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盲目の悪役令嬢  作者: 桜木風
2/11

ここは乙女ゲームの世界

お待たせしました…。やっと本編始動です。



初めて婚約者の殿下に挨拶のために会いに行った私は思い出した。




あぁここは、乙女ゲームの世界だったのね…。




婚約者の殿下の姿を見た私は、自分が何の世界に転生したのか理解をしたのだ。



 そこからはあまり覚えていない。おそらく何事もなく挨拶を済ませたと信じておこう。意識がはっきりしたころには自分の部屋で休んでいたので、明日お母様にでも聞くとしようか。



よし、思い出したことを整理しなければ。



 今までも前世のことは覚えていた。だが、このゲームのことまでは今までは思い出せなかった。いや、思い出すきっかけがなかったのというべきか…。自分の20年以上にもわたる人生を振り返るときに誰が特定のゲームの内容を思い出せるというのか。


 しかし、今日私は、殿下の姿を見て完全に思い出した。それは彼が、前世で好きだった数ある乙女ゲームの中でもとくに大好きだったキャラであり、幼少期のスチルが存在するキャラだったからだ。


 彼はある乙女ゲームの攻略対象だった。金髪碧眼にスラッとしたイケメン王子様であるジルベール殿下は、攻略したキャラの中でも好きだったキャラだ。今日会ったのは、6歳というまだまだ幼くあどけない少年であったが、実物は本当にたまらな……と失礼。



 とりあえず、今までも自分の姿をみながらどこか懐かしい気がしていたのはこのせいだったのだろう。私が頑なにドリルにしなかったのもあって思い出せなかった。

 ゲームでのアイリーンはジルベールルートの悪役令嬢だ。自慢のドリルをひっさげた彼女は、甘やかされて育ったことで、我儘な令嬢へと育った。アイリーンは公爵令嬢とだけあってスペックの高いキャラだったが、その分プライドもかなり高い。しかし彼女はできるがゆえに手を抜いてしまうようなキャラだった。

 そんなときに、ぽっと出のヒロインが婚約者の殿下と親しくし、自分よりもできるものだから彼女はことごとくヒロインをいじめる。最終的に学園の卒業式を兼ねたパーティで悪事を断罪され婚約破棄される。なんやかんやで将来は国外追放という使い古した悪役令嬢の最後だ。


 ふぅ……。本当に前世を覚えていたことに感謝しかない。甘やかされてとか身に覚えがありすぎる。

 さすがに女の身一つで国外に追い出されるのは辛すぎる。この国は比較的に安全な国だけれど、一歩外に出ると魔物がひしめく森が多く存在しているのだ。国外追放というのはいわゆる死刑宣告。やりすぎじゃない?と思うけれどそういうストーリーなのだから何も言えまい。


「これは悪役令嬢としてのフラグをおっていかなければいけないわね。」


 幸いにも、私は我儘令嬢には育っていないと思っている。目つきは悪く、子どもの間では怖い氷の令嬢だなどと噂されてはいる…でも、ちゃんとした大人からは優秀だが謙虚だなんだと意外にも好評なのだ。

 自分で言うのもなんだけれど…。


 しかし油断はできない。世界の強制力が存在しているかもしれないということだ。俗に言う運命というものなのだろうか。ゲームではアイリーンが無理を言って婚約するところを、今回は噂を聞いた陛下が婚約を勧めている。婚約者にならないという未来はこの世界にはなかったのだろう。この運命というものがどこまで強力なものなのかによって私の未来は変わる。


 本当なら今すぐにでも婚約者を辞退したいところだが、陛下からの申し込みだから婚約をむげにはできない。その時が来たら素直に身を引こう。普段から話せばわかるという雰囲気でいけばいきなり断罪なんてことにはならないかもしれない。



「あとはやっぱりあの事件よね。」


思い出したことをまとめるために時系列を頭で並べながら呟く。


 あの事件というのはジルベールルートの要ともいう出来事。ゲーム中のイベントではないが、彼とアイリーンの仲を悪化させる原因であり、ヒロインと結ばれるための重要な出来事だ。


 ジルベール殿下の10歳の誕生日パーティーでのこと、なんでかは忘れちゃったけど殿下に向けて雷の魔法が放たれた。アイリーンは近くにいたことで殿下とともに被害に遭い、腕に軽傷を、殿下はアイリーンを庇うため、本当ならよけることができたはずの魔法をもろに受け、片足が焼けるという重傷を負った。 治癒魔法のあるこの世界では、早く対応すれば殿下の足は治っていたはずだった。しかし我儘令嬢のアイリーンが自分が怪我をしたと騒ぎ、殿下の治療が遅れた。治しきれなかった殿下の足には痕が残り、醜く、走ることも難しくなっていた。それを見たアイリーンはその足は呪われていると言ってのけた。

 回想であったためこの程度しかわからないが、ゲームで殿下はかなりアイリーンを嫌悪していた。せっかく守ったというのに礼もなし、さらに傷が残ってしまったのはアイリーンのせいとも言えるのに呪われているとまで言ったのだ。私だって嫌いになる。


 そんなこともあり、殿下は第一王子であり皇太子でもあるのに魔物討伐の際も戦いに出ることもできないと、自分で役立たずのレッテルを張っていた。それを知ったヒロインは殿下がどれほど国民に慕われているかと励まし、悩みの原因である傷を治せないかと治癒魔法の研究を始める。

 こんなに自分のために一生懸命になってくれる人なんて好きにならない方がおかしい。このことをきっかけに2人は急接近する。



 ヒロインのイベントを潰してしまうことになるかもしれないけど、この事件はアイリーンにとっては起こってほしくない。断罪される中でも重要な事件だったからだ。



「…それに個人的にも、彼にはそんな怪我を負ってほしくないわ。」

 


 自分とは結ばれないとわかっていても、好きだったキャラが傷つく姿はあまり見たくない。しかもそれが自分のせいだなんて耐えられない。

 萌対象は保護すべきものというのが私の中の萌道だ。とまぁ冗談はさておき、事前に知っているのなら回避することもできるはずだ。強制力がどれほどのものかわからないが、何もしないよりは行動した方がいい。

 あの時は攻撃に対するアイリーンの反応が遅かったから怪我をしたとも言える。いつ攻撃されるかはわかっているのだから殿下が私なんかを守って怪我をしないように突飛ばせばいい。それが無理でも即座に治癒魔法をかければ怪我がましになるかもしれない。


 アイリーンが早く自分を治せと治癒師が殿下のもとへ行くのを妨げて治癒が遅れたからいけないのよね…。それでも遅かったらどうしよう。万一ということもある。早く殿下に治癒をかけるには…。


「!!!私が治癒魔法を覚えればいいんじゃない。」


 ポンと手をたたきながら立ち上がり、紙を取り出しこれからの目標を書き出していく。


 治癒魔法を習得すれば万一の時の保険となるかもしれない。完全に治せるほどでなくてもいい。応急処置はいつの時代も大切なはずだ。



 そうと決まれば目下の目標は、殿下に自分は無害だとアピールをすること、攻撃に対して素早く対応できるように訓練すること、治癒魔法を覚えることの3つだ。



 なかなか骨が折れそうだけど頑張ろう。




 私は1人で気合を入れて、その日は眠りについた。

 



お読みいただきありがとうございました。

1月に1回のペースであるので前回の内容忘れるわ…と私自身も感じております。あまり1つ1つの話も長くはないのですが、少々忙しい身であるため、ご了承ください。最後まで書き上げることができるよう、精進してまいります。次回は7月上旬から中旬の間に投稿したいと思います。

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