみろ。」
「それをすると?」
「ある時点で神の世界へ転移できるようになる。」
「なるほど。」
「...俺の手を握ってくれ。その方が真核を感じやすい。」
「お。助け船、ありがとうございます。」
「はっは。まあ気にするな。」
「では..うっ。」
手を繋いだ瞬間に顔に素が出たな、こいつ。
気持ち悪い。
ん?気持ち悪い?
...なんだこの感覚。
気持ち悪いという感情は味わったことはあるが、今までになく嫌な感じだ。
「ちょっと素が出たからって露骨に表情に出すな。...ほらやるぞ!」
「あ、え、えぇ。」
こいつ、自分こそ素を出しといて…カチンとくるな。
ん。カチンとくる...?
これも新しい感情か?
先程と同じく嫌な感じだが、少し違う様な気もする。
...まあいい。
集中する。
ただ、今度は自分とガルガンチュアの両方にだ。
これがかなり難しい。
意識が両方にいかない。
少しづつは上がっている気がするが、ガルガンチュアの様子から違うと察する。
「一回止めるんだ。」
「…っ、疲れますね。」
「…ん〜何故うまくいかないんだ。」
「…確かにそうですね。」
「…もう一度、自分だけで上げてみるイメージをしてみてくれ。」
「?…はい。」
意識を集中させる。
ガルガンチュアも何か考えているようだ。
「よし、わかった。もういいぞ。」
彼は何を閃いたのか、私の手を離し、小さい耳に手を当て、アビディティー“震動操作”を発動した。
すると、何も聞こえない空間私の耳の周りにでき、そこに変な音が流れてきたのだ。
ポーと言うような。
突如、脳に直接響くような声が聞こえた。
...ガルガンチュアが思念波で何か伝えたいようだ。
『これ、聞こえるか?』
『ええ。』
彼は私の思念波での返事を確認すると、周波数を下げる。
物凄く低い音になっている。
『…聞こえずらいと思うから、音量を上げるぞ。』
『はい。』
音量が上がる。
ある一定のレベルに来たところで止め、周波数の周期を変化させていく。
それと同時に、私は音の本質を理解した。
私の定義付けが問題だったのだ。
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