14.人間
神とは?....
「..ちょっとは遊べる様になったか?」
「くっ。まだお前の足元に及ばないとは。」
「わかってるじゃねえか。」
「....何故毎回口調が変わっているんだ?」
「さあな。ただ感覚が変わってきてるだけじゃないか?」
「ああ、真核を研究してきたからな。」
「こちらとしても、コミュニケーションが楽だ。」
これは仮説、というより妄想だが、真核には周波数がある。
それが高ければ高いほど、物質やエネルギーに干渉する力は大きくなるが周波数が低いものに対しては真核がかなり干渉しにくくなるという。
幽霊や未確認生命体というのは、そういった真核の種類の違いから観測が難しいのかもしれない。
現在、観測できているのはあちらが周波数を合わせようとしてるからだとも考えられるが、どうなのだろうか。
俺の妄想が一つ、現実味を帯びた瞬間だった。
そこで俺はある質問をする。
「お前は誰だ?」
「二回目の質問か。あ、教えてなかったな。」
「俺は神、エーテルだ。」
「お前はなんの神なんだ。」
「さあな。強いていうなら、‘次元’か。」
「...神とはなんだ?」
「あ?なんだよ。教えてやってもいいが、それを知ったところで別に神になれる訳じゃあない。」
「ああ、それでもいい。」
次の瞬間、次元の神と名乗るそいつはとんでもない事を口にした。
「神とは、真核を直接感知できる、その上で創造思考を持つ魔物の事だ。」
「......っ、」
「まあ無理もねえ。今まで憎んできた存在だからな。」
「...嘘だ」
「いや、嘘じゃねえ。元をいえば人間だって魔物だ。」
「?!なんだと...!」
「..そこからは教えられねえ。時間がない。」
「....っちっ、どうしていつも気になる瞬間に。」
「ふんっ、知らねえよ。だがな、お前は俺を越えられる。」
「....どういう事だ?」
「俺は、元人間だ。」
その言葉を最後に、意識と視界が暗転する。
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結局、真核は周波数についての話は出来なかったが、別の事がわかった。
神のなり方。
信じ難いが、奴の底知れない実力を肌で感じてしまった。
これは信じるしかない。
神は、伝承や伝説において色々な描かれ方をしている。
この世を作った者。
この世のバランスを保つ者。
この世を裏で支配する者。
しかし、これらはある共通している部分がある。
別世界からやってきた事、そして神が特別な力を持っている事。
今わかった事を組み合わせてみると、おそらく神は真核をなんらかの理由で感知したり操作したりできる存在なのかもしれない。
そして神になった時点で違う世界に行くのも、真核に周波数があるの妄想と繋がるかもしれない。
妄想が仮説に変わった瞬間だった。
「....んっ。」
「あ、起きたおきた。」
「先輩、起きるの遅いっすよーー。」
「まあまあ、いいだろそんなこと言わんくても、ザック。」
「ダン!やったおきたぁー!」
目を開けると仲間が戻ってきてた様だった。
「悪かった。俺にはたまにこういう時がある。」
「まあいいっすけど、魔物とかいる際にそうなったらおしまいですよー。」
「そうだな...その時はお前らに頼む。」
「ええー、めんどっ、っいってええ!」
「めんどいって言おうとしたな?」
「ひぇえええええなんでもありませええんんサヴォイ殿お!」
「「あっはははははあ!」」
よかった、異常はない様だ。
しかし夜になってしまった。
星は綺麗だが、周りは危険だ。
そのため、結界がはってある。
少し寒いが、焚き火でなんとかなりそうだった。
周りにはサヴォイが刈り取ってくれたのか、木が沢山散乱していた。
火の薪もそれを使ってるのだろう。
ザックの杖の力で、炎が一定の温度になっている。
ベッカもそれで料理を作ってくれていた。
いつも思うがみんなは気配りができる。
ほんとに頼もしい。
「ありがとうな。」
「「「えっ」」」
「...?」
何が疑問なのだろうか?
たしかに俺自身普段礼はあまり言わないが、そこまで気にしているのか?
「あ、あの師匠が...」
「ありがとうを...?!」
「まただぁー、今日ダンテンションおかしいよーー。」
「そうだったか?」
「もーー師匠ってそーいうところがあるから。」
みななぜ俺を避けてそんなことを話すのか。
聞こえてるのに。
そう思ってると、ザックが声かけてきた。
「うんうん。今日師匠おかしいっすよー。なんか悪い夢でもみたんっすか?」
「ああ、まあ悪い夢といえば悪い夢だったな。」
「おー、どんな夢ですか?」
あいつの事は言わないでおこう。
ここは一つ冗談を言っておくか。
「お前が敬語になっている夢だ。」
「あああっっはははは、師匠。僕が敬語になるとでも??」
「ふむ.....少なくとも俺はそうなってほしいと思うぞ」
「うぇ?!そうなの?!?!」
「冗談だ。そのままでいいぞ。」
「し、師匠...!!!」
「うゎっ、おい、離せ!」
「いやああだあ、本気でそう思ってるかと思ったじゃないっすかああ!」
人間はこういう所がいい。
いつも思う。
周りと話をしたり、冗談を言ったり、それに一喜一憂したり。
魔物や他の生き物では出来ない事だ。
俺は、人間を守りたいと改めて思う。
「...。」
「どうしたのダン?」
「いや..なんでもない。」
「ふーん。」
人といるのは楽しい。
いるだけでもだ。
人の事をたくさん考えれるから、そしてそれが楽しいからだ。
「....。」
「スープあげるーー。ゆっくり食べてね!」
「おー。いただこう。」
そういうベッカはほっかほかのきのこスープを俺に渡してきた。
渡してきた時の笑顔は、この世には素敵な事しかないと言わんばかりの満面の笑みだった。
だが、この世界はかなり理不尽だ。
いくら笑顔でいても、幸せでも、魔物にやられるかもしれない事がある。
感情を知る者に自ら安息の瞬間を味わう事が難しいのだ。
だから、その要因となる魔物は倒すべきなのだ。
少なくともそう思ってる。
今考えるとなんで父の話を聞いた時にあんなに勇者になるとか言ったのだろうか。
ああ、あいつの力なのか。
なるほど。
そういうのはあいつの所為なのかもしれないな。
スープを食べ終わった俺は、木で出来たコップをそのまま炎に入れた。
ちなみにだが俺たちは自給自足だ。
食べ物や道具は、出来る限り自分達で一からなんとかしている。
政策によって優遇はされるが、基本はそう言う事に頼らないように自分で心がけている。
「みんなーー、もーねましょー」
「うん、そうっすねえー。」
「見張りは私がしておくぞ。」
「ありがとうサヴォイさん!」
「おー、サヴォイ珍しいーっすね。」
「今日は上機嫌だからな。」
「ふふふ。」
そういうと、俺とザックとベッカは寝床を作って用意をする。
その上で武器の点検をして、念のために自分の近くに置いていき、寝袋に入る。
「たっっはああああーー、今日は疲れたなー。」
「今日は一匹も討伐できませんでしたね〜。」
「あ!やっぱベッちゃんも?」
「うんうん!」
「そうだったのか?」
「そうなの!まあダンには絶対魔物は寄って来ないでしょうけどねー。」
「なんだよその言い方は。」
「ふふふ。」
「師匠の強さが異常なんっすよ!もはや超えられない奴なんていないんじゃないですか?」
「いや、どうかな。」
「いやいやいやー、少なくともこの世にはいませんよー」
「うんうん、師匠より強い魔物とかいたらそれこそ神の領域行っちゃってますよー。」
「はっっはは、たしかにな。」
「やばい顔してるっすよ師匠!」
「そうか?」
「え、そんな顔で言われても...」
「まあ、いいか。」
そんな風に話したあと、そのまま寝落ちした。
そして、朝。
聖粛者ゾルダが死んだという噂を聞いた。
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