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4.いつかまた会う日まで


「ねえ、ストレンジ、僕も星のサーカスに行ってみたいな、お願い連れて行って!」

 ネイムは期待を込めてストレンジにお願いをしてみましたが、ストレンジは少し残念そうな顔をして首を横に振りました。


「ごめんよ。実は、星のサーカスは普通の人間では観に行けない決まりなんだ、こればかりは僕にもどうしようもなくてね……」

「ええ? そうなんだ……」


 それを聞いたネイムは星のサーカスを観に行けないことが残念でなりませんでした。


「でも、いつかは観れる日が来るかもしれないよ?」

「本当?」

「本当さ!」

「いつ? いつになったら僕も星のサーカスを観に行けるの!?」


 ネイムは期待に胸を膨らませつつ、ストレンジにいつになったら観に行ける様になるのかとせがみました。そんなネイムのあまりの熱心さに、ストレンジは苦笑いしつつもネイムの頭に手を乗せて優しく撫でながら語りかけます。


「そうだね……、君はこれからの人生で様々なことを学んだり経験すると思うんだ、それは自分で選んだり誰かに助けられたりね。そしていつか君は立派な大人になって、もう人生は満足した、もう大丈夫と思った時には、僕たち星のサーカスは君の前に現れるよ」

「本当?」

「本当さ! その時には君は、お客として来るのか、新しいサーカスの団員として来るのかは分からないけどね」


「勿論、それは君次第さ!」とストレンジは軽くウインクしながらネイムの問いに笑顔で答えました。

 更に、このクラウンは星のサーカスを観に行けない少年の為に、少し自分の芸を披露してあげることにしました。



 ネイムとストレンジが出会ってから、どの位の時間が経ったのでしょう。

 満月の光はくまなく2人を照らし出し、更には2人の上で綺麗に輝いていた星星の輝きは、より一層に眩しくなりました。その光景を見たストレンジは1度だけ空に頷くと、再びネイムを見下ろしました。



「おっと、僕もそろそろサーカスに帰らないといけない時間だ、名残り惜しいけど君ともお別れだ」

「そうなんだ……、ねえ、いつかまた会える、かな?」

「うん、いつかきっと君とまた会える! 約束するよ」


 少し寂しそうにしているネイムの顔を見たストレンジは笑顔で答えます。


「そうだ、君に良い物をあげよう、僕からのプレゼントさ」


「ちょっと待ってね」そう言うとストレンジは「これかな? あっ、いやこっちかな?」と自分のズボンのポケットの中をゴソゴソと探り出しました。そうしてポケットの中から何かを手に取ると、ネイムに向かって自分の手にある物を差し出してきたのです。


「これは?」

「これは勇気が出るブレスレットさ、君が勇気を出したい時には、このブレスレットを身に付けると良い、そして君がいつかは必要が無くなって、これを身に付けなくなった時には、君は立派な大人になっているだろうね」


 手を差し出したストレンジの手の平には、白いブレスレットがありました。ネイムは本当に貰って良いのか悩みましたが「ぜひ君に受け取って欲しい」とストレンジが言うので受け取ることにしました。


 

 ネイムが受け取ったブレスレットは、星星の輝きに負けてない程に白くキラキラと輝きを放っており、ネイムはその輝きを暫らくは見ていたいと思いましたが、すぐにブレスレットを大事にズボンのポケットにしまうとストレンジに笑顔を向けました。


「ストレンジ、ありがとう! ブレスレット、大切にするよ! 僕も頑張って皆の前でジャグリングを披露出来るように頑張るよ!」


 その言葉を聞いたストレンジは、とっても嬉しそうに頷きました。



「じゃあ、本当にこれでお別れの時だね。では、ネイム、また会える時までご機嫌よう!」



 そう言うとストレンジの周囲は光に包まれていき、ネイムはあまりの眩しさに目を閉じてしまいました。次にネイムが目を開いた時には、ストレンジはもう居らず、そればかりか辺りは既に明るくなっており、いつの間にか朝を迎えていたのです。


 さっきまでのことは夢だったのか、急な事に呆然としてしまいましたが、朝になると皆が起きてしまうと思い慌てて家に帰ることにしました。


 もちろん家に帰ると、ネイムはお父さんとお母さん、おばあさんにまで、今までどこに居たのかと凄く怒られてしまいました。ネイムもすっかり反省しきって俯いてしまいましたが、ふとズボンのポケットに何か違和感があるので手でまさぐってみることにしました。

 

 すると、なんとポケットにはあの時の白いブレスレットがあったのです。ネイムは、ビックリしながらも、あれは夢じゃなかったんだと思い、怒られている間もニコニコと嬉しそうな顔をしてしまいました。

 これには、流石に怒っていた家族も顔を見合わせ、何故ネイムは怒られているのに、そんな笑顔をしているのかと不思議そうにしていました。



 それから数日が経ち、まだ余寒が残る祭りの当日、街は春の訪れを祝福しながら沢山の人達で大賑わいでした。

 勿論、街の広場での舞台も、学校の上級生達による演劇や、自身で作った詩を詠う等、様々な発表で大盛り上りです。

 舞台裏では、次の発表を今か今かと緊張した面持ちで待つ生徒達や、自分の発表が終わり一息付いている生徒達でひしめいていました。


 ネイムも次は自分の番の発表だと少しだけ緊張していました、そんなネイムのもとに先生が駆け寄って来ます。


「ネイム? 本当に大丈夫なのか?」


 先生は心配して顔をしかめますが、そんな心配そうな顔をした先生にネイムは笑って、

「先生、大丈夫! 僕だってやってみせるよ!」

 と笑顔で答えました。


 ネイムは、ストレンジとの出会いの後、学友達の前でもジャグリングの練習を沢山していました。

 最初は、失敗を繰り返して上手く出来ませんでしたが、段々と皆の視線も気にならなくなり、上手くジャグリングを続けることが出来たのです。


 勿論、沢山の練習をしたからといって、人前に出る怖さが全くなくなった訳ではありません。

 それでも、ネイムにとってこの舞台は自分の弱さを克服する良い機会だと改めて思いました。だからこそ、今まで練習してきたことを自信を持って舞台で発表すれば良い、そう思うことで前を向くことが出来るのです。 


 先生は、ネイムのそんな自信がある姿を見て感心しながら「そうか、頑張れよ」と励ましました。

 また同じく以前とは違って、自信のあるネイムの姿を見た学友達も次々に駆け寄って来て、口々に、

「ネイム! 頑張れよ!」

「諦めるなよ!」

「お前なら出来るよ!」

 と励ましていきます。


 学友達に励まされたネイムは、1度だけ深呼吸をすると決意を固めて舞台への階段を登り出しました。


「次の発表は今年、上級生になったネイム・トリファー君です!」

「はい! 今から僕は皆さんの前でジャグリングを披露します!」


 ワーと観客から大きな声援が上がりました。大勢の観客の視線がネイムに集中しています。

 しかし舞台に登ったネイムは、臆することなく自信に満ち溢れていました。


――ありがとう、ストレンジ。僕は諦めずに頑張るよ。そしていつか立派な大人になる。


 

 そう心で思いながら、ボールを今から投げようとする少年の腕には、あのクラウンが渡してくれた白いブレスレットがキラキラと輝いているのでした。


これにて完結です。

読んで頂き、ありがとうございました。

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