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盲目の悪役令嬢  作者: 桜木風
1/11

プロローグ

今回はプロローグなので短めです。悪しからず。


 私には前世の記憶がある。そう確信したのは物心がつき始めたころだ。

 2歳3歳の頃は子どもの妄想だなんて言われ、家庭教師が付き始めた4歳頃には私のもつ記憶はこの世界のものではないと認識していた。それ以来、ただの妄言と言われるこの記憶については誰にも話していない。


 前世では日本人のOLとして生きていた。最後の記憶は私に迫るトラックだけ。ぱっとしない平凡な人生だった。


 今の私は、アイリーン・トレイドル。トレイドル公爵家の娘だ。西洋風の建物や広い土地が広がり、移動は馬車、普段着がドレス、王宮があって貴族制度があるこの世界は、日本人としての記憶がある私には何とも微妙な感じだ。それに公爵令嬢なんてものは重すぎる。


 蝶よ花よと可愛がってくれる両親、特に母親は私を溺愛し、可愛がってくれている。着飾ることが大好きな女性で、私にもたくさんのドレスやら宝石やらを与えたがる。

元々日本の庶民の私からすれば、どれほどお金をかけているのか?この家は破綻しないのか?という価値観の違いに悩まされてしまう。他の貴族を知らないから一概におかしいとも言えない。


 使用人に聞いたらトレイドル公爵家の領地はとても豊かだし、着飾ることを許された人間だから大丈夫だそうだ。

…何それこわい。着飾ることを許された人間って何?!



「こんな家で育ったらすごい我儘なご令嬢が完成しそうね。」



 誰にも聞こえない声で私は呟きながら、溜息を吐いた。



 明日、私は婚約者となった殿下との顔合わせのために王宮へ行く。

 目の前では、それのために用意したドレスをあれでもないこれでもないと母親が選んでいる。母自身のものではなく私のものだ。着せ替え人形になってどれほど経過しただろうか、もう飽き飽きだよ。



「きゃあ!もうどれを着ても可愛いわぁ。あっちも捨てがたいし、こっちも素敵よね。どうしましょう。」

「お母さま、明日はこのドレスが着たいですわ。」



 さすがにもう疲れたので、必殺愛娘の満面の笑みで母親を止めた。

 何も考えずに決めたけれど、派手すぎず、地味過ぎずこの年齢にふさわしいであろうきれいなピンク色のドレスだ。



「そうねぇ。ちょっと地味に思えるけど、アイリーンがそれがいいならそれにしましょう。」



 少し残念そうに見える母親を尻目に動きやすい服へと侍女に着替えさせてもらう。殿下に会いに行くからだとわかっているけどすごい力の入れようだ。この状況を前世の記憶がなければ何も感じずに受け入れてしまっているのかなと思うと本当に怖い。むしろ子ども心に自分は選ばれたものだからと刷り込まれているしさらに悪化しているかもしれない。


 あながち我儘な令嬢は現実に起こりえたんじゃないか?



 ふと鏡に視線をやれば、6歳という幼さの中に将来は大変美人になるであろう兆しが見える姿が映った。自画自賛ではないがこの見た目は嫌いではない。

 銀色の髪は緩くウェーブがかかりふわふわとしている。母親には縦ロールを勧められるが、断固拒否している。あんなドリルを装備するのは嫌だ。ゆるふわウェーブの方が可愛い。しかし私の目元は母親似のつり目だ。父親から受け継いだ水色の瞳と相まって冷たく見えてしまう。


 こんな顔なものだから、トレイドル家のご令嬢は怖いみたいな噂があるとかないとか。銀髪に冷ややかな目元から氷の令嬢とまで呼ばれているそうだ。顔で判断するのはやめてほしい。もっともそんな噂をしているのは貴族の子どもやその使用人だ。分別のある大人はそんなことは思っていない…と思う。



 しかし、実際に私にはあまり親しい友人はいない。話しかけようとタイミングを掴むために見ているとみんな逃げて行ってしまうのだ…。別にコミュ力がないわけではないんだけど…たぶん…。



 殿下も怖がらないといいけど…。



 将来結婚するかもしれない相手に思いをはせながら、鏡から視線を外した。






お読みいただきありがとうございました。

全体の話としてはどのくらいになるかまだ分かりませんが、月に1かいくらいを目安に投稿できたらと思います。

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