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1、少年ネイム

見やすいように分割して掲載することにしました。

宜しくお願いします。

 ラム大陸の南西に位置するコウヤ平野の近くには、ソルムという街がありました。


 ソルムの街では毎年、春の季節が近付くと実りの訪れへの感謝を捧げる春祭りが開催されるのでした。

 その春祭りの目玉の1つが街の広場で行われる学校の上級生達による舞台での発表会です。舞台の発表会は、個人で披露したり、または希望すれば団体で披露したりと、上級生達も思い思いに舞台で自分達が頑張ってきたことを披露していこうと盛り上がっていました。


 そんな学生の中に、今年から上級生になったネイムは去年の春祭りで観たサーカスに憧れてジャグリングを発表会で披露しようと考えていました。その為に、ネイムは家で空いてる時間を見付けてはジャグリングの練習を欠かしていませんでした。


 ただ、そんな頑張り屋の彼にも気になることがあったのです。

 それは、大勢の人の前で何かをしようとすると、どうしても緊張してしまい、思ったように動けなくなってしまうことがありました。これは学友達の前でもそうです。ネイムは、大勢の学友達の前でジャグリングを披露しようとしても、皆の視線がどうしても気になって、ボールを思うように拾えなくなってしまい、なかなか上手く続かなかったのでした。


 これには最初は失敗を笑っていた学友達も次第に心配するようになり、様子を見守っていた先生までもが口を出すようになってしまいました。


「ネイム、それで舞台での発表は出来るのか?」

 

 学友達も先生も心配して聞いてきますが、ネイムにとっては、それがとても嫌で恥ずかしさもあって、耳まで顔を真っ赤にしてしまいます。


「大丈夫だよ! 発表会では、ちゃんと出来るよ!」


 恥ずかしさで居た堪れなくなったネイムは、つい声を荒げてしまうのでした。これでは心配して聞いていた先生も学友達も、それ以上は何も言えなくなってしまいます。

 

 

 太陽が傾き空を真っ赤に染め始める夕方の時間、ネイムは学校が終わり家に帰ってきても、今日の学校でのことが気になってしまい家でのジャグリングの練習はしていませんでした。

 そんな様子のネイムを家族は不思議に思いましたが、とはいえ詳しくは聞こうとしませんでした。


 それから暫くの時が経ち、月明かりに照らされた街に静粛が訪れた夜のことです。

 ネイムは自分のベッドで寝ている時も、頭の中で発表会の当日の不安が頭に浮かんできます。


――もし、舞台の発表会で失敗してしまったらどうしよう。もし、失敗して笑われて何も出来なかったらどうしよう


 そんな不安が頭によぎるネイムは、なかなか寝付けずに居ました。

 ネイムは少しして、ベッドから起き上がると台所に行き、気分を変える為に水を飲もうとして、ふと窓を見ました。

 

 窓から見える空は、星星が綺麗に輝きを放ち、黒く染まる空を明るく照らしているかのようでした。

 そのような綺麗な光景にネイムが心を奪われている時です。突然、平野の方が明るくなったかと思うと暗くなり、暫くすると、また明るくなり暗くなっていくのに気が付きました。


「なんだろう? 光ったり暗くなったりしている?」


 ネイムの家は、ソイムの街でも平野側から近い位置にあるので、窓からでも光がはっきりと見てとれます。その為、その光が街からそんなに遠くはないのが分かりました。

 

 ネイムは、窓から見えた光に興味をそそがれて平野の方に行ってみたいと思いましたが、不意にネイムのおばあさんが話す言い伝えを思い出しました。



――星が綺麗な夜の平野には化物が居るよ。だからそんな日には決して外を歩いてはいけないよ。もし言い伝えを守らない悪い子は食べられてしまうからねぇ。


 おばあさんからは小さな頃から、しきりに夜の外には出歩かないようにとキツく言われていました。

 言い伝えの化物の話を最初に聞いた時には、とても怖くて夜も眠れなかったのですが、今となっては昔ながらの言い伝えにすぎないと半分も信じていませんでした。


 言い伝えなんてもう怖くないから夜に出歩いても平気、ネイムはそう思いました。

 

 でも、もしも自分が夜中に家に居ないことが分かったら、家族から怒られてしまう。

 そう考えると言い伝えの化物より怖いものがあります。ですが、好奇心が強いネイムは、どうしても平野の方から放つ光りが気になってしまい、遂に家から飛び出してしまいました。


――出来るだけ早く帰ってきたら大丈夫!


 そう単純に考えながら、ソルムの街から少し離れた平野の方まで走ったネイムは平野に着くと、荒くなった息を整えながら辺りを見渡しました。ですが、ネイムの期待とは裏腹に、家の窓から見えた光などは無く、何の変哲もない夜の暗くなった平野しか見えません。そればかりか、今は月明かりがあるとはいえ、さっき通ってきた道さえも段々と暗く見えなくなってきています。


 それでも諦めきれないネイムは、もう少し先にある小さな丘の方まで行くことにしました。


 とはいえ、丘への道も段々と暗くなり見えにくい、本来なら夜道を照らす為に、カンテラランプを持つべきでしたが、ネイムは急に家から飛び出してしまったこともあり、今更ながら灯りがないことに後悔していました。


 ですが、どうにか丘まで辿り着いたネイムは、周りを見て不思議に思いました。

 何故なら、丘の先を見下ろすと、もう既に辺りはすっかり暗くはなっているはずなのに、不思議とそこだけは灯りで灯されたかのようにほんのりと明るかったのです。

 

 ネイムは目を凝らしてその明るい場所を見ていました。

 そこには大きな岩があり、更に岩から少し離れた平野の真ん中には何かが佇んで居るのが見えたのです。


――あれは何だろう?


 ネイムは一瞬、言い伝えの平野の化物がそこに居るのだと思いギョッとしました。

 ですが、その何かは、全く動く気配もなくて、只そこに立っているだけでした。


―――もしかして、案山子かな?


 こんな平野な場所に1体の案山子が居るのもおかしな話です。

 もしかすると、誰かが悪戯で置いたのかもしれないですが、こんな人通りのない平野に置いていても誰も気付かないのでは、とネイムは不思議に思いました。


 あんな案山子は気にしなければ良い。

 そう考えれば安全かもしれないですが、好奇心の強いこの少年にとっては、何故こんな場所に案山子が置いてあるのかと気になって仕方ありません。結局ネイムは好奇心に負けてしまい、丘から先に行き近くまで寄ってみることにしました。


 もしかすると、今もあの案山子を置いた誰かが近くに居るのかもしれない、そう考えたネイムは居るのかも分からない誰かに気を付けながら、ゆっくりと案山子の方まで近付いていきました。



読んで頂き、ありがとうございました。

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