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逃げるそれは最強の行動  作者: 勝唯
8/12

4走目 身体能力値測定 後編

「えっと、マリ様はこちらの台に乗って頂くだけで良いので、後はこちらが全部やりますから」


「は、はい」


 さっきから“は、はい”しか言ってないが何とか会話は成立してそうだ。だがそれだけでも俺からしたらすごい事だった。最初に冒険者登録の事が言えたのが今のところ一番のファインプレーだ。


 言われた通りその台の上に乗ると、なんていったらいいか分からないが、こう、パァァッと蛍光紫色の魔法陣的な何かが台の中心から広がる。魔法陣がどういうものか、そもそも魔法がどういうものかも全然知らない俺からしたら、あっなんか神秘的〜、くらいにしか感じなかったが凄い事なのかな、これ。


 そんなことを考えているとあの受付お姉さんがこの台をすっぽり覆う為のものだろうと、説明されなくても誰でも分かる様な巨大な装置を運んできた。


「じっとそこに立ったままでいて下さいねー」


「は、は…」


 決め台詞が出る間も無く、俺を乗せた台ごとその装置に覆われる。真っ暗な中、台の魔方陣から発せられている蛍光紫色の光を俺の両目が捉える。


「………」


 外で誰かが何か喋っているが、全く聞こえない。しばらく棒立ちしていると台だけだった魔方陣が、周りを覆う装置の方にも展開されていき、装置の中は目を開けれない程に魔方陣の光で覆われた。瞼を閉じても瞼の裏側が紫色に染まるくらい強い光だった。先に言っといてくれ!


 その状態が十秒ちょっと続いたところで、瞼の裏側がフッと真っ黒になった。そーっと目を開けるとちょうど台を覆っていた装置が外され、受付のお姉さんが話しかけてくる。


「お疲れ様でした。マリさんの身体能力のデータが抽出出来ましたので、これにて測定は終了です」


「は、はい」


 決め台詞を吐いた俺は台から降りて、もといた受付の所に戻ってくる。


「データを数値化し、スキル等を見つけ出すには少し時間がかかりますので、明日くらいにもう一度ここを訪れて頂くこととなります」


「は、はい」


「お気をつけて」


 頭を下げる受付のお姉さん。俺はほとんど“は、はい”としか言えないまま冒険者ギルドを後にする。

(さってと、もう日も暮れかけだし、そろそろ野宿三条件満たすとこ探さなきゃなー。でも俺寒空の中コンクリの上で熟睡できる野宿スキル(自称)持ちだし人目につかなきゃ何処でも寝れそうな感じではあるんだけど)


「路地行くか」


 やっぱり俺は路地。ここら辺の北通りの路地は来た事ないがいつもの東通りの路地とも繋がってはいるはずだ。北と東は隣合ってるからな。まあそう言いつつ西と隣り合ってる方の路地に来てるけど。


「ここら辺でいいか」


 と思った俺は適当に人気の無い場所で休むことにした。


 俺はそこで普通に眠れた。


 そして、まだ寒い朝、目が覚めた。眠る前に何人かが俺の前を通ったが、特に誰も気にする様子もなく通り過ぎていった。ここは俺みたいな奴が多いのだろうか。どちらにせよ、悪い絡みがなくて良かった。前の筋肉供みたいな面倒臭い奴らが居たらと、ちょっと心配だったしな。良かった良かった。


 彼は今、盛大なフラグ建築をしたのだが、全く気にしていない様子。果たして回収されるのだろうかこのフラグ。


 俺は昨日言われた通り、能力値測定の結果を貰うべくギルドの方へ向かっていた。人出が多いところまで出てくると、冒険者ギルドの施設が近い為だろうか昨日ギルドの中で見たような屈強な体つきをした冒険者らしい人が目に付いた。その冒険者達のほとんどが何かの紙を持っている。


(なんだあれ?クエストとか言うやつか?)


 そんな風に不思議そうな目で俺が冒険者達を見つめていると、やんのかコラ!とか言われたので即、視線を逸らして人混みに逃げた。冒険者って、皆とは言わずともああいう風な血の気の多い奴らが多いんだろうか。


(怖ぇ…結果貰ったらさっさと出よう…)


 俺は人混みの中、多少肩をぶつけながら足早にギルドへ向かった。










〜おまけ〜

『決め台詞が仇となって』


冒険者A「やんのかコラァ!」


マリ「は、はい…」


冒険者A「や、やんのか!?」


マリ「あ、あ、や、やりませぇぇん!」


この後すっごい逃げた。

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