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10.議論

果たしてミダラとガルガンチュアはどうなるのだろうか。




朝。

都市部だと言うのに、鳥のさえずりが心地よくこだましている。

適度に建物があり木があり、自然と生活が調和している。

それがサブが住む冒険者の居住区だ。


冒険者の朝は早い。

朝6時、起床してご飯を食べる。

朝7時、ストレッチやトレーニングを一時間。

朝8時、武具や薬品の点検。

30分後、ここでやっと家を出る。


ローによると、これがいつも通りらしい。

しかし、ロー自身には変化が起きていた。


ローが朝起きた瞬間、ガルガンチュアに謝ってきたのだ。

流石に敬語とまでとはいかなかったが、受ける印象が大違いだ。


一目見ただけでわかる上品な品格、言葉の端々から感じる知性。

昨日の印象の所為か、余計によく見えてしまう。


サブ曰く、酒がぬけるとこうなると。

元々ローは酒を飲まない限りはかなり真面目な人らしい。

最早(もはや)、自分からも飲まなくなるという。

酒を一滴口に入った瞬間からその印象は消えるらしいが。


そんな無駄話をしながらギルドへ着いた。


「よし、ついた。」

「さっそく中へ入るか。」


中へ入ると、皆忙しそうに動いていた。

朝は大規模な討伐準備などがある日があるがそれが今日だということだ。

この時ガルガンチュアが、眠る受付嬢(想い人)リアのところをチラチラみていたのは内緒であ..


「お。どうした?ラウト」

「あ、あぁなんでもない。」

「いや、今の眼は…まあいいか。」

「??」


残念、なんとサブに突っ込まれてしまった。

自業自得。

バレたなこれは。

だがローにはバレていないようだ。


少し微妙な空気の中でVIPフロアに入るとすでに他のメンツは集まっていたようだ。

先に来ていた。


そのまま奥の扉を開け、入る。

各々が席へ座ったところで、ローが発言した。


「みんな、昨日はすまなかった。俺は酔うとああいう風(面白黒人冒険者)になってしまう。なのでもし酒場に俺がいるときは、絶対俺に酒を呑ませないようにしてくれ。」

「うわ、まさかみんなにいうとは。」

「ゴヴェルノ。いじりはそれくらいにしておけ。」

「それよりも、これからこいつら新入りをどうするかが先だろ?」

「っておい、論点ずらすな!ローなんとか言ってやれ!」

「ああ、サブの言う通りだな。」

「おう。ってお前いいのかよそれで?!」

「..それで私が考えた案だが、ラウトをチームに入れて他のみんなは何処か別のパーティーの補助をしていった方がいいと思う。」


「?」

「ああ、そうだな。まあ正直こいつには驚きだが。」

「なあ、そもそもなにを議論してるんだ?」

「ああ、そういえばラウトだけには教えてなかったな。すまない。」

「どうしてだ。」


ガルガンチュアの疑問にサブが投げやりかつ察しろと言わんばかりの声で答えた。


「酔ってたからだ!」

「あーー.....」

「それでだ。そもそもなにを話ているかというと、俺らのパーティーに入れる奴を誰にするかという事だ。」

「そんなのがあるのか。」

「ああ、ローのせいで同じレベルでパーティーに入ろうとする奴はゼロ。新人も一緒に酒飲めばローの噂を教え込まれちまう。だから、こういう時は一週間以内に入ってきた新入りをこのパーティーに入れようって話だ。」

「なるほど。」


「お前を選んだ理由は単純に強いからだ。正直、ランクが弱い奴は討伐の依頼の時に直ぐに死ぬからな。最低でも討伐はランクCからだ。」

「まあ、サブは齒威十(バイト)があるから、ランクEの時から魔物倒してったって言うじゃん。」

「まあな。」

「..それで俺はあんたらのチームに入ればいいのか?」


ガルガンチュアの質問にゴヴェルノが答える。


「お願いしまっす。入ってくれ。」


『いいのか?入って。』

『いいですよ。むしろラッキーですね。』


ここで強いチームに入ればいい感じにラウトという状態での真核量、魔力量上げもより効率的にできる。

そうすればその先のSSランクの報酬への近道ができるからだ。


「じゃあ、わかった。入るぞ。」

「おー!ありがとうな!」

「本当にありがとう。」

「うんうん。」


三人が何故か嬉しそうな顔をしている。

不意に質問をするガルガンチュア。


「そもそもパーティーを組む時は何か条件があるのか?」

「あ、ああ〜ないぞ特に。」

「三人以上で一体魔物が倒せたら討伐パーティーは組める。けどそれ以外のことが目的のパーティーもあるし、まあ色々だ。」

「へー、少ないな。」

「だろ?ちょいとおかしいよな。」

「ああ。」


「まあそれより、残りの4人だ。ゴヴェルノ、何か意見は?」

「特にナシ、というよりそういうのはサブに聞け。」

「ああ、お前らは装備だな。新入り、覚えておけ。装備がよくなけりゃあ誰にも信用されねえぞ。もし金がないんだったらボランティアでもして金を稼げ。..こういう感じだ。」


そろそろ他の新入りが可愛そうな気がした。

そう、そもそもローやサブやゴヴェルノは強さの桁が違うのだ。

三人はあまり気にしていないようだが、私達以外の4人はびびっているのだ。

それ以外にも、他の新入りとも初対面。

故にあまり発言もせず、ほぼ勝手に進む形になってしまった。

もちろん弱ければ発言権も弱いのは確かだが。

だから...まあいいか。


「らしい。まあ、こんな感じで終わりだ。みんな長い時間拘束して悪かった。」

「あっ、あのぉー。」

「ん?」


このタイミングでやっとまともに口を開いたのは、パーティー入らない新入り組の中の最高ランク値のランクEという元魔術師のサゼルだった。


「ええと、誰かランクもそこそこ強くて一緒にいてくれ人、知ってますか?」

「あー、それは自分で声をかけていけよ。大抵店のカウンターに座ってる奴は一匹狼かパーティー追い出された奴だ。そいつらに声かければなんとかなる。」

「わ、わかりました!」

「おう。ちなみにパーティーはそこにいる全員だけで組めよ、相性がいいからな。」

「は、はい。」


こうして、新入り組は帰っていった。

彼らは帰るころには気が軽くなって、やっと普通に喋れるようになっていた。

彼らは仲良くやっていけると思う。


彼らの後ろ姿を見てると、少し胸が痛くなった。

何故か楽しそうな感じが、昔の自分達みたいに感じたからだ。


カガリ、メロウ、クイン。

あの時は本当に楽しかった。

みんな私の下手な冗談に付き合ってくれたり、親に悪戯したり、悪知恵を教えあったりした。

それを思い出すと、また人間が憎らしくなる。


だがそれと同時に、全ての人に復讐するのはダメなのだと思った。

この笑顔は、あの時の私達の笑顔と全く変わらないものだったと気付かされたからだ。


もし昔の自分だったら、余計に怒り、ただの馬鹿の様に暴れだした頃だろう。


でも、今は違う。

時間がある程度怒りを緩和させたり、一人で寂しかったというのもあるが、人に会った事で考え方が変わったのだ。


ガルガンチュアは人ではないが、見た目が人だったが故にどうしても人と考えてしまう。

でもそう考えても、意外といいやつなんじゃないかと思えた。


出会った人は個性豊かで面白く、優しかった。

ヒューズにはじめ、受付嬢のリア、冒険者のローやサブ、ゴヴェルノ。


そして、少し冷静に考えてみた。

もし立場が逆だったら。

恐らく同じ様な事を考え、同じ様な感情を感じていたのだろう。


..どうしてだろうか。

何故こんなに変わったんだろうか。

たった5人と話しただけなのに。

ガルガンチュアも含めれば六人だが。


「じゃあ、改めてよろしくだな。」

「あ、あぁ。」


ローの呼びかけにガルガンチュアが答える。

みんなが微笑んだ。


そうか、私も友達がいるんだ。

すでにいないと思っていたけど、いるんだ。

一人じゃないんだ。


私も微笑んでしまった。


「狐も喜んでるぞ。」

「かわいいやつだな。」

「実は強いかもしれないぞ?俺が捕獲に手間取ったんだから。」

「そりゃあ、参ったなあ。」

「「「ああっはあっはあっはあああ!」」」


不思議だ。

何かが目覚めた。

この感覚は….



ピッと一件の通知、ゲゼルシャフトからだ。


[アビディティー“感属感知”を獲得。]


どうやら新たなアビディティーが手に入ったようだった。




いかがでしたでしょうか?

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いつも読んでくれている方々、いつも励みになっています!

本当にありがとうございます。

是非、知り合いや友達、SNSへ拡散しちゃってください!


次回もお楽しみに!

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