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3.過去

ミダラの過去が明かされる。

地道にあるいて2日目。

枯木だけが広がっていた大地には少しづつ草や木が見えてきている。

人間の足跡も見えてきていた。


何人か冒険者や聖粛者、商人や運び屋が通りかかっていた。

それぞれ色々な装備をしていた。

共通しているのが寒さ対策のネックレス、何かしらの武器などを持っていた事。

おそらく防寒、魔物退治や奇襲に備えての事なのかもしれない。


「やはり人間は大変ですね。」

「うむ、世界で一番の()()()()だからな。」


クールでお洒落な見た目に似合わない口調で私に話しかけてくるのは、源祖の神ガルガンチュアである。

ちなみに私は可愛いらしい見た目のミニオンギツネに変身している。

かわいいは正義、という言葉は本当だった様だ。

何故か擬似人格を埋め込んだ私の魂の活動も活発になっているし、通りすがりの人間はみんな見てくる。


しばらく歩いていると、聖粛者の二人が歩きながらある噂話をしていた。


「なあ、グレイ。あのゾルダが死んだっていうの聞いたか?」

「え、知らねえよ。でも、あの人ヤラレるイメージないだろ。“清粛の神童”って呼ばれて勇者ダンケルク様に認められた人だぞ。」

「わからないが自分の罠に引っかかって死んだとか死体がないからまだ生きてるとかなんとかで結構酒場とかではその話で持ちきりらしい。」

「マジか。まあ、どうせ酒場の噂だ。嘘だと分かれば3日で終わる。」

「まあ、本当だとしても俺達にはあんま関係ないからな。」

「そうだな。ただお前には死なれちゃ困るぞ、グラフ。」

「ああ、死んだら親に顔向けできないしな。」


私が殺した男は結構有名だった様だ。

まあ多少の脚色はされているが仕方ないだろう。

いや、むしろかえって助かる。

情報提供ありがとう()()()()()

人目に着くと復讐の成功率がグッと減るのでね。

その可能性は低い方がいいからね。


「しっかし、あれを見てみろ。今どきテイマーなんているんだな。」

「ああ、たしかにな。って事はそれなりに強い人って事なのか。」

「今頃テイマーなんてやったってなーんの特も無いのによぉ。」

「まあな。しかしながらも魔法は使えるし、相性が良ければ冒険者のパーティーに入れるからな。」

「ええ、それ知らなかったぞ!うっわあ、めっちゃええやん。

…そしたらこんな面倒くさい職業やめてテイマーになろうかなあ。」

「いや、それこそ親が怒るぞ。」

「ああーーーもう!やってらんねえ!おし、帰ったら酒呑むぞお!」

「はあ、…またこれかよ。」


うるさい。

やはり人間は苦手だ。

私達に聞こえてるというのに。

ただばれてはいない様なので問題はない。


そんな話を聞きながらすれ違った後、私達は国の中央部にある冒険者ギルドへと向かうことにした。

進行方向的には殆ど変わらないので特に問題もなく、気ままに歩いていった。

一応、魔力結界をはって過ごしている。


その夜、ガルガンチュアは何を思ったのか、こんな事を聞いてみた。


「なあ、汝は何故我を召喚したのだ?」

「何故それをきくのです?話したでしょう、勇者を倒す為だと。」

「いや、質問が悪かったな。汝は何故勇者を倒そうとする?何故そんなに人間をそんなに憎む?何故そんなに力を求めてる?全て説明してくれたまえ。」

「……」


嫌な質問だ。

しかしこれは答えなきゃいけないのだろう。

そうしなければ()は納得しないかもしれない。

これは、友として特別に話す事だ。

其処の妥協はしてみてもいいだろう。

もしかしたら、最近の悩みも解決するかもしれないしな。

しかし説明がしんどい。


「我は汝が心配だ、だからきいている。」

「…分かりました。質問に答えます。」


それぐらい当然だ、という顔をしている。

はぁ、やはり言うしかないのか。

そもそも友ってそんな物だったのか。覚えてないな。

大切なモノを失って体感50億年前だからな。


「…それでこそ友だ。」

「…では、まずは私の家族の話を、」


私は話しながら思い出す。

楽しかった日々を、それを奪われた事を。

何も出来なかった自分を。

未だに腹がにくりかえる様な感情を、後悔を、感じながら。




============================================





私は、妖狐族の本家に生まれた。

妖狐は各地で集落を作り、結界をはり、縄張りをつくってそこで生きる。

そのまとめ役を担うのが本家だった。


父は、かつては魔王だった。

かなり強かったそうだ。

しかし父は力を鼓舞する事なく、立ち向かおうとした相手とだけと戦った。

世にも珍しい、正義感が存在する魔王だった。

後から聞いた事だが、魔王の中では過去最高に強かったらしい。

しかし大切な物が出来て、それを守る為に魔王をやめた。

勇者もそうだが、魔王は常に権力を争っている。

魔王の家族が殺されるという話は珍しくないそうだ。


母は、特別な力を持っていた。

ものを何処かへ転移させる事が出来る能力。

しかし、使う機会はそれ程なかった。

さらに母自身平和な性格で、家族以外には絶対に能力について話さなかったからだ。


故に、生活は普通であった。

何がと言われれば特にわからないが、周りの皆と比べても大差はなかった。

家族もいる、友もいる。

私の子供時代はまあ幸せだった。

何も考えずただ友達とひたすら遊んで過ごした。

特に私は、好奇心と遊びで溢れていた。

あれをどうとかこれをどうとか色々気になった。

村を出て、その近くにある山のてっぺんも登った。

今考えると両親はよくついてこれたと思う。

それぐらい活発だった。

怪我しても、父親に殴られても、大きい魔物に殺されかけても、その活発さは止まらなかった。

それもこれも好奇心を止める理由にならなかったからだ。

あの日も、両親に今日は絶対に家の外に出るなと言われた。

しかし今まで培ってきた能力と悪知恵を使い、封印結界(親との約束)を破って3人の友達と一緒に近くの森を抜けて秘密基地的な場所へ遊びに行った。


「メロウ、今日は何する?」

「そうだなー、カガリはどう思う?」

「わかんねーよーー。」

「私は何でも。クインが決めたら?」

「そんな事言わないでよミダラー!、もう。」


いつもどおりなのはここまでだった。

最初におかしさに気づいたのが、クインだった。

クインの勘と危機察知能力は大人顔負けレベルの凄い物だったのはみんなも知っていた。

その事がのちに私達を救う事になる。


「……なんか変ね。」

「?どうしたの、クイン。」

「…周りの大気の魔力量がいつもよりすこし少ない。」

「え?」

「…あの先に何かあるわ。」

「おい、それなんか怖いな。」

「………誰か確かめにいったら?」

「「「ええーー?!」」」

「…冗談だよ。」

「それよりも、何が起こってるかの確認が先だぞ。」

「じゃあ、僕の千里眼でみるよ。」


…彼は、怯えていた。

汗が滝のように溢れ出ていた。


「「「!?」」」

「…………」

「…メロウ、どうなってるの?」


クインが恐る恐る聞く。


「.......やばい、村のみんなが危ない!」

「「「っえ!?」」」

「みんな、今すぐ村へ戻るよ!説明は戻りながら!」


メロウの顔が尋常じゃないので、みんなで言う通り走って戻る事にした。

みんなのペースに合わせながら、走っても余力があるカガリはきく。


「んで、なんでだよ。」

「…人間がいた、魔術師だ。結界をはってた。」

「っっ…それで?」

「それが真核妨害用の結界だったんだ。」

「…?なんでなんだろう?そもそもそこまではあまりおおごとじゃなよね?。」

「そうだね。いつもどおり大人に言えばいいのに...。」

「………違うんだ。その背後にいたんだっ!」

「何がよ?」

「……………勇者ダンケルクが!」

「「「!?!?!?」」」


その瞬間、皆の動きが止まる。


勇者ダンケルク。

若干17歳にして、世界最強。

数々の魔王を死へと葬った実力者。

ソイツの信念は…

魔物、魔獣、魔王。

魔が付く生き物は全て皆殺し。

魔物達にとっての、恐怖の象徴だった。

躊躇(戸惑い)もなく魔物を狩り、魔物の全てを奪う。

つまり彼に存在を認知されるかされないかのみで、魔物は生死を左右されるのだ。

そして、彼に見つかった。

つまりそれは死を意味する。

…という話がある。


クインの危険察知能力は素晴らしいものだった。

もしもあと気付くのが三十秒遅ければ、あちらに気付かれて完全に殺されていただろうから。

だが、彼は見つかっていないとは言っていない...。


ひとまず私達は全速力で走り、村と秘密基地の中間の森へ紛れ込んだ。

適当な所で止まる。


クインが口を開く。


「..追ってきてる……まさか見つかったの?」

「多分。こっちを見た時にアイツら、まるで血に飢えた様な笑い方をしてた。」

「……なんで、なんでだよ。」

「…知らないが、此処にいる全員は確実に死ぬ。そう言う事なのか?。」

「…でも少なくとも、未だに生存者はいなかったって言われてるだけから…。」

「…仕方ない。わからないけど、せめて最後の悪足掻き程度ぐらいはしてみるべきでは?」

「…そうだね、どうせ死ぬんだもんね…ミダラ。」



こんな御都合主義な発想、普通はしない。

大抵は逃げてそのまま追い付かれて殺されるのがオチだ。

そう。

ダンケルクの強さは、次元が違かった。

私達は感じたのだ。

強者を、圧力を、底知れない力を、ある種の運命を。


しかし、私達には死と向き合うには幼すぎた。私達は生きたかった。

一瞬でもいい。生きたい。

死にたくない。

その気持ちが私達の余裕をなくさせ、動揺させ、狂わせる。



「……では、クイン。私達の悪知恵と力で、勇者供を出し抜いてみようではありませんか。」


「「「おう!」」」


そして、この選択がのちに私達の心に大きな虫喰い穴を与える事になる…。




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