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逃げるそれは最強の行動  作者: 勝唯
3/12

2走目 判断ミス 後編

あれ?俺TUEEEEEE系じゃないのにこのままじゃそっち路線なんだけど…こりゃまずい。

「ぎゃああああああああ誤解だああああああ許してくれええええええ!」


 俺はそんな感じの間抜けで意味が無い言葉を叫びながら路地を走って二人の男から逃げていく。


「げっへっへ!!アイツなんかいってますぜ兄貴!!」


「そうだなあ!!俺は寛大な心の持ち主だから、さっと打ち首で楽に逝かせてやろう!!」


「流石兄貴ですぜ!」


「どこが寛大なの!?」


 思わず心の中の声が心の中の声でなくなってしまった俺だったが、まだこんなことを言えるくらいには距離にも心にも余裕はあった。理由としては、まあ言うまでも無いがほぼ毎日何かしらから逃げ回っているからだろう。


 そう。俺は、“逃げること”に関しては結構自信があった。


 こんな事ぐらいにしか自信が持てないのは少し恥ずかしいところではあったのだが、何だかんだで勝てない相手からは逃げないと生きていけないこの世界では結構役に立ってる。


 でも今回は別だ。この先が行き止まりになってやがる。


 さあ。俺よ。どうする?俺一人なら逃げれるぞ?行き止まりって言ってもこの狭い路地だ。俺の奥義、“逃げ技”の中の一つ「壁キック」で逃げることができる。


 でもそれじゃ、だめだ。


 俺は今、あの女の子を助けて逃げ果せたい。じゃどうするよ。


 あの二人と闘うか?無理。そういうのは自信を持って言える。無理。


 アジトには先に着くだろうからそこでなんか手に入れて相手の隙を作って逃げるか?いや、俺はその類の事を全くやってこなかったし、そんな器用な事ができるとも思えない。

 多分俺の身体能力を数値化したらとんでもなく偏ってるだろうな。一応、冒険者ギルドと呼ばれる場所ではそういう機械があるらしい。これ逃げれたら、行ってみようか。


 ていうかそもそもアジトにまだ仲間がいるかもしれない。この作戦も無理っぽいな。


 じゃあ俺は何ができる!ーーそう考えた時、脳に直接響くような声が聞こえた。




【逃げろ。全てから。何が何でも。生きるために。】




(ッ!この声、あの子を見捨てろってか!)


 誰かも分かっていない声に一瞬怒りを覚えつつ、彼はふと考えた。いつもこの言葉は、気にしていなかったが、俺はさっきまで、一度たりともこの声の意思(意思があるのかは知らないが)には逆らった事が無かったんじゃないか。それはこの言葉が聞こえてきた時はいつも何かから逃げている時で、いつも心のどこかで逃げる事に肯定的な念があったからだ。


 俺はさっきから違和感を感じていた。


 確かにあの二人からは少しづつ距離は開いていくが、なんかいつもよりちょっと遅い気がする。


 よし。さっきは声に逆らって判断ミスしたからな。乗ってみよう。声の加護とかあったりすんのかな。


 彼が初めて声に、疑いは混じりつつも意識的に肯定の念を向けた時だった。


 その瞬間、彼の走る速度がさっきまでとは比べ物にならないぐらい上がった。


(なんだこれ!?マジで急に足が…)


「なっなんですかいあのスピードは!?」


「ちいぃっ!」


 リーダー格の方が舌打ちを鳴らす。今まででも離されていっていたのに急に速度を上げられ、俺の行動は、彼にはまるで自分がずっと遊ばれていたかのような、そんな風に見えたのだろう。


 声に従った俺はアジトに着く前に人離れしたスピードで二人を突き放し、見えないくらいに距離をとったくらいのところで、奥義、逃げ技の“壁キック”を使って壁を登って建物の上へ。

 そこからその道沿いにちょっと奥へ進むと、流石にこの距離を走ってきたのでアイツらのアジトらしき建物が

 下に確認できた。


(よっしゃ、まずはここから高みの見物だ。どうやら幸運にもアジトらしき建物には他に仲間はいなさそうだし、アイツらが帰ってくるまでここで待つことにしよう)


 俺はさっきの足の速さを利用すればどうにか一人なら、勢いでどうにかなるんじゃないかと思った。あの女の子を捕縛している以上出かけるとしても二人のうちのどちらかが一応見張りとして残る筈だ。


 そしてさっき、まだアイツらとの距離は余裕がありそうだったので、ヒヤヒヤしたがパッと降りてアジトの中を拝見させてもらった。見た限り食料の類が一切無かった。


 ということは、ここで待ち伏せ続ければいつかはどっちかが食料を得る為にここを離れる時が来るだろうと言う事だ!


 最高なのは二人ともでてってくれるという場合なのだが、あり得なくもない。なぜならこんな路地の奥の奥

 のさらに奥みたいなとこに人が来る方がおかしいからだ。ま、そんな都合良く出てってくれる訳もないけどな。


 最悪の場合は…二人が街へ女の子と一緒に行くパターンだが、まあそん時はそん時だ。その時考えよう。

 そんな事を考えている時。下から声が聞こえた。


「全く…なんなんすかねアイツは…」


「まあいいさ。ここからはもう出て行くところだったし、アイツが仲間でも引き連れてもう一度追ってきても

 足はつかねえさ」


(え!?マジで!?出てっちゃうのここ!?…はあ………はいはい分かってますよ最悪のパターンですね知ってます知ってます)


「流石兄貴!そこまで考えていたんですね!」


「いやお前は逆に考えなさすぎだ。今日アイツを追ってたのも災いの芽は全部潰しといた方がいいからって

 だけだしな。それよりも見ろ!上物だぁ……なかなか手に入らねえぞこりゃあぁ……」


 リーダー格の男が誰が見ても生理的嫌悪を抱きそうな顔で女の子を見ている。やばい。やめてくれ…!!お前の顔すげぇ不細工になってるぞ…。


「そうっすね!早速味わって行くとしやすか……」


 やめろ馬鹿子分!!!


 子分が女の子に手を出そうとした瞬間、何かが当たったかのような鈍い音が路地に響く。


「馬鹿か。こんなきたねえ場所、ましてや何も遊び道具がねえところでやる訳ねえだろ!」


 どうやらリーダーが子分を殴ったみたいだ。子分の頭に(あざ)が見えた。拳骨(げんこつ)食らったのか。


「そ、そうっすね、新しい方のアジトに道具は移したんでした。」


 馬鹿子分が痛そうに殴られた頭を抑えながら答える。めっちゃ痛そう。絶対同情はしないけどめっちゃ痛そう。


「それじゃ、明日寝具持ってここを出るぞ」


「了解っす!」


 俺はホッと胸を撫で下ろした。


 それと同時に俺は覚悟を決め、明日、アイツらの移動中を襲うことにする。ついてねえ。

ちなみにアジトは、「サーカスのテントの布が全部汚ったないボロ布になっちゃった」みたいな感じの外装です。分かりにくいですよね。すいません。

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