31.消死
お久しぶりです。
大変長らくお待たせいたしました!!!
目を開ける。
自分の身体が見える。
思った以上に綺麗だ。
改めて見ると、体が描く曲線は洗練され、本当に世界一の弱食生物なのかと疑う程綺麗だったことに気づく。
さらに...いつもと感覚が違う。
なんというか、清々しいというか。
奥底からナニかが湧き上がってくる感覚がする。
その所為で、いや、そのおかげで、人間の本当の素晴らしさを理解できた気がする。
なんというか、見え方が純粋で、鮮やかで...物事の本質を何と無く見抜けるのだ。
そうか、これが人間か。
これが創造思考の力か。
なるほど、どうりで弱肉なのにあそこまで台頭してるのか、今やっとわかった気がする。
だが何より...できた!
今まで何か怖かった。
出来るとは思っても、しなかった。
失敗したら?
それしか考えていなかった。
今回もそんな不安があった。
でも何故だろう、できた。
これで....
[“創造思考” 発現を確認。“觧絶路卸頭”が、“觧絶路卸譜頭・改”へ変化。]
[生命の性質が、“繋”から“乖”に変質。同時にインベーダーアビディティー“乖醒煩悩”と“螺脳別”を獲得。]
[これにより、種族は乖狐族から虚乖神族へ変化。]
[称号は“アンチブレイバー”。]
...っっっっ!?
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まただ。
気がつけば、あの空間。
ピンクだった空間は、紫色に変わっていた。
今回の私は気絶していない。
後ろから、声が聞こえる。
「この短期間で...どうして??」
「...。」
「半神から神へ数日程度?そんなの不可能よ。何故、何故なの?」
そう、私に足りなかったのは、自信だ。
無根拠の確信と自身の尊重だ。
神へとなった今ならわかる。
「なんででしょうね。」
「...貴女は一体?!」
私は出来る。
私は神になれた。
これからもなるようになるはずだ。
そして、私は...
「私は...ミダラ。又の名を、アンチブレイバー。」
「...っ。」
私は...
勇者に抗う者。
運命に従わない者。
リスクだって背負う。
勇者に負けるか、運命に従うか、どっちがいいか、正しいかなんてわからない。
ただ、私は私だ。
私だけの道を征き、私だけを信じる。
ある者は自分勝手だというかもしれない。
ある者は私を軽蔑するかもしれない。
けど、そんなのはどうでもいい。
傲慢さや、欲望、野性や希望も必要なんだと気付いたからだ。
「...貴女に今からある物をあげます。」
「どういう物なの?」
「0と1の数字のみで構成された世界を作り出し、それを使って色々出来る、パーソナルコンピューターという物よ。」
「貴女が開発を?」
「いいえ、異次元の、ある世界のある場所から拝借した物よ。その世界の方が物質的には進んでいる場所があるの。」
「へえ。」
「それと時間が進み始めると消えちゃうから、あなたのアビディティーでも使って、コピーして返してね。」
「わかった。」
「そしてもう一つ、これはある音楽家の使っていたものよ。ある程度扱いに慣れたら、色々いじってみると良いかもね。」
「はあ...?」
「まあ、兎に角いじってればそのうち解ります、ということ。」
「そうですか。」
「それともう一つ、お願いをしていいかしら?」
「いいですよ?」
「あら、変ね。まだどういうお願いかは言ってないのに。」
「なんか、いいんです。」
「...へえ。そこまで人間みたいな言葉を発した魔物は初めてですよ。」
「ははっ。私はもう神ですよ…。それでお願い事とは?」
「ええ...実は。」
「実は?」
「ダンケルクという勇者がいるじゃない?」
「いますね。」
「あいつ、魔王の因子を持ってるの。」
「へえ。」
「それだけならまだいいのだけど、私と同じ様にダンケルクに接触をした奴がいるの。」
「誰ですか?」
「エーテルよ。」
「...まずいですかね。」
「あら、案外楽観的なのね?」
「えぇ、そうですね。...」
「私の見立てだと、奴は“ガフの扉”を開く気ね。」
「ガフの扉?」
「ええ、神でさえ成し得ない結果をもたらす、“存在しない筈の扉”よ。」
「どういう結果を?」
「よくはわからないけど、世界の生命を一つ生み出したり、消したりすることが出来ると考えられているわ。」
「...なるほど。」
「突然だけど、それよりやばいのはダンケルクね。」
「何故に?」
「ダンケルクは、貴方の持つものとは逆に魔王の因子を持っているの。それを持っているものは実質魔王の様なものね。」
「なるほど。」
「そして魔王の因子を継いだ生命体は必ずある物を持っているの。...いた、患っているという方が近いのかしら。」
「何を?」
「私が開けた箱の中に入ってた物よ。...簡単に言えば、絶対悪というやつよ。」
「へえ。」
「それを踏まえて話を戻すわ。…おそらくダンケルクがものすごい勢いで神の世界で台頭してくるわ。彼には魔王の因子があるから。」
「それが神の世界にどう影響を?」
「おそらく、エーテルを裏切り、次元の神の称号を得たダンケルクによる、神の世界の絶対統治が始まる。」
「...」
「それだけではないわ、ゲシュタルト崩壊という現象が起きる可能性もあるの。」
「どう言う現象?」
「ガフの扉が原因で、その世界の全てを終わらせてしまう、“コラプス”を生み出してしまう現象よ。」
「なるほど。...よくわからない気が。」
「まあ、複雑だし、信じられないでしょうが、私レベルになると、これぐらい先の事は分かるのよ。」
「はあ。」
「兎に角、ダンケルクだけは侮らないで。奴はやばいわ。今回の貴方並みにどう動くかが分からない。臨機応変にね。」
「...結局言いたい事はそれだけですか。はは。」
「でも、一応理由は説明した方がいいかなーと。」
「分かってますよ。とりあえず、記憶はしてますから。」
「...助かるわ。そう言ってくれると。」
「...そろそろ、ですかね。」
「そうね。」
虚空源史化で、パーソナルコンピューターを一旦自分の物にし、その情報を取り込む。
再度元に戻し、こう言う。
「さよなら。」
「今度こそ、本当のグッバイね。」
...そして、時を解放したパンドラは消え始める。
透明になって行く様に。
彼女は私に願いを託して、とうとう本当の意味で死ぬのだ。
その願いは、世界を変える。
世界を救う。
私としても、これ以上、ダンケルクにも私の両親、友達の様な無様な死に方はさせたくない。
よって、その願いを無駄にするわけにはいかない。
なら、やるしか無い。
その決意を胸に、空間を移動する。
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...消え征く中、パンドラは考える。
『これで、良かったのかしら。...』
パンドラは、二度目に直感、いや、自分を信じた。
一回目は、無機質な世界を変えようとした時。
二回目は、彼女にパソコンを渡す時。
なぜか、多くを考える必要も無く、彼女はミダラという存在が世界を変える事を確信したのだ。
『これでどうにかなるかしら。』
ゆらりと、陰が現れる。
そこから、三つ目が浮かび上がり、それはそのままヒトガタになる。
『...久しぶりだね、パンドラ。』
『...エーテル?』
『その通り。...やっと見つけた。』
『はは。遅いわよ、見つけるの。』
『っふ、変わらないね。』
『ええ。』
駆け引きを演じるように、互いは互いの目を見る。
叶わなかった筈の夢を、あの時の後悔を、其々が思い出しながら。
『...もうじき世界が変わる。君の手駒の代わりに、こっちにはダンケルクという手玉がある。…その時点で、君は負けだ。』
『さあ、どうかしら。』
『愚かだな…世界は一つだけでいいのに、どうしてそれを変えてしまうのさ。』
『...直感ね。』
『はんっ。君がそんな物を信じた事があるわけ無い。』
『ふふ、それもどうかしら。』
『…』
『最後に一ついいかしら。』
『...何を今更。』
『…私、これでも貴方のこと、好きだったのよ。伝わらないでしょうけど。』
『っふ。...僕もそうだった記憶もあるかもな。』
『...さよなら。』
『...つっ。』
『あら、やけに冷たいじゃない…そんな顔...しな...い..』
…こうして、パンドラは、世界から完全に消え、未だに誰も行き方がわからない、何処か遠くへ、行ったのだった。
アンチブレイバー、如何でしたか?
これからはあげる頻度少なめですが、それでも頑張りたいと思います!
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