13.調停者
ダンケルクの真の二つ名とは....
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気が付けば、あの場所だ。
体には火傷はない。
三つ目が語りかける。
そいつに久々に会って湧いた感情は、怒りだ。
[久しぶりだな。]
「なんでこんなことしやがる!」
[フフフフフ。]
突如、目が一つの点に引き込まれ消えた。
刹那、人が現れた。
「やるじゃないか。」
「だっ、誰だ!」
「ああ、俺か。俺は神だ。」
「神?」
「そうだ。まだ貴様は理解し難いだろうがな。」
「どういう事なんだ。」
「今はまだいい。」
「ちっ...それよりなんの用なんだ。」
そいつが片手をあげ、スナップをする。
するとそいつの後ろに背景が現れる。
そこには魔物と戦う俺がいた。
ワンパンで倒していた。
ちなみにその頃には不思議とさっきまでの怒りが全て消えていた。
おそらく幻術か何かだろうが、解除は無理だ。
「貴様にはやらなければいけない使命がある。」
「.....」
「とは言っても今まで通りにやればいい。魔物を倒せ。」
「....あぁ、わかった。だがそれをして何になる。」
「貴様の力でこの世の中のパワーバランスをコントロールするのだよ。今では真核も使えるだろうに。」
「??どういう事だ。」
「....まさか貴様、今自分が世界でどういう立ち位置にいるのかわからんのか?」
「え?..」
「はあ、貴様は今この世界において最高峰の立ち位置にいるのだ。」
「...っはあ?待て待て待て。意味がわからない。」
「..まあそれはどうでもいい。とにかく、世界のバランスを維持する為には魔物を狩るのは必要不可欠だ。その為にお前は活動すれば良い。」
正直どうすればいいか迷ったが、ここは此奴の言葉に従う事に決めた。
というより、こいつにまた何かされるのは嫌だというのが大きいが。
「....。わかった。お前がいうのならそれでいいかもな。」
「ふっ、それで良い。」
俺が光り始める。
つま先から光が強くなり、消え始めた。
だんだん上へ上がってくる。
「。。」
「面白い。魔王か勇者か。ははっ..」
「?なんの事だ?」
「いや、なんでもない。」
「そうか。....最後にもうひとついいか。」
「?ああ。いいだろう。」
「真核とは?」
「....魔法の元、そして魂や意志といった別名がある。それを真核と呼ぶ。あとは自分で研究しろ。」
「わかった。」
俺は消えた。
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「ぉぉーぃ、ぉぉーい」
気がつくと仲間の顔があった。
その野性味溢れる顔は、俺が勇者へ弟子入りした時の勇者を紹介してくれたギグという聖粛者だ。
強さもあり、頭のきれる男だ。
「...お、起きた。」
「....あ、ああ。おはようございます。」
「なんだよー、俺たちの仲だろう?もっとフランクに行こうぜ。」
「あ、そうだった。」
「おう。」
それから、俺を見つけた経緯を聞いた。
大きな爆発があったのを通りがかりにみたそうだ。
その炎は黄色く、毒毒しかったそうだ。
そして次の瞬間、異常な速度で元に戻ったらしい。
何かあるなと思い、言ってみると俺が倒れていたそうだ。
緊急時用に用意していた魔力測定器で魔力を測ったら、ゼロだったらしく慌てて自分の魔力を装置経由で俺に送り一命を取り止めたそうだ。
「いやあー、正直助かるかわからなかった。」
「あ、あぁ。そうか。」
「おかしなことに回復出来てた。魔力が完全にきれると死ぬ筈なのに。」
「まじか。」
きっとあいつのせいだ。
だが言わないようにしておく。
「こんな不思議...いや、お前ならありえるな。それに回復薬を余計に使わなくてよかったしな。」
「あ、おう、まあな。」
「それより珍しいな。そもそも魔力切れになるほど苦戦するとは。」
「....」
「まあ、ゆっくり休め。ミッションは失敗し..」
「いや、ギリギリ達成した。」
「おーー。それは不幸中の幸いだな。んでその任務っていうのは...」
「妖狐族の殲滅。」
「.......っっは??」
「あとついでに猫又族もだ。」
「.......お前、よく無事だった。勇者でさえ普通に勝てる相手でないのに、。」
「ああ、ここばかりは、強すぎる力に救われたよ...だが討伐部位が残ってないからな。」
「まあ、あの爆発は見りゃあわかる。今いるどの魔王より強い攻撃だった。その跡地があるだけで充分な証拠になるだろう。」
「お、おう。」
「....そういえば、魔力切れかけてよく無傷だったな。」
「え?無傷!?」
「ああ、無傷だった。」
そもそも妖狐族は普通レベルでも魔王に匹敵する力を持つ魔物だ。
それを殲滅させた上に同レベルの猫又族も追加だ。
事実、俺は最後の最後に油断して大火傷を負った。
魔力も尽きていたので回復も出来ない。
なのに、回復している。
三つ目の仕業だろうか。
そう思いながら、俺とギグは他愛もない会話をした。
俺はその後、ギグと一緒に冒険者ギルドへ行き、妖狐族と猫又族の討伐完了を報告した。
この日、世界の歴史に俺の名前が刻まれた。
そしてこの日から、人間がこの世の中の主権を握り始めた。
ちなみに魔術師はいつまで経ってもギルドに帰って来なかった。
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時は流れ、3年前。
世の中は人間が台頭し、魔物への報復をすべき時代へ突入した。
俺は‘最強勇者’の名のもとに、今日も魔物を駆逐していく。
勇者の中でも圧倒的な地位を獲得した俺は、しばらくの時間を真核の研究に使った。
その結果、魔力と真核は厳密には違う事がわかった。
皆にも教えるべきかと思ったが、それは無理そうだった。
真核の存在をその場で証明が出来ないのだ。
信じてもらえるわけがない。
その他にも、一部の王政を廃止させて共和政にしたり、かなりの政治案件をこなしたり、みんなに技を教えたり。
ゾルダという聖粛者は強かったので、直に技を教えてた。
その技についての真核の研究も少しした。
まあ、そんなこんなで4年が経つ。
現在。
する事がない!!!
どうすればいい!!!
真核の研究はそこから行き詰まり、政治なども得意な友達に任せてしまった。
仕方ないので何か教えようと思ったが、周りのレベルが違い過ぎる。
教えるに教えられる事がないのだ。
それに俺は25だ!
まだ動ける。馬鹿にしないでくれと思いたいところだ。
仕方ないので仲間と一緒に魔物を探して世界を旅しているが、少し退屈だ。
何しろ強い魔物がいないからな。
これも仕方ないのだが。
とりあえず最近は自分に縛りを課して魔物を倒している。
ちなみに、妖狐族や猫又族のように集落を作り生活する魔物はかなり見つけにくい。
知性があるからなのか結界をはり、見つからないようにする事が多いのだ。
妖狐族が見つけられたのは、俺が猫又族の擬態を見破った上に猫又族が妖狐族と強い繋がりをもっていたからだ。
最近少し疲れているな。
何かだるい。
少し、休むか。
「なあベッカ、少し疲れた。休んでいいか?」
「ええー、もうちょっとで着くのに...」
「まあまあ。いいだろ?」
「わかったヨゥー。」
「ありがとうな。」
「う、うん。みんなに伝えとく??」
「あぁ、そうしてもらえる助かる。」
「おっけー。あっ、ダン?」
急に睡魔に襲われた俺はその場に倒れた。
視界が暗くフェードアウトしてく。
この感じは.....
気がつくと、暗闇の空間の中にいた。
足音が不気味に響く。
振り向くと、いつしか見たあの顔がいた。
「よお、久しぶりと思ったら結構強くなっているじゃねえか。」
「......三つ目か。」
ここで初めて気付く。
こいつは、遥か高みにいた事に。
こいつには絶対に敵わない。
一生かけても、多分駄目だ。
こいつは強い。
次元が違う。
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