21.感情
数日前...。
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さて、これはどうしたものか。
何度も試しても駄目だ。
アビディティーの性能上げを試みたが、ある所から全く変化が無いのだ。
感属感知から感属操作、感属創造、個己炉と進化したが、その先がどうしても出来ないのだ。
まだあの感触が無いから最終形では無いのは確かだが...
どうすればいいのか。
...取り敢えず一旦諦めよう。
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「じゃあ、行くか。」
「そうだな。」
戻ってきた。
この光景は体感100年振りぐらいだな。
確か、パーティーを組んだところか。
「...よし、ラウト。いくぞ。」
「どこにだ?」
「まあ、装備だな。今日はあそこやってっからな。」
どうやらギルドの武具売り場に行くらしい。
「魔法使えるから不要な気がするが。」
「いやいやおいおい、そういう問題じゃねえよ!」
「まあまあよせ、ゴヴェルノ。初めてじゃあ説明しないとわからないだろう。」
「いや、魔術師だろうが。」
「お前は知らないようだが魔術師には色んな人がいる。決して旅の付き人ではない。」
「...悪かったな、ラウト。」
「気にするな。」
間一髪、バレずにすんだ。
そして、ローによる何故人間が装備をするかの説明が始まった。
「いいかラウト、人間は世界一弱い生き物だ。最弱の魔物、スライムでも群がれば人を殺せる。だが道具さえあれば別だ。例えば魔術師だって手から魔法を出すよりも杖で魔法を出す方が効率がいいだろう?」
「あぁ、そうだな。」
「それと同じだ。そもそも装備っていうのはその為の物だからな。」
「...すまないな、職業病だ。」
「そんな謝らなくていい。理由ないならむしろ謝るな。」
「...す、すまない。」
「...」
相変わらずの不器用さだ。
まあ、今のは仕方ないか。
確かに自分でも謝るという判断をする...のか?
サブが両手に銃と言うものを持ち、背中にあるホルスターにしまう。
手付きが洗練されている。
まるで体の一部の様だった。
「さあ、今度こそ行くぞ。」
「そうだな。」
「ところで、武具売り場ってギルドにあるやつか?」
「いや、違うぞ。俺たち行きつけの武具売り場だ。」
「なるほど。」
「付いてってくれ。」
「分かった。」
こうして、ラウトことガルガンチュアとロー三人組が組んだ、新たなパーティー一行はある武具屋へと向かった...
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貿易地区には、路地によってそこにある店の風貌や内容が変化する。
大きい表路地には、大手の貿易会社や様々な娯楽に関する店舗が多く、それが枝分かれしてる路地には色々なパーツや道具、アンダーグラウンドな物品を扱う店が多い。
そして、今回私達が行く武具屋はさらに小さく、ひっそりとした裏路地にあった。
人はあまり通らず、明かりも少ない。
道端には所々に気持ち悪い腫れ物が出来ているかなり痩せた男がいたり、人骨が転がってたり。
怖い雰囲気の場所だった。
そこでは、違法性が高く、ダークなものを扱う店が殆どだ。
武器、酒を飲んだようになる薬、人までも売っている。
そのため、危険が多いと言う。
その裏路地の終着点に、ある気味が悪い扉があった。
その扉を開けると、階段。
下へ行く。
薄暗く、臭い階段を下る。
そしてまたもう一個扉。
前のよりも気味が悪い扉だった。
また開ける。
扉を開くと、壁止まりだった。
しめてさらにもう一回、開ける。
すると、不思議。
部屋が出現した。
不気味な部屋だ。
黄色い照明が周期のない点滅を繰り返し、それにつられる様に水滴の落ちる音がする。
その奥には机があり、そこに人が座っていた。
その人は自分の顔を隠す様にフードを被り、何処と無く鉄の匂いがした。
そいつにサブが話しかける。
「久しぶりだな。」
「...そだなぁ。」
「元気してるか?」
「まあな。」
「よかった。」
そいつはサブの声に嗄れ声で答える。
するとそいつは立ち上がり、私達の方へきた。
「...今日はなにを?」
「ああ。こいつの防具を作ろうと思ってな。」
「...」
『挨拶してください。』
『わかっておる。』
「サブ、こいつは?」
「はじめまして。ラウトという...?!」
驚くのも無理もなかった。
彼の顔が見えたのだ。
その顔の片方は焼けただれ、目が白くなり、うじまで湧いていた。
よく病気にかかってないなと思うほどだ。
その上、顔の元の型も歪だ。
黄色い照明で、不気味さがさらに強調させられてた。
「...昔のはなしだ。気にするな、ラウト。」
「あ、ぁ。」
「おれはバーン。よろしく。」
彼はガルガンチュアに手を出して、握手を求めた。
握手をするガルガンチュア。
「...魔術を使っていいか。」
「?何故だ?」
ローが聞く。
「治療したい。」
「?!なにを言ってるんだ!回復薬は全部試した!しかも今更だ、治すのは...」
「いいや、できる。」
しまった、ガルガンチュアの素がでた。
「?!」
次の瞬間、不思議な光がラウトから出る。
水色に光るそれは、バーンの顔を包み込む。
光が消え、顔を見る。
彼は劇的に変わっていた。
親しみのもちやすい、穏やかな顔をしていた。
「お、お前...。」
「まじかよ。」
「あ、あ、ぁあ」
『はっ?!やってしまったぁぁ!』
『馬鹿。』
これはもうダメだ。
こいつが一人でコミュニケーションするのは危険過ぎる。
今回はまだ良いかもしれないがいずれダメになりそうだ。
「?!痛みがない。」
「お前、治ってる..。」
「っっっ?!」
彼は即座に後ろに飾ってある割れた鏡を見る。
途端に彼の目は潤いを帯び始め、ラウトにこう告げた。
「....ありがとうっ。」
「...いいんだ。」
「う、うぅっ。ありがとう。」
「いいんだ。」
彼を泣き止ませるのに、10分も経ってしまった。
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その後、バーンは武具を作って欲しいとの依頼に無料でやると答えてくれた。
すると、ラウトが突然あるお願いをした。
「実はもう一人知り合いに防具を欲しがっている奴がいてな、そいつへのプレゼントとして送ってやりたいんだ。」
変なお願いだ。
それを誰に送るんだか。
『誰ですか?』
『ふんっ!..』
?!
「...どんな奴だ?」
「...そいつ女だが実力者だ、俺に並ぶほどの。」
「なるほど。」
実力者?
想い人に実力者っていうのも変だしな。
...まあ、おそらく他の神だろう。
「お金は払う。今は用意出来ないが。」
「...仕方ない。そいつも無料でやろう。」
「ほ、本当か?!」
「よかったなぁラウト。俺たちもそこまでされた事はないぜ。」
「...全くだなゴヴェルノ。」
「...ありがとうな。」
「いいんだ。これも縁だからな。」
「はっっはは。よかったな、ラウト。」
「ああ。」
..まてよ。
おかしい。
ここは不気味な部屋だ。
ここで笑ったら、おそらく誰もが怖いと思う筈だ。
なのに、なのに。
その笑いで、暖かい雰囲気が生まれている。
愉快な気分だ。
これが、ガルガンチュアが傷を治したから起こった事なのか?
こいつが神だからか?
そうだとしてもまだ神というのはバレていない筈だ。
そんな事で人間は喜ぶのか?
おかしい。
こんな概念は魔物に無い。
そもそも何故暖かいと思ったんだろうか?
昔はそうは思わなかった。
何故だろう。
ん?
もしかして、これが?
これが“人間”?
そうか!
私は今、“個己炉”を発動している。
使い方がどうしてもわからなかったから、常に発動させて用途がわかるまで使っていた。
因みに感属感知とは、感情を感知できるようになるアビディティーだった。
その次のアビディティー、感属創造とは感情が逆に出せるようになった。
個己炉は、感情が論理的思考と結び付くようになった。
…一つの仮説が思い浮かび上がる。
人間が持つ創造思考とは、個己炉の進化系だ。
恐らく、思考が行動へと直結する様になるのだろう。
即ち感情こそが、創造思考の正体であり、人間の強みでもあるのだ。
それを手に入れるには…。
何かを体験するしかないのか。
どうすればその体験をできるか。
一番いいのは、人間になる事だが…。
[“音の特性”の演算と解析が完了。]
やっと終わったか。
[結果を虚空間内で表示しますか?]
......見よう。
遅くなりました!
最近頻度が不安定ですが、引きづずき頑張ります!
いつもご愛読頂き、ありがとうございます!
このまま引き続き次話も楽しみにしていてくださいね!
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